4話
二日に1度は投稿したい()
でね、相方とね、いくつか話数を貯めてから投稿する、という話だったんですよ。
どうしようか。
いや、なんの話だ。
『アルファズル様アルファズル様』
俺の名前を耳元で呼ぶ声が聞こえる。この声は
「ナッツルーラーか」
「え、ナッツ?」
「あ、いや違う俺の名前は」
『アルファズル様お呼びですよ』
「ナッツ、今はタイミングが悪い。後にしてくれ」
「あの?後で教えていただけるという事ですか」
「違うそうじゃない。俺は」
『ア・ズ・ファ・ズ・ル・さ・ま』
ナッツルーラー!わざとやってるな。
俺は忌々しい声の元である右耳のイヤリング、正確にはその先についた木の実に視線を向ける。
ちなみにナッツルーラーの声は俺にしか聞こえていない。
その為、アリシアは急に俺が1人漫談でも始めたように見えるだろう。
くそ、雰囲気が台無しだ!
「ちょっと待てアリシア。すぐに終わる」
アリシアは首を傾げるが素直に待ってくれるようだ。
頭は軽いが基本的には物分かりの良い娘らしい。
彼女から背を向けナッツルーラーとの会話に集中する。
『ナッツ、最近俺への嫌がらせも増えてないか』
『そんな事はございません。私がばかにしているのは基本、主であるヨルム様だけですので』
『で、こんなタイミングで話しかけてきたという事は』
『はい、その主様、ヨルム様がお話があるそうです。ヨルム様ー』
ヨルム。
その名は今は古き時代呼ばれている時代に生きていたといわれる封印されし古き神の名。
幸か不幸かガキであった俺はこいつに目を付けられ強引に契約を結ばされた。
以来こうして、気まぐれに話しかけてきては俺の行動にいちゃもんをつけたり、無理難題を押し付けてくる。
『んー、あーちょいまち。くそ相変わらずロード投げえな。まぁいいや。ナッツ―ルーラー、余が余の下僕と話している間に代わりにやっといてー。1番上のクエスト選ぶだけでいいから』
『わかりましたー。えーと、アーシマッターマチガッテ、別のクエストを受けてしまったー』
『どれどれ。…ナッツルーラー!貴様、余のアカウントでスタミナを無駄遣いしおって!あとで仕置きな』
『あ″-』
相変わらず俺には理解できないがしょうもないやりとりをしてるんだろうな。
『待たせたな我が下僕、アズールファブルよ…』
『アルファズルだ。自分でつけた名前間違えんな』
神はきまぐれというが、あまりにも適当すぎる。
『そうだっけか。まぁ良い余の下僕よ。なぜ今まで連絡をよこさなかったのだ』
そうきたか。
『こちらから連絡する事はなにもない、と思っていたが』
『馬鹿者!!面白そうな依頼を受けたら颯爽と連絡せよと言っておるではないか!!なんの為にナッツルーラーを遣わしていると思っておる!ぶっちゃけネタに困っていたからナイスタイングだわ。金髪美少女聖女様とか最高かよ』
『おい、結局覗き見してたんじゃねえか』
『当たり前だろう。我が下僕よ、何の為に下僕をやっているか忘れたわけではあるまい』
そう。
親を失い、家を失い、命すらも失うはずだった俺にこいつは語りかけてきたのだ。
そして古き神の下僕となるよう契約を迫った。その内容は、
『退屈すぎるこの余の為に世界中の面白い出来事に首突っ込んでネタを持ってきなさーい!と契約したではないか』
もし、もし子供の頃の自分に言えることがなるなら、
―――やめておけ、ここから先は地獄だぞ―――
て言ってやりたい。
『で、その古き神様ヨルムがわざわざ出てきて何しに来たんだ。こっちはアリシアを待たせてるんだ手早くしてくれ』
『これだから童貞は。そう急かすな』
「誰が童貞だ!」
あ、しまった。
今まで頭の中で会話していたため急に「誰が童貞だ!」と独り言が出てしまった。
案の定アリシアは引いてるのか単にビックリしたのか、多少身を引いていた。
頼むから後者であってほしい。
『で、だな。用というのは他でもない。この依頼当然受けるよのなあ』
『まぁどうせあんたが断らせてくれないだろう』
『そうだな。あの場面でもし断っていれば下僕もナッツルーラー同様お仕置き確定だったぞ』
理不尽すぎる。
『だがあの棺桶は流石になんとかしないと無理だ。あれは俺1人でどうこうできる問題じゃない』
『ふむ、持てないと』
『少なくとも山越えは無理だ』
『それなんだがな、今回、余が手伝ってやらんこともないぞ』
『正気か!?』
あの、あの古き神を自称するだけで威厳もクソもない、普段何の苦労も自分からは言い出さないあのヨルムが自ら手伝いを?
