ゴリラとクローバー
「ウホウホ……ウホホ、ウホ、ウホホ」
愛する相手を想い、花占いをするゴリラが1匹。
佐藤ゴリ子。4歳のメスゴリラである。
※画像1
クローバーを無造作に抜いては花占いを繰り返す彼女。
【しない】から始めるその花占いの結果はいつも同じだ。
そんなことはゴリ子にだって分かっている。
分かった上である一つの奇跡を願いながら繰り返しているのだ。
「ウホホホウホーホーッウホホッホウホホ……」
アメゾン川の下流に位置するこの場所は土の状態も悪く、栄養が十分に行き渡らないという理由から三つ葉のクローバーしか生えない。
だが、100年に一度この地にも四つ葉のクローバーが一本だけ咲くという言い伝えが、ゴリ子の住む集落にはあった。
実際にその四つ葉のクローバーを見たゴリラはおらず、真実かどうかは分からない。
「ウーホホッ。ウーッホホウホホホホ」
「ウホッ」
どこからともなく現れ、ゴリ子のホッペを真っ黒い人差し指でツンとつつくゴリラ。
中林ウホ美。ゴリ子が想いを寄せている5歳のメスゴリラである。目鼻立ちがはっきりとしている彼女は群れ1番の美ゴリであり、求婚ゴリラが後を絶たない。
※画像2
「ウホウホホンホホンウホホ。ウホベキスタウホウホホン!」
「ウホンウホンウホホ。ウホウホホホホンウホホホ……」
「ウホ……。ウ、ウホホンジュラスウホホホウホウホウホウッホホッホ?」
ゴリ子とウホ美が暮らしている集落では、5歳になったメスゴリラは他の集落に嫁ぐ決まりがあった。しかも結婚相手は親同士が互いの利だけを考えて決めてしまう。簡単に言うと政略結婚というやつだ。
先日5歳の誕生日を迎えたウホ美も例外ではなく、アメゾン川の上流に位置する集落の相手とお見合いをさせられていた。
「ウーホ、ウホッホウホホホンウホウッホウンホホへ……。ホッ、ウホホイホウホホホンホホ。ウホホイホホイウホホウホホ!」
どこかぎこちない笑顔でウホ美がお見合い写真を開く。
※画像3
「ホッ。ウホ、ウホホウホッホ……ホン……」
ゴリ子の言葉にならない鳴き声を代弁するかのようにウホ美が口を開く。
「ウホホイ。ウホホンホイ。ウホホイウホホイヒッヒウホ……」
アメゾン川の上流に位置するマンドリルの集落。そこのボスの息子である、【神田マルコス・ラシュフォード・エバートン・ロベルト・ウワクチビル・ファン・ニプレス・マンドリ男】とのお見合い。
この少し長い名前のマンドリルと結婚することで、ゴリ子とウホ美の集落は糖度四十を誇るプレミアムバナナが採れるアメゾン川中流まで領土を広げることができる。
プレミアムバナナに目が眩んだウホ美の父と、ウホ美の美しさを気に入ったマンドリルのボスが勝手に進めた縁談であった。
ヒドイ話に聞こえるかもしれないが、これが野生で暮らす彼ら彼女らの日常。なんら珍しいことではなかった。
「ウ、ウホホ、ウホウホウホホンウホウホホホン?」
「ウホホ……」
『ドムドムドム……』
急に突きつけられた愛するウホ美との別れに、ゴリ子はただただドラミングすることしかできない。
聴いたものを少しだけ毛深くすることができ、群れのみんなに愛されているゴリ子のドラミング。だがキレを失ったその音色は弱々しい……。
「ウホホウホウッホウホンホホ」
空を見上げるウホ美の目には涙が溜まっている。
「ウホホホウホホへウッホーホーンウホホ」
想い出を語るゴリ子の目にもまた、涙が綺麗に光っている。
「ウッホホウホホウホホンホホンウホッホホ」
次は自分の番と言うようにウホ美も思い出を語る。
「「ウッホァホーホーンウホホ!!!」」
ゴリ子とウホ美の声が重なる。
打ち合わせなんかしていなくても、このくらいのことは造作もない。それだけ二頭の思い出はお互いにとって宝物であり、互いの存在もまた特別な宝物であった。
※バッファローゲームとは頭の上に両手の人差し指でバッファローの角を再現し、目をつぶりながら相手の乳首の位置を当てるゲームである。
「「ウホホホッ」」
互いに目を合わせ笑い合うゴリ子とウホ美。
「ウーホ、ウホホイウッホウホホイウホウホウッホーホイホンホン……」
「……」
ウホ美が何を求めているか。
自分はどうしたいのか。
答えは出ているはずなのに、ゴリ子は白馬に乗れないでいた。
あと一歩。何かが背中を押してくれたなら、ゴリ子は白馬に乗れるかもしれない。
100年に一度この地にも四つ葉のクローバーが一本だけ咲くという言い伝え。
今ならその奇跡を手繰り寄せることが出来るかもしれない。
そう思ったゴリ子は無造作に近くにあったクローバーを抜いた。
「ウホウホ……ウホホ、ウホ、ウホホ」
そんな簡単に奇跡なんて起きはしなかった。
それにあの四つ葉のクローバーの言い伝え自体、真実かどうかは分からない。
そんなものにすがった自分が馬鹿みたいだとゴリ子は思った。
