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測定は光りました。

 「さあ、君で最後だね。こちらに立って手で触れなさい」


 顔見知りの神官さん、いつもの微笑で誘導してくれる。言われるままに食卓に座るオジサン達の前に立たされた。背が低くて届かないので椅子の上で膝立する。用意された卓上のお盆を覗き込むと水が張ってあるのか水面が揺らいでキラキラ光が反射している。


 (ん? なにこれ虹が映り込んでいるの?)

  

 水面をキラッキラッと虹色に光ったのが分かった。底に仕掛けがあるのかと思わず覗き込んだが水面が反射して底は見えない。

  

 「おい、さっさと手を入れろ」

 不愛想な無精ひげのオジサンは顔も怖いが声色も怖い。

 ちょっとビビって「ヒェッ」と慌てて手を突っ込んだ私は悪くない。

 怖がらせたオジサンが大人げないだけだ。

 手が触れた箇所がキラキラと強く光り出した、しかも虹色に。

 (はっ? なにこれ? 綺麗だけど意味わかんない)

 光は眩く輝きだし水面が大きく揺れ出した。

 (はっ?! な、なにこれ私動かしてないよ!)

 勝手に水面が揺れ動く不思議現象にビビりまくって手を引っ込めたら、輝きも揺らぎも収まったのでホッと安堵した。正面を見るとオジサン達も驚いている。

 (‥…なんで?)


 「おい、お前!」 

 声と同時に無精ひげさんに前頭部をグワッと鷲掴みされた。

 所謂、アイアンクローだ。

 (ちょ! なにすんの! この髭オヤジ!) 

 

 扱いが酷すぎると抗議したい。睨んでみたが無視された。

 「お前、俺の弟子にしてやる」

 (‥‥とんでもない事をおっしゃったよこの髭)

 これは是が非でもお断りしないと大変な目に遭うだろうとアイナの脳内が警告を発する。ここは心を強くして断固拒否の姿勢だ。

 

 「な、何を申されるか導師殿! 貴方の弟子は決まっていたでしょう。二人も引き取る気ですか、それは困りますぞ」

 「そうです。二人も引き取られては此方も困ります。この教会も孤児院も人手が足りないので、まだ小さい女の子は此方に残して頂かないと困ります」

 「いや、私が弟子にするのは一人だ。このガキは素質がある」

 「導師様、今一度お考え下さい。その子は幼すぎて導師様とご一緒に旅は出来ません。せめて3年は孤児院で育てる必要があります」

 「であれば私の元で育てますぞ。心身ともに成長させるには環境が大事ですからな。如何かな導師殿」

 「いらんいらん。俺が育てる、そっちはこいつ以外を育てれば良かろう」

 三人が三人供退かない。

 (ちょっとちょっと私の意向は? 私を置いて話を進めないでよ!)

 戸惑いの中置いてきぼりのアイナは戦々恐々と三人の遣り取りを眺めるしか出来ないでいた。誰も助け船をだしてくれない。そんな殺生な‥‥アイナの心の声は虚しく消える。

 

 「そもそも貴方に子育てが出来るのですか? 導師殿、子育ての経験ございますのか? 泣いた幼子をあやしたり出来ますか? せめて見習い齢までは一つ所で過ごさせないと情緒面で未熟となりますぞ」

 「左様でございます導師様。この子は見たところ5歳にも満たないかと。そんな子供の世話は大変でございます。小さい子は突発的に体調を崩すものでございます。今一度お考え下さい‥‥導師様」

 (おおおお、思わぬ援護射撃! 頑張って―――! 私もこの髭オジサンに育てられるのは嫌! この人絶対子供嫌いだよぉ‥‥)


 願い虚しく、髭オジサンの言い分が通りました。


(ああ、この世に神も仏もいないんだね‥…)むせび泣いた。

  


 

 ‥‥先行きに陰りを見せ始めた私の第二の人生…‥どうしよう

 

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