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呪夢ー⑥

 先生の前回の記憶ではこのヘイトイベントでフローレンスは王子達からテストは不正行為…カンニングをしたとして処罰を受けた。成績順位は最下位となり一週間の謹慎処分。

 この事件が彼女の悪評を更に高め、傍観していた生徒までも嫌がらせを始めた。彼女の立場を追い詰める分岐点となるイベントだったのだ。

 (これが彼女のターニングポイント? これを上手く躱せば、どうなる?)

 仮にこの事件を回避したとして、彼女の境遇は変化するだろうか。

 脱出ルートの手掛かりが皆無の今、藁にも縋る思いで策を講じるしかないのだ。先生と私はこのイベントに懸けた。


 掲示板の前で詰られるのを逆手に取ることは出来ないだろうか。

 私は食い物の恨みを抱えた身、軽いジョブをバシバシ打ちたい。ううん、欲を出せばサンドバッグのようにボコボコにしたい。

 言い掛かりを始めたら先生を召喚ってことで話を終える。



 そして突如迎えた結果発表の日。


 今、先生は目の前にいる。これから先は先生の手腕によるのだ。


 「君達は公衆の面前で何を騒いでいる。紳士淑女たる者の言動とは思えぬが、まあ良いだろう。では君達、理由を言いなさい」

 珍しく男性バージョンの喋り方に周囲の女生徒うっとり、頬が朱に染まる。

 美形は声まで美形なのだ。


 お互い顔を見合わせ誰が説明するか擦り付けたいのだろうがそうはさせん。

 「レギオン先生、わたくしも何が何だか。突如、義妹がわたくしが不正で1位を取ったのだろうと騒ぎ出したのです。そして義妹とお馬鹿な…ゲフン、ゲフン、懇意の殿方までも追随し騒ぎとなりました。家の者がご迷惑をお掛けしまして申し訳ございません」

 しおしおと、しおしおらしく言ってみた。こんなもんでいい?


 騒ぎの原因が自分だと指摘された義妹も取り繕う仮面が剥がれ、

 「な、お義姉様! わたくしの所為になさるの! ひ、酷いわ、ううう」

 急に泣き出した義妹は情緒不安定か何かだろうか。カルシウム足りてない?

 「可哀想に。フローレンスいい加減×××嬢を虐めるな! 先生、この女は試験の際不正を行ったのだ。厳重な処罰を求む」

 「そうです。そうでなくては******様が次位であるわけがない。この順位は無効です」

 先生相手にフローレンスの不正をでっち上げるとは。末恐ろしいな王子様。

 周囲も王子達の声に賛同するのかヒソヒソと「不正だって」「やっぱり」等と好き勝手に無責任な言葉を垂れ流す。禄でもない人達ばっかりだ。

 

 「ほおう。それだけ断言したのだ、確実な証拠を用意しているのだな。思い違いや間違いでは済まされぬぞ? よもや確証たる証拠も無く騒動を起こしたとそのような愚行がただで済むと思っていないな?」

 ちょい凄みの先生。美形の凄みは絵になるのだと改めて知ったよ。

 外野女生徒よ、ちょいちょい黄色い声上げないで。

 

 「しょ、証拠は‥‥証拠はなくても間違いないわ! お義姉様は我が家の落ち零れですの。良い成績が採れるはずありません!」

 「そうだ、×××嬢の証言で充分ではないか。試験だけ高得点はおかしいぞ」

 「それが君達の言い分か。まさかこれほど愚かだとは。全く以て由々しき問題ではないか」

 「そうだろう、そうだろう。わかったなら今すぐこいつに罰を与えろ」

 証拠もないのに怯まず主張を繰り返す義妹の、ど厚かましさに感嘆する。そして教師に対しマウントを取り続ける王子。厚顔無恥な二人はお似合いだ。

 呆れた表情の先生。美形はどんな顔でも美形だね。

 零す吐息が桃色吐息…あれ? 青色吐息? 

 女生徒の声なき悲鳴が聞こえてきそう…


 「証拠が無いのだな。であれば不正を行った証明でよい。立証出来るのであればそれを示しなさい」

 「だからお義姉様は悪い事を平気でする人なの。わたくし何時だって虐められて‥‥うっうう」

 「君は何を言っている? 今は不正の証明について話をしている。君の私的な話など興味ない。話を摺り変えるな」

 「な、なな…‥」

 「全く話が進まないではないか。恐ろしく君達は理解力が欠如している。よいか、私は不正の事実を立証しろと言っているのだ。わかるか?」

 先生的には嘲りの顔なのだろう‥‥多分。でも義妹には微笑まれたと勘違いしたみたい。ポポポッと頬を赤らめモジモジ。男子にとっては可愛い素振りかも知れないが‥…先生、中身女性だよ。ざんねーん!

 

 王子とお馬鹿な仲間は悔しさで歯軋りしてる。その悔しさは義妹のデレ顔か、不正の証明が出来ないからか。どちらにしろ分が悪い。早く気が付けよ。

 

 「君達では立証不可と見た。全く時間の無駄ではあるがその残念なお頭(おつむ)に免じ教授してやろう。よいか、学園の試験は不正行為が出来ない監視体制を執っているのは、他でもない試験を受けた自分がわかっているだろう」

 そう言った先生の言葉を肯定するのは周囲の生徒達だ。銘々「そうだ」「あの教室では無理だ」「そうね出来ないわ」と言った声が上がる。

 なるほど?

 試験会場となる講堂に持ち込めるのは筆記用具のみ。それ以外は許されない。

 持ち物チェックもあるし監視の目を絶やさず不正出来ない体制を築き上げてあるそうだ。不正を行う者が後を絶たない経験から不可能な状況を作り上げた。そこ迄する学園側の本気度が怖い。 

 

 将来、国の中枢を担う子息子女を預かる学園で間違いがあれば責任を追及されるのは学園理事である王弟殿下なんだって。学園の意地と矜持とプライドか。そりゃ力も入るね。

 その絶対防壁を誇る学園サイドに真っ向から喧嘩を吹っかけたのが、王子とお馬鹿トリオ。だから先生も立証できるのかと何度も確認した。


 これで学園主任と学園理事に報告され厳罰が下されること間違いなし。

 勿論、フローレンスちゃんはお咎めなしだ。先生が手を打つからね。

 

 これにてテスト発表ヘイトイベントは終了? でよい?


 あっ、場面が変わり始めた。

 

もうちょっと続きます。

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