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ヨルム様の独り言日記  作者: 斎藤 怜
9/22

9話

投稿遅れました。

申し訳ありません。


後日修正します。

この瞬間、間、が発生した。


奴の動きがゆっくりと感じられ、代わりに頭の中で声が響く。


『気が付けばいつの間にかピンチじゃないか。余が新しいアプリをダウンロードしている間に死にかけてい

るとは。下僕よ』


『うっせえ。いいから力を貸せ』


『力を貸せ、か。良し、いいだろう。あ、今の良いだろうは前振りじゃないからな。んん、汝、力が欲し...いやこれ前回やってあまりにも定型文すぎるから使わないようにしてたんだった。んんん、さて、どうした

もんか』


『こっちは今すぐ使いたいんだ邪魔するな』


『邪魔とはなんだ邪魔とは我が、あ、いや余は古き神ぞ?そのような言葉、許すと思うか下僕。大体何の為に余と契約を交わしたのか、まさか忘れたわけではあるまい』


古き神、名をヨルム。蛇の化身。こいつとガキの頃、契約したのがそもそも間違いだった。


『まあ良い。本当はリアルなやり取りを雰囲気が出るよう書きたかったのだがな。またうまくでっち上げるとしよう。まあ、力は勝手に使うんだな』


『そうするさ』


と、間、が消失した。現実に戻ると既に奴の剣が目の前に迫っていた。避けられるはずもなく、俺は


剣に向かい、拳を振るった。


拳と剣。必然何かが勢いよくぶつかった時、その衝撃が強ければぶつかった弱い方が粉々に砕け、落ちる。


そして、俺の拳と奴の剣がぶつかり、


剣が砕け散って、大小様々な破片が雑草に音もなく落ちていった。


俺の右拳は素手ではなく、大蛇に飲み込まれていた。


実際は黒い靄の様なものが蛇の形を取り、腕を飲み込むように纏っている。


俺の拳との衝突なのか、あるいは騎士としての体捌きのおかげか、奴の剣は砕け、動きが止まった。


「なに、が」


「喰らえ!!!」


俺は固まる奴の胸当てに同じく影の蛇に飲み込まれた左腕で殴った。


胸当てはへこみ、奴はその鎧ごと浮いて、吹き飛ばされる。土が柔らかいせいか昨日の俺の様に転が


る事はなく、背中から地面に落ちた。


「かは、その、姿は………」


奴が立ち上がった時に見たのは、大蛇の体が俺の胴を這い、腕、足、頭部までもがそれぞれの口に飲


み込まれた姿だった。


まさに呪われた蛇の鎧。



「そんな、姿は、化け物。そんな姿に成り果ててまで私を殺し、生き延びたいのですか」


「そうさ。裏社会で生きるなら化け物にだってなるんだよ。そして、この姿を見られた以上おまえは殺す」


俺は地面を蹴り、1歩で奴の前に立つ。


後はひたすらに殴る。殴る。構えだとか技術だとかそんな小細工は今の姿になった俺には必要ない。


「う、うおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…」


奴は腕で顔面を守るように組み、ひたすら俺に殴られる。声をあげるが、その声も続かず、段々と細


く、小さくなっていった。


「…ぉぉおおおおっ!」


腕で俺の拳を跳ね除け、後ろへ下がる。下がるというよりは後ずさりし、距離を取ろうとする。


「逃げてもいいが、その場合町の人間も殺す。この姿はまじで見られたくないんでな」


俺の言葉に奴は足を止める。


後ろを振り返りはしないが、明らかに目が泳いでる。


まさか、本当に逃げるつもりだったのか。


「聖導師様、どうか私に導きと救いを」


そう呟くと、騎士の証でもある鎧を脱ぎだした。帯と、止め紐を外し、籠手、肩当、腰当、胸当てと


外していく。


俺はその間にも攻撃する事は出来たが、あえて脱ぎ終わるまで待つ。


だが全部は脱がず、どうやらすぐ外せる部分だけを選んだようだ。


そしてその身軽になった体で拳を構え、突っ込んできた。


突っ込んできたのに合わせてこちらも蛇の拳を振るう。が、その隙間を縫ってこちらに接近し的確に


蛇の鎧のない所、顔面へと打ち込んできた。


だけどこちらは首を動かすだけでそれを防ぐ。


そしてその腕が戻される前に両腕の蛇で噛みつく。


感じるのは、熱。


『熱というのは生命(いのち)だ。生きるという事はつまり熱を持っているという事。余はその(いのち)を食らうのだ。努々(ゆめゆめ)、熱を奪われすぎるなよ?余の下僕よ』


