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彼女と砲丸投げ

作者: 道

何かを続けるって、難しい。


辞めたくなるとき、続けるのがしんどいとき、どうすればいいんだろう?

私が新しい職場に移って3ヶ月経った頃に、ある女性が入社してきた。

人当たりの良さそうな、だけど、ドジな女性。

いつも


すみません。


が、口癖なのか、その声はよく響いた。


 しかし、ある日ふと気付いた。

最近、彼女の姿は見るのに、いつもの


すみません。


を、あまり聞いてない事に。


慣れたのかな?


そう思っていたら、小さな声で


すみません。


を言う姿を見た。


口癖は変わってないようだ。


 ある朝、前方に彼女が見えた。


[おはよう。]


と、声を掛けてみた。


誰?という顔をされたが、


[おはようございます。]


と、返された。


最近、暑いよね、とか、どうでもいいような会話をしてたら、


[私、高校の時、砲丸投げで学年優勝したことがあるんですよね。]


と、切り出した。


突然、何?


[長距離の選手が頑張って、短距離の選手で成績を上げることは出来ても、砲丸投げの選手が長距離で成績を上げることは難しいと思うんですよね。]


[…、まぁ、そういう事もあるよね。]


彼女は此方に笑顔を向けて言った。


[ずっと、考えてたんですよね、この仕事、向いてないんじゃないかって。

このまま頑張っても、私は結果を出せないんじゃないかって。]


そんなことはないんじゃない、そう、言うのは簡単だった。

でも実際彼女の謝る回数はとても多くて、最初は


あんなに謝らなくてもいいのに。


という気持ちから、徐々に


また、謝ってるよ。


に変わってる事に。


[私、仕事辞めます。


私は砲丸投げは出来ても、長距離には向いてないんです。

このまま此処で頑張っても悲しくなるだけだから。 ]


[話を聞いてくれてありがとうございます!]


そう言って彼女は颯爽と去って行った。


それから暫くして彼女が退職したと風の噂で聞いた。


私も仕事に慣れる迄は本当に時間がかかるし、辞めたいと思った事も勿論何度もある。

それでも、慣れたらなんとかなる気がしてやってきた。

彼女は、そう思える何かがなかったのかなぁ。


何処かで彼女が、此処なら頑張れる、そう思える場所をみつけていることを、心から願う。

続ける事が辛くて、夜も眠れないとか、常に頭から離れないとか、本当に辛い時が人にはあると思います。

そんな時、期限を切って、そこまでは頑張ると決める。

それまでに、そこに、自分が頑張れる何かがあれば、もう少しだけ頑張ってみてもいいと思いますし、何かを見つけられなかったら、辞める選択をしてもいいんではないかと思います。


いま、苦しんでる誰かに、少しでも届いたら幸いです。

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