第9話(1)最強の剣
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「大事なお話があります。東校舎の空き教室まで来てください。お願いいたします……っと」
美蘭がスマホを操作してメッセージを送信する。
(さて……)
「……おい!」
「ん?」
廊下から強平の声が聞こえてくる。
「……おい、いるんだろう?」
「どうぞ……」
「なんだよ……いきなり呼び出しやがって」
「……」
空き教室に入ってきた強平を美蘭はニヤニヤと見つめる。
「……なんだよ?」
「……文句を言いながら、随分と早く来たなと思って……」
「な、なにを言ってんだ!」
「事実を言ったまでよ」
美蘭が時間の表示されたスマホの画面を見せながら呟く。強平がさらに声を上げる。
「は、話ってなんだよ!」
「……生徒会の広報活動にご協力をお願いしたくて……」
「広報活動? それって確か……」
「ええ、ユーブロードの配信よ」
「ああ、最近はアイとかいう女が出ているな……しかし、あの女……一体どこから見つけてきやがったんだ?」
「ちょっとした知り合いというかね……」
首を捻る強平を見て、美蘭は笑みを浮かべて答える。
「へえ、知り合いなのか……」
「まあ、それはともかく……配信する動画の数をもっと増やしたいと思っていてね。速人君や雄大君、それに正高君にも色々とやってもらっているのだけれども……」
「ああ、Rなんちゃらと嘘食いと……コンパだったか?」
「RTAと共喰いと論破ね。全部外れているわ。まあ、それはいいとして……赤千代田強平さん、貴方にチャンネル出演を依頼します」
「ああん? ……俺には向いてねえと思うんだけどな……」
強平が自らの後頭部をポリポリと掻く。
「……貴方にピッタリの企画があるの」
「え?」
再度首を捻る正高に対して美蘭はニヤリと笑う。
「見たか? 生徒会のユーブロードチャンネル?」
「見た見た!」
「しかし、すげえよな……会長の腕相撲での無双っぷり」
「体が一回り以上デカい相手をねじ伏せたのはマジで半端ないぜ」
「海外でもバズっているみたいで、格闘技の団体やら、強豪スポーツチームがスカウトに動いているって話だぜ」
「ワールドワイドだな、スケールデカいぜ、さすがは会長!」
「……単純だけど、強さというのは男の子からの支持を得やすいのね……」
ワイワイガヤガヤと話す男子生徒たちを横目にしながら、美蘭が空き教室に入る。
「おう!」
白い道着姿の強平がそこにいた。
「今日もまたかなりノリノリね……」
「あたりめえだろう! 強いやつと戦うってのは、これ以上なくワクワクすっからな! それで? 今日はどんなやつと戦うんだ?」
「そうね、大体の力自慢は倒したし……」
美蘭が顎に手を添えて考え込む。
「それもそうだな……」
「まあ、ひとつ思いついたのだけど……」
「なんだ?」
「……ゴリラよ」
「ゴ、ゴリラ⁉」
「人並み外れた相手はそう簡単にはいかないんじゃないの?」
「ぶ、無事じゃあすまねえんじゃないか?」
強平が困惑する。
「……力でねじ伏せられるのはお嫌いかしら?」
美蘭が悪戯っぽく微笑む。
「い、いや……ぶっちゃけ興奮するな」
強平が不敵な笑みを浮かべる。
「……こ、興奮……」
美蘭が首を傾げる。強平が力強く頷き、美蘭の肩を両手でガッシリっと掴む。
「ああ! 早く戦わせろ! ゴリラはどこだ⁉」
「ええっ⁉」
「早く!」
「え、ええっと……手配はまだこれからだから……! ブザーが鳴ったわ! 学院敷地内に悪の組織が侵入⁉」
美蘭が声を上げる。
「ちょっと行ってくるぜ!」
強平が空き教室を飛び出す。
「……仏の顔もなんとやら……この学院を制圧する!」
「ははっ! クモ怪人さま!」
再び蘇ったクモ怪人の号令に戦闘員たちが答える。
「待て!」
「うん? なんだ?」
「『セイバーチェンジ』!」
強平が左腕に着けた腕時計を操作すると、青色の眩い光に包まれ、ヒーローの姿になる。
「き、貴様は⁉」
「『強き心で悪をぶっ潰す!』 最強の戦士、レッドセイバ―、強かに参上!」
「レ、レッドセイバー⁉ ベストセイバーズは最近、大人しくなっていたはずだが……」
「ど、どうしますか⁉ クモ怪人さま!」
「ええい、恐れることはない! やってしまえ!」
「はっ!」
戦闘員たちがレッドセイバーに襲いかかる。
「喰らえ、『強の剣』!」
「ぐわあっ!」
レッドセイバーがどこからか剣を取り出して、群がる戦闘員たちを薙ぎ払う。
「何⁉ な、なんて強さだ! なんの変哲もない剣のようなのに……!」
「なんっつっても最強だからな!」
「う、ううむ……」
「隙有りだぜ!」
「はっ⁉」
「おらあっ!」
レッドセイバーが剣を振るってクモ怪人の体に斬りつける。
「うぎゃあ!」
クモ怪人は爆散した。駆け付けた美蘭が声をかける。
「やったわね!」
「はっ、ざっとこんなものだ……それよりよ……」
「え?」
「ゴリラを倒したら……その次はどうすんだ?」
「えっ⁉」
「おいおい、広報なら次の企画も考えておけよ」
「ええ、そ、そうね……」
美蘭が戸惑いながら頷くのだった。
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