表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/67

呪夢ー②

 「おのれお菓子の恨み…‥って、あれ?」

 いつの間にか景色が変わっていた。

 ここはどこだと周囲に目を配るものの‥…何となく既視感が。

 大学の講堂っぽいどこか。

 (ええ…とぉここは?)

 結局、目の前に置かれたお菓子を一口も齧ることなく強制的に場面チェンジに軽く憤りを感じている。せめてお菓子と紅茶を堪能してからにして欲しかった。

 なんたる無情。涙がチョチョ切れちゃう。


 (で、次は何だろうな。今の処、この場には私だけだけど。さっきの様に忍者ばりに突然現れるのかな?)

 抗えない好奇心。何が起こるか期待大でワクワクしながら待つ。

 「‥‥‥‥‥‥」

 待つ。

 「‥‥‥‥」

 待つ。

 「‥‥‥何も起こらないんだけど!?」

 誰も来ないし何も起こらない。本当に一人ぼっちなのだ。

 暇だ。人がいないからお喋りも出来ない。

 「困った。ぼっちだよ」

 人のいない状況にちょっと身震いした。このまま誰も現れなければと嫌な考えが脳裏を過ぎる。

 (‥‥よ、よし、散策しよう! きっと誰かに出会う筈だよ!)

 この世界に一人ぼっち…そんな恐ろしい思考を断ち切る為にも人探しだ。

 自分に叱咤激励しつつ外を目指す。

 

 

 廊下をテクテク歩いていると

 「おい! おーい! 待ちなさい!」

 後ろから誰かが叫んでいるではないか。

 早速人が見つかった。ぼっちじゃないって素晴らしい。

 


 「おい、お前は‥…フローレンスではないな?」

 追いかけて来た人は青色の髪の顔の整った青年だった。私を誰かと間違えているのか。知らない名を聞いた。

 「あの、フローレンスさん? は私に似ている人ですか?」

 どうしたのかな、めちゃくちゃ驚いた顔でこっちを見てる。

 整い過ぎた顔で凝視されるのはちょっと怖い。

 「貴女、誰? 誰なの? フローレンスでないなら貴女一体誰なの!?」

 「はうぁ!」

 ガッ!! と両肩掴まれてガックンガックン前後に激しく揺さぶられた。

 (うわー酔う! 酔うって! や、め、てーーー)

 「ねえ、ちゃんと答えなさいよ! ちょっと聞いてる? ねえってば」

 「う、うひゃー やめてーーー」


 

 


 

 「ゴホン、先程は御免なさいね、取り乱しちゃって。大丈夫?」

 「はひぃ…揺れましたけど大丈夫です…‥」

 「そう、良かった」

 私は今、このお兄さん? 口調がお姉さんぽい人に連れられ個室? らしき部屋でお茶を出されている。妙な緊張が漂ってぎこちない。

 それはイイとして‥…この人誰だろう。

 「あ‥‥もう一度聞くわね、貴女フローレンス嬢ではないのね?」

 「はい。違います。あ、あのフローレンスさんって誰ですか?」

 「‥…本当に別人なのね。これってどういうことなの?」

 「あの? お兄…姉さん? 何かご存じでいらっしゃいますか」

 「はっ! ご、ごめんなさい。考え事しちゃって。何だっけ?」

 「あ~とここって何処なんでしょうか。えっとすみません。気が付いたら講堂に一人で居たんで状況がわからないんです」

 にへらと笑い無害アピールを忘れない。私の境遇って怪し過ぎるわ。

 「‥‥それって、じゃあ貴女外から来たのね。でもこれって‥‥‥」

 (またもやお兄?姉さん、自分の世界に入っちゃったよ。帰って来てー)


 「ご、ごめんなさい。説明ね、そうね貴女何処迄知っているのかしら。先ずそれを教えてくれる?」

 「ごめんなさい。全くわからないんです」

 「そう、それじゃあ仕方ないか。あのね驚かないで聞いてね。この世界は誰かの過去の世界で私達はそこに閉じ込められて‥…ってその顔信じていないわね」

 説明らしからぬ説明を始めたこのお兄さんだかお姉さんだか性別不明の人が、とんでも自論持ち込んで来た。二人きりだ。ここは真面目な顔で聞いた方が無難かな。

 「はひぃぃ、続けて下さい、お兄姉さん」 

 「驚くでしょ? 私も最初は訳がわからなかったわ。でも何度か繰り返しすのこの世界って。まるで誰かの人生をやり直しているみたいにね。だから誰かが創り上げた世界に閉じ込められたって思うしかないわけ。わかる?」

 物凄い目力で圧を掛けてくる。渋々頷くしかない。

 「それでね、皆同じ行動、同じセリフしか言わないじゃない? 私も飽きちゃって困ってたの。どうやってこの世界から出れるのか探りを入れてたんだけど、私の役処が魔術教師でこの学園内でしか行動できなくて‥…」

 「え? 教師だったんですか? おにねえさん」

 「‥‥ちょっと何よそれ、失礼しちゃうわね。こう見えても女よ私」

 と、断言された。確かに中性的な顔立ちには違いない。女に見え…ないよ。ごめん。わかった心は乙女って人だね。ラジャ!

 「貴女、誤解してるわよそれ。違うの、中身はれっきとした女! 何故だかこの世界で目覚めた時に、この身体だったの。名前はクローディア。で、この身体の持ち主の名前がレギオン。わかった? そんな貴女だってその見た目、フローレンスだわ。この学園の生徒で公爵家の娘。ああそうそう、貴女酷い悪評あるの知らないでしょ?」

 「へっ? え?」

 「もう仕方ないわね。これ見なさい」

 そう言って出して来たのが姿見。何処から出したかは知らない。

 鏡の中には銀髪ロン毛の美少女。ちょっとキツイ感じの少女だった。

 (あれ…? この顔、知ってる? どこかで見た様な…)

 「どう? 実際の自分と違うんじゃない?」

 「あ、はい。確かに違います。別人ですね。ってことはこれアバター?」

 「ん? 何そのアバなんちゃらって」

 「ああ、仮想世界…仮想的な空間とかで自分の分身として表示するキャラクターの事だったかな。あれ、でもこれは違うか‥…」

 言った端から混乱した私。訳が分からん。

 何故自分はコウシャクケって言う人の娘になってんだろ…ん? コウシャクケ? 公爵家? んんん何だって!?


 こうして疑問だらけの私に親切丁寧に教授してくれたおにねえさんに頭が上がらなくなったのだ。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