第7話(3)主題歌披露
「……亜久野さん、全員揃いましたよ」
翌日、生徒会のメンバーが再び会議室に集合する。正高に声をかけられた美蘭は頷いて席から立ち上がり、五人を見渡せる位置に移動する。
「……はい、それでは早速、『最上戦隊ベストセイバーズ』の主題歌製作に取りかかりたいと思いますが……」
「……」
「それでは歌詞を決めていきましょう」
「………」
五人は黙っている。美蘭は首を傾げる。
「? どうかされましたか?」
「いや、あのよ……」
強平が言い辛そうに口を開く。
「会長、どうかしましたか?」
「いや、いきなり歌詞を考えてこいって言われてもよ……」
「当事者である皆さんの意見を反映させたいと思いまして」
「そう言われてもよ……なあ?」
強平が愛一郎に目配せする。愛一郎が苦笑交じりに呟く。
「いくらなんでも昨日の今日ではね……」
「流石にそれは速過ぎるってもんだぜ」
速人が頷く。
「……正高くんはどう?」
「お恥ずかしい話ですが、さっぱり……」
雄大からの問いに正高は首をゆっくり左右に振る。
「……こちらはお聴きになりました? ~~♪」
美蘭は音楽を再生させる。愛一郎が頷く。
「う、うん……」
「用意したメロディーに言葉を当てはめてもらえばと思ったのですが……」
「い、いや、それでも難易度は高いっての!」
強平が戸惑い気味に声を上げる。
「ふむ……」
美蘭が腕を組む。
「も、申し訳ございません、揃いも揃ってまったく不甲斐ない限りです……!」
正高が大げさに頭を下げる。
「いえ……これも想定内です」
「え?」
「わたしが歌詞を考えてきました」
「ええ?」
「今から歌ってみます。これをたたき台にしてもらえば……」
「は、はあ……」
「では、参ります……~♪」
「…………」
五人は息を呑む。美蘭が口を開く。
「『最上』……それは一番優れていること、この上ないこと……」
「か、語りだした⁉」
速人が驚く。
「『ベスト』……それは最も優れたもの……」
「セリフが続いた⁉」
雄大も驚く。
「これは千代田区、中央区、港区のいわゆる『都心3区』に跨るように置かれた広大な学校、『最上学院』に通う生徒、否、ヒーローたちの物語……!」
「ず、随分と具体的ですね……」
「セ、セリフ長すぎないかな?」
正高と愛一郎が揃って戸惑う。
「~~♪」
「おっ、歌に入るみてえだな……」
強平がゴクリと息を呑む。
「もっともっと! 声を聴かせてくれ!」
「!」
「ずっとずっと! 叫び続けておくれ!」
「‼」
「きっときっと! 願いを叶えてやる!」
「⁉」
「もっともっと! ごもとっともっと!」
「もっともっとが被ってるな!」
強平が声を上げる。美蘭は構わずに歌い続ける。
「ピンクセイバー、『最愛』のカウンター!」
「おっ……」
愛一郎が思わず姿勢を正す。
「グリーンセイバー、『最速』のスピード!」
「へへっ……」
速人が鼻の頭を照れくさそうに擦る。
「イエローセイバー、『最大』のブロック!」
「お、おう……」
雄大が戸惑いがちに反応する。
「ブルーセイバー、『最高』のジャンプ!」
「ふむ……」
正高が眼鏡の縁を触りながら頷く。
「レッドセイバー、『最強』のアタック!」
「ふん……」
強平がまんざらでもない様子で腕を組む。
「五つの最も集まって~まさにこいつはごもっとも!」
「……!」
「最、セイ、愛⁉」
「あ、愛!」
突然のコールアンドレスポンスの要求に驚きながら、愛一郎が応える。
「最、セイ、速⁉」
「速!」
「最、セイ、大⁉」
「だ、大!」
「最、セイ、高⁉」
「こ、高!」
「最、セイ、強⁉」
「強!」
愛一郎に続き、他の四人も美蘭にレスポンスを返す。
「愛らしい! 速い! 大きい! 高い! 強い!」
「……‼」
「五つの形容詞に彩られ~五色の戦士は今日も行く~」
「……⁉」
「『最上戦隊ベストセイバーズ』~~! はあ、はあ……いかがだったでしょうか?」
歌い終わった美蘭が呼吸と整えてから五人に問いかける。
「……悪くないんじゃないかな? ねえ、速人くん?」
「ああ。なあ、雄大?」
「うん。むしろ、結構良いんじゃない? 正高くん?」
「ええ、そうですね……会長?」
「ああ! 採用だ!」
「ありがとうございます……では、早速動画の撮影を……」
美蘭が撮影の準備を始める。数日後に公開された動画は学院内だけではなく、外でも評判を呼び、最上戦隊ベストセイバーズのイメージアップへとつながった。
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