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呪夢ー⑦

 「お前は我が家の恥だ! 学園の試験で不正などしおって! 聞けば生徒達の前で殿下に指摘されたと言うではないか。お前は私だけではなく婚約者でもある殿下にも恥を搔かせたのだぞ! これがどういう事かわかるか! 全く忌々しい奴だ。本当に私の子か。もう良い! 顔も見たくないわ!」

 「は…ぃ???」

 

 のっけから、見知らぬおじさんに怒鳴り散らされた。何よこれ。

 ビックリし過ぎて碌に言葉が出ない私に掛ける情けはないようだ。

 でも問答無用で喚き散らすこの人に見覚えがあると思うのは父親だからではなさそうだ。どこで会った?


 私はフローレンスの部屋に反省するまで出てくるなと閉じ込められた。


 「ちょっとどういう事よ、これ。不正出来ないシステムって言ったじゃない」

 納得いかない。先生は学園の威信に掛けても不正行為は認めないだろうと言っていたのだ。だが実際はこれだ。



 (先生、大丈夫かな?)

 頭を過るのは私を庇った先生だ。何事も無ければいいのだが心配は尽きない。これは先生召喚案件だろうか、それとも謹慎が開けるまで待つか。状況の見えていない私が先生を呼び出しては問題になるだろう。



 

 「本当に恥知らずな子! 旦那様にもわたくしにも×××にも迷惑を掛けたってわかっていて? 公爵の娘と偉そうにしていたお前の母親と同じで恥知らずね。流石は母娘かしら。嫌だわ、身分しか取り柄のない子って我儘で自分の事しか考えないのよ。そういう傲慢さも本当にそっくり」

 

 開口一番、これである。

 見知らぬおばさんが部屋に突撃して来たかと思えば、悪口雑言だ。話の内容からフローレンスの母親と何某らの因縁があったのがわかる。鬼の首を取った勢いで攻めてくるのだ。面食らう私を打ちひしがれ惨めに悲しんでいると思ったのか。気を良くして出て行った。何このおばさん。


 この家は‥‥フローレンスちゃんの不憫な境遇を垣間見た。 

 おばさんの嫌味も冷徹な父親も眉根を寄せたくなる。だがそれよりも不正でっち上げ事件が既成事実化していたことに驚かされた。正義よ何処。

 (ヘイトイベントの回避どころかガッツリ罪を着せられていたよ)

 「謹慎処分? うぇぇ~、どうして!?」

 これでフローレンスちゃんの学園生活は針の筵決定だ。悪意に満ちた世界をどうやって乗り越えればいいのか。で出しを挫かれたのだ、心がもやる。


 「この世界、攻略出来る気がしない‥‥はぁ」

 




 

 「謹慎と言うよりこれは軟禁だね。実の娘に対して厳し過ぎない?」

 躾けの範疇を超えているだろう。もう虐待だ。自室に缶詰にされた私は独りごちる。

 そんな私にお客様だとメイドちゃんが赤い髪のガタイの良い青年を連れて来た。誰だろう。

 

 部屋に招き入れたがメイドちゃんが扉の前に立つ。よくわからないが室内に男女二人状態を避ける処置らしい。成程、この青年は家族ではないのか。

 彼は私を見るなり悲痛な表情で「大丈夫か」と。何処か弱々しい声色には気を揉ませたか心配の色が含まれていた。

 青年の表情や態度でわかる。彼はフローレンスちゃんの味方だ。


 「話を聞いて急いで来たんだ。突然ですまない」

 「いいえ、此方こそご心配お掛けしまして申し訳ございません。わたくしも身に覚えのない罪を着せられ困惑しておりました」

 「辛い目に遭ったのだな」

 優しい言葉を掛けられ、力になりたいと歩み寄られてしまえば誰でも気を許してしまうだろう。私は彼に学園での出来事を説明した。打開策があるとは思えないが聞いて欲しかったのだ。自分の話を聞いて貰うだけで幾分気が晴れた。何て単純なんだと笑いが零れる。


 学園以外の話も弾む。幼い頃の思い出や青年の近況など知らない世界の話を聞くのは愉しい。もやる気分があっさり払われ、私の気持ちを軽くしてくれた。

 

 彼は幼馴染で公爵家の分家に属するお家の息子さん。本当の兄妹のように接していたのだろう。気配り心配りの出来る素敵なお兄さんは貴重だ。

 心配させて悪いと思うが来てくれてありがとう。

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