過去に聞いた言葉を思い出す。


「なんだ、この感覚は」


「生命というのは熱だ。生きているという事は熱を持つ事だ。わかるか?熱を奪われているという事が。感じるか?体から熱が喪われていくのが」


俺の言葉で違和感に気づいたのか、急に噛まれていた腕を振って俺から離れた。


だが既に奴の顔は病人のように白く、は、は、は、は、と浅く吐く息も白い。


そして、俺自身も先程まで感じていた傷の熱や戦いで感じていた昂りを感じない。


『努々、熱を奪われ過ぎるなよ?余の下僕よ』


その言葉が頭をよぎる。


俺がぼーっとしていると、奴は走り出した。だが、逃がしはしない。勝手に生えてきた尾っぽを操


り、奴の首に噛みつく。騎士の足が浮いた。体が持ち上がり、俺の視線


「…………ご…………ゆ…………」


『いやあ満足満足。一体満足。この騎士の熱の量素晴らしかった。まるで太陽でも飲み込んだかと思ったぞ。それだけ強い(いのち)だったぞ』


満足げなヨルムの声が頭に響くが、俺は冷たい眼差しで、瀕死の騎士を見下ろしていた。息はあるものの既


に目の焦点は合わず、きっと触れば死体より冷たくなっているだろう。俺自身は傷の痛みはあるが、


熱は感じず、命がけで戦っていたのにも関わらずどこか冷めた感覚だ。そして、俺は、仕上げの一撃


を放つため、胸から魔槍を取り出し瀕死の騎士の胸に突き立てる。




来た道をふらふらした足取りで戻っていくと、雑木林を抜けると、まず他の騎士連中が視界に入ってきた。


きっと自分達の隊長が帰ってくると思い出迎えてきたのだろうが、俺の顔を見て全員が動揺の声を上げる。


「そんな、まさか」


「じゃあさっきの声は」


「隊長が、負けた…?」


口々に疑問の声を上げるだけで誰一人剣を抜いて来る者はいない。


「奴ならこの先だ。行って自分達の眼で確かめるといい」


俺はそう言って奴らの間を抜けて歩いた。その後ろでは隊長、隊長!と慌てて駆け出す音が続く。奴


らの中では騎士どもの隊長であるマッシュが俺との戦いに敗れ、気絶かあるいは動けなくなってい


る、とでも思ってるのだろう。だが残念ながらそうはならない。いや、仮に生きていたとしても今の


俺がそれを許すはずがない。彼らの最期を見る事はせず、俺はアリシアの元に向かった。


『うーん、この下僕が自分のやった事に対して見届けないから吾輩が補足でも入れておくか。騎士どもは走った。賊の言う事を信じるのは癪だが、実際に隊長は戻ってこなかった。先ほどの叫び声も気になる、と。

そして騎士達は見つけた。我らが最強の騎士、マッシュに突き立てられた槍を。ああ、なんという事だ。騎士どもはすぐに駆け付けるだろう。だが時既に遅し。見ればわかるが、聖導騎士隊長マッシュ・ガーリーは戦死した。せめてと彼らはその死体から槍を引き抜こうとするだろう。

だが、それは叶わない。なぜならその槍は掴もうとすると手をすり抜け、死体により正確には地面へと溶けていったのだ。そう、その溶けた槍は影となり、雑草の中を騎士どもには見えない足元を影で覆っていく彼奴らは気付きまい。そして気づいた頃には、全て飲み込まれている。地面から生えた槍に?いやいや、それは文字通り狼の化身。かつて、吾輩と同じく時代を生きた邪悪で賢い狼の顎そのものだ。騎士の死体を中心としたその開かれた顎は騎士ども飲み込み噛み砕くだろう。ま、ここからでは見えんから、想像だがな』


雑木林の向こうからバチン!と何かが閉じられる音と、複数の断末魔が届く。何が起こったか分から


ない町の連中はただただ怯えているしかないだろう。


「アリシア、行こう」


「けど、その怪我です。一度休んでいった方が」


「いや、あいつらもお前を殺す為に追手だった。という事はまだ他にも追いかけてきている奴がいるはずだ。後ろから追ってくるにしても先に回り込まわれているにしても、急いだほうがいい。それに」


それにと言って、俺は町の連中を見た。彼らのほとんどは事情を知らない。面白半分見世物気分で見


に来ていたはずだ。だがもうその目はこちらへの恐怖でしかない。アリシアもその視線を感じたんだ


ろう。俺に、その聖印の刻まれた手で腕を掴まれる。


「行こう」


俺はアリシアに再び言って歩き出した。彼女は今度は何も言わずついてきた。が、1度だけ、立ち止


まり、何をするかと思えば雑木林に向かって祈りを捧げていた。声は小さくて聞き取れなかったが、


きっと決まり文句でも唱えているのだろう。仕方なくそれが終わってから行こう。と、俺も立ち止ま


ると1人、近づいてきた。あの目つきの悪い、いや目の悪い修導女だった。


彼女の言葉を待った。しかし、声を掛けるそぶりをするも言葉が出てこないのか、俺を睨むことなく


どこか迷いのある表情でこちらに問いかけるように見つめる。見つめられた所でこちらからかける言


葉はない。


アリシアの祈りも終わったのかこちらへ歩き出す。それを待って俺も歩き出した。目の悪い修導女は


俺達が町を出る最後まで声を掛ける事はなかった。


最後まで読んで頂きありがとうございました。


どうですかね(汗

いや、今もちょっと眠いのでまた今度。

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