二日目:追憶
目が覚めた。
よし、大丈夫だ。今日も一年前の日付だった。元の時間と生活はなんら変わりは無いはずなのに、黒葉がいるという事実を必死に求めている自分がいる。
一通のLINEが来ている。内山からだ。
「おい!いつもの三人で川遊びにいこうぜ!3時からな!肉も焼く予定だし絶対来いよ!」
いつもの"三人"
この言葉だけで口角があがる。
「おう!三人分のコーラ用意しとくぜ!」
と元気に返信しておいた。
朝ごはんを食べて、テレビを見ているとお母さんが
「どうしたの、なんかいつもより嬉しそうね。」
と言ってきた。
「今日、内山と黒葉の三人で川遊びに行って来る。」
「あらそうなの。そういえば最近黒葉ちゃんとはどうなの~?」
いやらしい顔で聞いてくる。
「別に。」
「そんなそっけない返事しないでよぉ。昔はよくーーー」
と言いかけた途端俺はムカついて部屋に戻った。
「よぉ、コーラ買ってきたぞー。」
「ナイスゥ~」
二人そろって親指を立てている。
「あ、そろった!」
次は声がそろった。
本当仲いいな。俺達はケラケラと笑ったあとBBQの用意を始めた。内山は火を起こそうとしている。
何もいわずに黒葉が近づいて来る。
「ねぇ、手空いてるならついて来てくんない?」
と言われ、言われるがままに俺は黒葉に連れていかれた。
「懐かしい...」
そこには一面クローバーが生えていた。
「でしょ?覚えてる?幼稚園のとき幽君ここで『ぼくね!将来大人になったら黒葉ちゃんと結婚するんだ』って言ったの思い出すなぁ。」
「それは言うなって..恥ずかしい。」
黒葉はからかうように笑ったが少し間を空けた後、遠くを眺めるように微笑んだ。
「私、嬉しかったな。」
「え?」
俺はドキッとした。
思わず聞き返してしまう。
「.................。もういいよっ」
俺がじっと顔を見つめていることに気がついて顔を抑えて照れる。
「今のは聞かなかった事にしてっ!」
今度は俺がからかうように笑う。
「おーい、幽~、黒葉~、火が起こせたぞ~」
遠くから内山の呼んでいる声が聞こえる。
網を囲んで内山が買ってきたという肉を焼いて頬張る。
「おっいし~!!」
「うめぇ!!」
「あったりめぇだぁ!じいちゃんの友達の精肉店でチョー良いお肉を安くおまけしてもらったんだぁ!」
へぇ、すげぇ。それよりなんで急に口調が変わるんだよ。
「てか、お前ら二人で何してたんだ?」
おぉ、いきなりかよ。
黒葉と目を合わせる。どちらもうん!と頷いて
「ヒ・ミ・ツ」
と言った。
「なんだぁそりゃあ。まぁいい、今日は肉食ってエビチリも食いまくろうぜ!!」
前からエビチリ好きなんかい。
とにかく、エビチリの効果(?)でなんとか話を逸らせた。
「バイバーイ!」
三人は日が暮れてから解散した。
夜になってベッドに潜って今日楽しかった事を思い出していると、
俺は何か大事な事を忘れている気がした。