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呪夢ー⑨

その頃、アイナは‥…まだ夢の中です。

 「あーちゃん、お味はどう?」

 「ほぉ~美味しー! くーちゃん、また腕を上げたね~」

 

 今や同じ釜の飯‥‥ではなく、時をループするお仲間の、くーちゃんことクローディア(レギオン先生役)と、あーちゃんことアイナ(フローレンス役)の私達は人生劇の幕間の一時をくーちゃんの研究室で彼女手作りのミルフィーユを食べて和んでいます。

 くーちゃん、「ミルフィーユ? 知らない」聞かされたときは名称違いかと思ったんだけど、本当に知らないでいた。そうか有名なお菓子だと思っていたのは私だけか‥‥思い込みで恥ずかしい。


 件のお菓子を所望されたので一度作ってみたのだが‥‥今ではレシピを覚えた彼女の方が味も見た目も完璧。‥‥おっ、お菓子作りに女子力は関係ない!

 今日も彼女の手作りお菓子をお腹いっぱい堪能しています。

 

 えっ? 攻略? はて?


 私達のループ回数はくーちゃんが二桁台。私が数回‥‥数えるの止めたの。

 虚しくなっちゃうからね。でもその虚しさ超えれば何とビックリ、私達の行動範囲が広がり選択の自由もできた。これは素直に嬉しい。

 その結果、フローレンスちゃんの行動に余裕が生まれ、自由を満喫している。



 「ねぇ、あーちゃんって図太いのか無神経なのか、鋼の精神なのかな? よく心、壊れないよね~」

 私を心配して‥‥ると思う。でもその言葉のチョイスは如何なものか。

 せめて理性を失わない崇高な魂と称賛して欲しい。

 

 何度も繰り返すフローレンスの死。殺されるシナリオだと分かっているから事前回避に動いてみても、何故か結局、死んじゃうんだ。

 フローレンスの死後、皆がどんな人生を送ったのかはわからない。彼女の死が引き金で人生が巻き返されてしまうから。殺される未来に思う事はあるけど時期を知っているのだ楽しんでも罰は当たらない。


 くーちゃんとのお喋りは純粋に楽しいのだ。私の知らないファンタジー設定が偶に瑕だけど。それも小説の話だと思えばそれはそれで面白いのだ。

 今日もくーちゃんと魔術談義だ。私のオタク用語のラインナップも増えた。

 美形先生と美人女生徒。シチュ的には美味しいだろうが、フローレンスちゃんは既に昼ドラ真っ青三角関係なのだ。これ以上はお腹いっぱい。


 先生的にはだらける私を甲斐甲斐しく面倒見る…おかん属性を習得。遺憾なくその実力を発揮しているのだ。文句は無い。

 

 おかん属性の先生が眩し過ぎる美形の微笑でにこやかに。


 「今日はねぇ王子様呼んでいるの」


 先生、とうとう私を殺しきたわ‥‥

 




 「こんな場所に呼び出して用向きは一体なんだ」


 「ふふ、お日柄も良く‥‥珍しいお菓子を頂きましたの。ご一緒に如何と思いまして」

 「ふん、ご機嫌を取ろうとしても無駄だからな!」


 くっ、この子と仲良くできる気がしないわ。先生、これ無理じゃない?


 「あら、おほほほ。ご機嫌を取ろうだなんて。おほほ(怒)」

 「ふん、気を惹きたいのなら、まあ仕方がないな。ふん、その珍しいお菓子とやらを食べようではないか」


 くぅ、何て捻くれた子供よ!




 そう、今は先生の研修室に王子様を呼び出した先生と3人でお茶をすることになったのだ。


 どうしてこうなったのか‥…私が聞きたいよ。

 切っ掛けは何度となく繰り返した作戦会議で、王子様ってもしかするとフローレンスちゃんに気があるのでは? と。くーちゃんの暴言が。



 「ねぇ、私達、何か思い違いしていないかしら?」

 「くーちゃん?」

 「今まで、フローレンスの悲劇を回避するのに躍起になっていたでしょ? それがもし違っていたらと思ったの」

 「‥‥それ、前提条件が違うってこと? じゃあ誰?」

 「そこよ~それが問題なの。ねぇ誰だと思う?」

 いや聞いたの私なんだけど‥‥まあいいか。

 「そうだね。私達以外と思うのが妥当かな」

 「‥‥そうよね。となると貴女の妹ちゃん?」

 「う‥‥ん、それも…違う気がする。だって王子とくっつけた回あったでしょ。それでも巻き戻ったもん。違うんだよきっと」

 「そうかぁ…はぁ。一体これ誰の世界なのかしら…」


 ポリ、ポリッ、ガリッ、 ズズズ~~


 「ちょっと貴女、緊張感無いわね。もう少し気を引き締めなさい。もうっ」

 「ごめん。でもさ~二人でいる時ぐらいよくない?」

 「…そう…ねぇ…ねえ、フローレンスと結ばれなかった人って誰かいた? レギオンと赤髪の幼馴染に言い寄って来た男性に…まだな人いたかしら?」

 「う~ん、そう言えば…あれ? 肝心の王子とは一度も結婚してなくない?」

 「えっ? それ本当?」

 「うん。結局、結婚式を挙げる前に死に別れちゃうからまだだよ」

 

 くーちゃんは何かを考え策を練る。私は横で小腹を満たす。うん、適材適所。


 「もしかして…もしかしてよ、この世界って‥‥王子様の?」

 「? え~~ないない、ないよ~」

 「そう? でも王子様は本当にフローレンスを嫌っていたのかしら? もしかしてよ、実は好きだったり?」

 「うえ~最悪じゃん! ‥…でもその可能性もあるのかなぁ」

 「でしょ? こうなりゃあの手この手よ!」

 「う~まあ確かに? でもねぇ…間近で見てても、そう見えないの…」


 くーちゃんの目力に負けた。

 

 「うう、わかった。で、どうすればいい」

 「そうねぇ…一番の邪魔は妹よね。消す?」

 「わわわっ! それ止めてーー! 穏便でお願いします」

 「冗談よ。ふふ。うーん、そうなるとフローレンスが頑張るしかないか~」

 「うっ! これ以上、何を頑張れと?」

 「だからぁ貴女が王子様に甘えるの!」

 


 ‥‥‥それは無理ゲーではなかろうか。




 くーちゃんの作戦には無理がある。と思うのは私だけだろうか。

 でもそれしか手がないと言われれば、そうかと従うしかない。

 ふー、困った。



 教室で物思いに耽るフローレンスをジッと見ている視線に気が付かない私には王子の…男の子の恋心を知るなんて高等技術は装備されていないのだ。

 先生に指摘され始めて知ったよ。王子、ストーカーの素質あるじゃん!


 やはりどう考えてもこのミッションはこなせない。 


 私に任すと進展しないと判断したくーちゃんによるお膳立てが功を奏した。

 先生、英断です!

 

 今、くーちゃんの研究室で私と王子はお茶をしてる。

 ちょっと色々言いたい言葉は呑み込んでますよ。大人だからね!

 そう言えば、王子と二人でお茶飲む(くーちゃんもいる)ってあったかな?

 覚えている範囲ではいつも誰か(義妹)がいた。

 そうか、私達って二人で話した時間が少なすぎたのかも。


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