表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

通学路

作者: れい

カクヨムさんにも投稿しています

 私はどこにでもある平凡な構造の街で育った。


 漠然とした窮屈さを感じながらも鬱屈な気持ちを押し込み日々学校へと通っていた。



 長い冬休みを経て巣と化した家を嫌々ながらも出ると、隣の家に住む幼馴染みが電柱の傍で赤いマフラーを巻いて待っていた。そしてその足元には黒く薄汚れた一匹の猫がいた。


 電柱の奥にある路地には家族らしき子猫達がいて、そのどれもが痩せ細っているように見えた。


 晴れることのない眠気にあくびをしながら家から出てくる私に幼馴染が笑いかけてくる。まるで朝は一日の始まりだからとでも言うような幼馴染の爽やかな笑みが、暗がりになれた私の濁った眼には眩しい。


 冬の朝の冷たさと幼馴染みの温もりに身体が慣れ始め、長い通学路を抜けると学校に着く。


校舎の手前にある外界を拒むかのように存在する冷たい錆びが浮き出た校門に、私と同じ格好をした子供達が誘われるように吸い込まれていく。


 校門の前には正体不明の冊子を配る年配の人達がいるが、先生達は見て見ぬふりをしている。それに倣うように生徒たちも彼らに目線を合わせない。


「ああいうのやっちゃダメらしいよ」


いつかの昼休み、幼馴染みが興味なさそうに言っていた。


 困惑しながらも冊子を押し付けられる子らを尻目に私は寝ぼけて気づかないフリをしてそそくさと通り過ぎると、いつの間にか隣からいなくなっていた幼馴染みが私の分も受け取って追いかけてくる。貰えるものは貰っておけばいいと私の好きな楽し気な顔でそう言っていた。


 受け取ったそれを鞄の空いたスペースに無理やり押し込んでいると学校のチャイムが鳴る。



 夕方になり学校から帰る時間になると幼馴染に別れを告げ一人で帰路につく。


 幼馴染はその快活なイメージ通りに部活に入っていた。部活の大会を見に行きたいと言うと見たことのない様な照れ顔で断られたのが印象深かった。


 通学路は朝と違って暖かな陽気に包まれていた、夕焼けに我が家の温もりを感じる。


 定時にはまだ早く、交通量の少ない道路を手を上げずに横断する。いつからか誰もしなくなっていたこと。


 家が見えてくると猫が朝と同じように待っていた。驚かせないように影に隠れて通り過ぎる。


 家の玄関を開けようとすると、おかえりなさいと言いながら母が出てきた。手には細かく切ったソーセージを入れた皿を持っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] どこか懐かしさを覚える作品でした。 二人とも女の子かな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