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のんべぇ師匠と眠る幼女

 「まだ目覚めないか」

 「導師様如何致しましょうか。このまま様子見で?」

 「明日、眠ったままだろうが領主の元に連れて行く。準備を頼むぞ」

 「かしこまりました。あの、もう一人の男児はどうなりましたか」

 「ああ、あの坊主か。体調はどうだ?」

 「はい、今日一日問題なく過ごしておりました。もう大丈夫かと」

 「そうか。元々教会預かりの子供だ。お前が面倒見てもいいのだぞ」

 「‥…お気遣いありがとうございます。ですがジェーンが見つからない今、教会に置いておくのは何かと不安です。ご領主様にお預けするのが一番良いと思いますので明日一緒に連れて行って頂けませんか」

 「わかった。お前がそれでいいのなら明日供に連れて行こう」 

 

 

 領主の館から教会に戻って来たが相変わらずクソガキは眠り続けていた。

 呪印の刻印がないから大丈夫かと寝かしておいたが、このガキ寝過ぎだ。一体何時まで寝やがる。看病する身にもなれってんだ。

 

 (呑気に寝やがって全く忌々しいガキンチョだ)

 

 寝る子は育つと言うが限度ってもんがあるだろう。

 子供の生態など知らぬが幾ら何でも寝過ぎではなかろうか。一抹の不安が過るも健康状態は衰弱と疲労だったなと思い直す。

 (まだ回復に至っていないってことか‥…)

 明朝まで様子を見れば良いか。


 俺様が寝ずの番で看病してやろう。序でに土産の酒も堪能だな。

 折角友が持たしてくれた自慢の酒。これをじっくり味わなくて何とする。

 俺は自前のコップになみなみ酒を注いで気を良くした。

 ガキのお守りなんぞやった俺へのご褒美だ! さあ、飲め飲め~


 「あ~うめぇ~、おお~良い酒だ‥‥これでつまみがありゃ」

 

 (あと干し肉とチーズがあれば御の字なんだがなぁ。貰って来るか)







  酒を嗜む導師の横で深い眠りのアイナ。

 

  彼女の見る夢は‥…

  ゆっくりとそして確実にアイナの意識を深みに嵌める。

  深みに嵌めるその夢はまるで呪いのよう。

  目覚めを拒みアイナの意識を夢の中に中へと引きずり込む。

  …‥覚めることなく夢は繰り返される。





 黒い霧の中、一人佇む。

 この身体の本来の持ち主と今の主導権を持つ人物は深い眠りに落ちている。

 

 もとは身体の主導権を手放した主に取って変わり私が生きる筈が、みすみす見知らぬ魂の介入を許してしまった。

 ‥‥違う。許したのではない、手が出せなかった。

  

 この現象は私の預かり知らぬこと。

 私は未だ主導権を握れずにいる。



 暗い暗い暗闇の中で成り代わるその時をジッと待つ‥‥それが良い事か悪い事か私には判断出来ない。ジッと暗闇の中、一人待つ。

 

 ‥‥この身体を貰い受けるのは私なのに

 



 暗闇だった空間に変化が訪れた。

 黒い霧靄が薄らいで行くように暗闇に色が挿す。

 黒い霧靄が意志を持つ如く蠢く。

 

 靄は黒から紫、そして赤に変色しその赤靄から形が造られ始めた。

 その姿はまるで人の様。

 形成された人型は赤い衣を着た女となった。

 

  

 目の前の暗闇が皮を剥ぐように徐々に剥がれる。

 剥がれた先には明るい世界が。

 

 青い空の元に広がる庭園。徐々にその全貌を晒しだす。

 赤い衣の女はゆっくりとその世界に歩を進めた。


 

 私は立ち止まればいいのか、足を踏み入れるべきか。 

 

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