『なんだその疑うような意識は。余だって時には下僕を助けよう。気まぐれだがな』
まぁ気まぐれと言われればありえない事もないか。
『で、だ。その棺桶?とやらを近くで見たい。出るぞ?』
「アリシア」
「は、はい!」
「待たせたな。この棺桶についてなんだが、俺が預かってもいいか」
「はい?それはその、お任せしてもよろしいのですか?」
「ああ。どのみち、アリシアの細い手ではこれ以上引く事もできないだろうし。俺が何とかしよう」
「では、お願いします」
「という事で、今日はもう寝よう、な。すぐに寝てくれ」
「すぐにですか?」
「大丈夫だやましい事はない。まじで。ただ今日はもう疲れただろ。さ」
俺はアリシアの疑問を顔に浮かべていたが、横になる。本当に疲れていたのだろう。俺の顔を見ていたと思ったらすぐに目を閉じ、静かに寝息を立て始めた。
寝たふりじゃないよな?
しかし、寝たふりでももう遅い。
胸にぶら下げた革製のポーチ。
そこを中心にして体が急速に冷え切っていくのを感じる。
まるで、自分の体が氷に呑まれていく感覚だ。
次に襲ってきたのは体を蛇が這う感覚。
こればかりはいつになっても慣れる事はない。
喰われるはずはないとわかっているのに、今にでも巨大な蛇の腹に収まってしまいそうな感覚に陥る。
『ふふふ。そんなに身を強張らせおって、普段の殊勝な態度はどうした?』
いいから早くしろ。戦闘中以外でお前を使いたくない。
『ふむ、普段からこれ位素直であればなあ』
ついに実体化したヨルム(といっても実際の姿よりはるかに小さいらしい)の黒い影ともみえる姿が俺の体を通して、棺桶に近づく。
その蛇は品定めするかのように棺桶を囲む。
『ふぅむ。実際に見ても自信はないがまぁ多分これだろう。傷はついているが、まぁ誤差だな。これでよいだろう…』
ヨルムの影は独りごちて口を開くと棺桶を丸呑みにした。
その背徳的な光景をまじまじと俺は見せつけられた。
『よし、回収回収。ではな。さて、ナッツルーラー仕置きの時間だぞ…』
現れた時の仰々しさはなく、消える時はいつも一瞬だ。
俺は額に浮いた冷や汗をぬぐった。アリシアは、と見ると、変わらず寝息を立てている。
何とかばれなかったらしい。ヨルムは聖導師様の教えで言えば『禁じられた古き時代』に実在していたとされる神、と呼ばれる存在だ。
そんなヨルムの姿をアリシアに見せるわけにはいかない。
俺はそんな日が来ないよう考えながら眠りについた。
またまた読んでいただきありがとうございました。
私が1人でシコシコ投稿作業している間にですね。
デートに行ってる人がいるんですよ。
これが。
いや、めでたい。出来れば彼の恋?恋愛?が成就する事を祈って。
いや、何の話だよ。