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有無を言わさず

 (うぇ~、驚く事に師匠が出来ました。強制的に師弟の間柄となりました。う、うそーー! 誰か児童相談所、紹介してーーー!)


 大人のお話し合いで怪しげな無精ひげのオジサンの元に問答無用で引き取られると決まった。

 (な、なんでぇ? 理不尽過ぎるーーーー)

 泣いても無駄そうなので今のところは引き下がるアイナだが、正直状況が分からなくて不利な立場である。起死回生を図るにはある程度の説得材料が必要だろうと読んだアイナは必死で情報を得る。主にジェーンとディジーに。これ程心許ない大人はいないと思うも今は贅沢など言えない。このままだと髭に弟子入りなど真平ご免なのだ。断固拒否の姿勢は崩せない。



 分からないことだらけの測定。取り敢えず引き取られる子供はアイナを含め三人もいた。これが多いのか少ないのか? 知らん。

 アイナの機嫌は頗る不満で悪い。出来るなら誰か代わってと呪詛のように呟いても助け手は‥…いない。

 アイナの他は、あのはしゃいでいた男の子、彼はお隣の教会に引き取られることが決まった。もう一人は男の子より下と思える女の子、彼女は恰幅に良いオジサンの元に。オジサンの横に立つ女の子の絵面はヤバ過ぎた。

 漂う犯罪臭が‥…特殊性癖っぽい人に見えた。


 しきりにジェーンさん始め大人達が『良かった良かった』と喜んでるから水を差す訳にもいかず。困り果てた。


 (ぐぬぅぅ、児童福祉相談所‥‥誰か教えて! 切実に願うよ!)


 周囲のおめでたい雰囲気とは裏腹におめでたくないアイナはギリギリ奥歯を噛みしめる。ぐぬぬぬ‥‥






 師匠となった人物は導師と呼ばれ何と吃驚、この三人の中で一番のおえらいさんだった。

 (はぁ、まさかだよ、人は見かけによらないね‥‥怪しさ満載なのに)

 

 導師が何の職種なのか全く分からないまま強制的に決まった弟子の立場。こんな幼女に何をさせる気なのかこの町の習慣は意味不明過ぎて怖いなとちょっと逃避気味なアイナである。慰めを求めても良いではなかろうか。

 



 早急に決定された弟子入り先。何故そんなに急ぐ必要があるのかと訝しむアイナを余所にオジサンズは暇乞いを始める。何でも今夜は領主様の館で晩餐の招待を受けていると。なので明日引き取りに来るから今日は精々別れを惜しめよと要らぬ気遣いを寄越してくる。

 (いやいやいや、待ってよ! そんな気遣いは不要だから! 晩餐? 何その美味しそうな響き! そっちに連れてってよーーー!)

 

 …‥無念。幼児の心の叫びは届かない。無情にも彼等は立ち去った。

 

 (やっぱりあの髭に引き取られるのって不安要素しか思い浮かばないんだけど‥…)

 出て行ったオジサンズの後ろ姿を恨めしく睨みつけていた見ていたアイナに、今まで黙って俯いていたあの男の子がキッとキツイ目つきで睨んでくる。一体何事だ? 首を傾げたくなるアイナの心境を余所に男の子は捲し立てて怒鳴り始めた。


 「お、お前! あ、あとから来たくせに、なんでお前なんだよ! 俺が、俺がひきとられるって! 俺、待ってたのに‥‥く、くそ! お前のせいだ! おぼえていろよーーー!」 


 人生初の捨てゼリフ。いただきました。

  

 怒鳴られた驚きよりも捨てゼリフを吐く人がいるのか…とそちらに気を取られていたアイナはちょっと感動?していた。今時いるのか。

 

 アイナは自分が面倒事に巻き込まれたとは思わず走り去った男の子を見送っていた。

 




 吐き逃げた男の子の後姿を見ながらアイナは新鮮な気持ちでいた。男の子が何を怒っているのか全く見当も興味もないアイナの心には残らない。割とどうでもいい。アイナにしてみれば理不尽極まりない測定による結果なのだ、そこにアイナの意志は関係ない。勝手な決定事項に困っているのは何も男の子だけではないのだ。アイナは自分こそが最大の被害者では? と誰にも言えない文句を抱えて迷惑を被っていた。

 (これ、どうしようか‥‥‥)面倒事に巻き込まれた感満載のアイナの溜息は無為に長い。

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