ゴリ子をじっと見つめるウホ美。
「ウホ、ウホホホウホホイ」
俯いたゴリ子を下から覗くようにウホ美が言った。
「ウホホウッホウホホホウホ。ウホホウッホッホウッホホ……」
「ウホホホ」
そう言ってウホ美がクローバーをゴリ子に渡した。
「ウホウホ……ウホホ、ウホ、ウホホ。ウホ、ウッホウッホホッホ」
ゴリ子の言葉を遮るようにしてウホ美がもう一度クローバーを渡した。
「ウホホッホ。ウホホホウホ」
「ウホ、ウホホ、ウホ……」
奇跡なんて起こす必要なかった。奇数である三つ葉のクローバーを二回連続で花占いすることで偶数にしてしまう。
告白【しない】から始めた花占いを【する】で終える簡単な魔法。
ゴリ子の背中を押してくれる、愛の魔法。
ウホ美にそこまでさせて黙っていられる程、ゴリ子はおとなしいゴリラではない。
愛のチャッカマンに火がついた。
ファイヤッ。
「ウホホ……。ウホホウホホンホイ。ウホホイ!ウッホウホホンウホホイ!」
「ウッホウッホウホッ。ウホホホウホホホン!」
抱きしめ合うゴリ子とウホ美。
二頭は野性味溢れる豪快な口づけを交わし、手を繋ぎ自分達が幸せに暮らせる場所を探す旅に出た。
互いに想い、想われることは決して人間だけのものではない。たとえ同性であってもそれは変わらない。
それを二頭は私たち人間に教えてくれたのかもしれない。
Fin
ゴリラとクローバー抜き打ちテスト〜!!!
問1
ゴリ子の年齢を次の三つの中から選び記号で答えよ。
ア・アジサイ
二・4歳
メ・チンゲン歳
問2
ゴリ子の苗字を次の三つの中から選び記号で答えよ。
プ・佐藤
リ・中林
ン・西条
問3
画像1、2、3の中にゴリラではなくオランウータンの画像が紛れ込んでいるがそれは何番か次の三つの中から選び記号で答えよ。
ド・画像1
レ・画像2
ス・画像3
問4
ウホ美のお見合い相手のマンドリルの名前で正しいものを次の三つの中から選び記号で答えよ。
ス→【神田マルコス・ラシュフォード・エバートン・ロベルト・ウワクチビル・ファン・ニプレス・マンドリ男】
イ→【神田マルコス・ラシュフォード・エバートン・ロベルト・シタクチビル・ファン・ニプレス・マンドリ男】
カ→【神田マルコス・ラシュフォード・エバートン・ロベルト・ウワクチビル・ファン・ニップレス・マンドリ男】
問5
ウホ美のお見合い相手はマンドリルだったが、世間には「いってきマンドリル」や「ただいマンドリル」など、その汎用性の高さから一部のコアなマンドリルファンがいる。そういった人達を総称して何と呼ぶか。次の三つの中から選び記号で答えよ。
※本文中に記載はありません。勘でお答えください。
ヒント
ゴリラファン→ゴリラー
マヨネーズ好き→マヨラー
むらもんたファン→ムラムラー
ど・マンドリルの民
ら・ドリルマン田村と愉快な仲間たち
む・マンドリラー
問6
群れのみんなに愛されているゴリ子のドラミング。その特殊な効果は何か。次の三つの中から選び記号で答えよ。
ら・聴いたものを少しだけ毛深くする
む・聴いたものを凄く毛深くする
ね・聴いたものはビブラートが上手くなる
問7
ゴリ子のゴリラ語の中に一度だけ国名が紛れ込んでいたが、それはどこの国か。次の三つの中から選び記号で答えよ。
ま・アラブ首長国連邦
り・ウズベキスタン
も・ホンジュラス
問8
奇跡は起こらなかったが、ウホ美の行動によりゴリ子の背中を愛の魔法が押してくれた。その結果あるものに火がつきました。それは何か。次の三つの中から選び記号で答えよ。
と・むらもんたの創作意欲
ん・愛のチャッカマン
び・松岡のおさむちゃん
問9
二頭が私達人間に教えてくれたこととは何か。次の三つの中から選び記号で答えよ。
い・負けないこと、逃げ出さないこと、投げ出さないこと、信じ抜くこと
た・互いに想い、想われることは決して人間だけのものではない。たとえ同性であってもそれは変わらない。
ち・半径×半径×おっぱいが何を求める公式か
問10
「いってきマンドリル」や「ただいマンドリル」のように普段使える「〇〇マンドリル」を一つ考え記述せよ。
正解は下にあります。
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答え合わせ
問1・二
問2・プ
問3・レ
問4・ス
問5・む
問6・ら
問7・も
問8・ん
問9・た
問10は書けたら正解とします。
答えの記号を縦読みしてください。
ツイッターで絡みのある方は分かりますよね?(笑)
1〜3点
赤ちゃんゴリラ
4〜5点
駆け出しゴリラ
6〜7点
幹部ゴリラ
8〜9点
リーダーゴリラ
10点
レジェンドゴリラ
さて、あなたは何ゴリラだったでしょうか。
ということで、最後までお付き合いいただきありがとうございました。
むらもんた初の百合作品でございました。