悪魔
控室に行こうとするフユの前に盟友、ギルが立ちふさがる。
何か言いたげだ。
「お前。知ってたのか?」
「ギル…!いや。知らない…知らなかった。」
「俺は団に入ってからまだ2年だ。だけど2年の間にいろいろ見てきた。
お前の中にいるという悪魔の種族の残忍さも」
ギルは悔しそうにこぶしを握る。
「…お前のことは弟のように感じてたさ。それでも…!!!」
ギルの拳がフユを目掛けて降りかかる。
俺だってなりたくてなったわけじゃないのに!!!
「その辺にしとけよギル。見っともない」
すんでのところで手が止まる。
振り返るとギルの友人がたっていた。
友人は倒れているフユを起こし、話す
「すまなかったな。大丈夫か?」
「あ、はい…ありがとうございます」
我を忘れていたギルが正気を取り戻したかのように落胆する
「リタ…すまないフユ。おめでとう。」
そう言い残すとギルは控室の奥に消える。
どんな思いがあっただろう。わからないにしろ仲の良かった人間にあれ程までの
敵意を向けられ動揺しないわけがない。
「俺はリタ。リタ=スウェイン。ナイツバード所属だ。よろしくな。」
そういうとリタはフユについた砂埃を払う。
「ありがとうございます、リタさん。俺もどうなってるのかわからなくて。」
うんうんとうなずきながらリタは話す。
「君の反応を見てるとそうだろうなと思うよ。ただ申し訳ないね
俺とギルは2年前、直接冥級悪魔と戦っているんだ。」
そういうと事の経緯を話し始めた。
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それは2年前まだギルたちがナイツバード所属になったばかりの時。
要人警護の任務にあたっていた二人はテロ組織のテロに巻き込まれる。
何とか要人を守り抜いたが、テロ組織の一人が自身の血肉を生贄に悪魔に受肉させたのだった。
『アズール国万歳!!!』
『下がれ!ギル!降悪術だ!』
リタは青い炎で包まれる敵を見ながら撤退する。
続いてギルも逃げる。
『クフフフ、久しぶりの現世だぁ!!!』
さっきまで炎に包まれた人間は青黒くなり、人間とは思えない醜い姿になった。
『憑依…されてるのか?』
明らかに人とは違う闘気。等級は概算だが特級レベル。
当時上中級の2人が敵う敵ではないことはわかる。
『逃げるぞ、ギル』
ナイツバードはあくまで隠密部隊。バレずに離脱し応援を呼べる。
そう踏んだリタは被害を防ぐべく戦線離脱を試みることにした。
しかしそれが間違いであった。
『クフフフ、なにやら強そうな闘気が2つ…。いいねえ』
気配隠密で気配を消していたはずの2人の方向を悪魔が凝視する。
『逃げようという意思が見えるぞぉ?』
そういうと悪魔は姿を消した。
『見つけたぁ!』
2人は少しギクッとしたが、
『ああ!!悪魔!!!!!』
というテロ組織のメンバーの断末魔が聞こえ、動きを再開した。
彼らには気の毒だが、今はただただ自分でないことを安堵するのみだ。
『行くぞ、ギル。』
『ああ、』
そう、歩みを再開しようとした
その時だった!
『どこいくのぉ¿』
2人の背後から聞きたくない悪魔の声が聞こえる。
恐る恐る振り返るとそこには薄ら笑みを浮かべる悪魔がたっていた。
二人はすぐに戦闘態勢に入る。
しまった。ここで戦うべきではないのに!
『君たち強そうだねぇ。他とは違う魂をしている…何者¿』
悪魔は問いかける。
対峙しているだけでも冷汗が止まらない。
『お前こそ何者だ。そこらの悪魔じゃないだろう。爵位は?』
リタは悪魔に問う。
思念伝導でこの情報を届けなければならない
バレてしまえば殺されるかもしれないが。
『ん~あまり言わないほうがいいんだろうけど、言っちゃうよぉ。
俺はパズズ。爵位は子爵だよお。』