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ヨルム様の独り言日記  作者: 斎藤 怜
3/22

3話

宣伝担当が音信不通になりました。


どうやら彼はセラフィックスの底にしずんでしまったのかもしれません。

この次話投稿している私もセンチネルから逃げています。

ですが、もう駄目かもしれません。このメッセージを読んでいる方へ


快楽天vs失楽園 始まってます






いや、何の話だよ。


「いやあ無事に合流できて何よりだなぐへへおあ危ね」


にへら顔で近づいてくる情報屋にむかつき、つい槍を振りまわす。


「なーにが無事にだよ。俺が起きてなきゃ金づ、依頼者が死んでたとこだったろうが」


「そん時はおまえ前金だけでづらかれぇじゃあいいじゃねえか」


話は昨日に遡る。


依頼を受けた俺は


「で、その聖女候補様っていうのはいつ来るんだ」


「何おめえここで待ってりゃそのうち通るさ」


「それがいつだよ」


「とおりゃわかる」


「だから…」


と情報屋と問答を繰り返している内に寝てしまい、気が付けば朝。


聖女候補様はとっくに寂れた廃村を発っていた。


「は?金貨300なんて逃してたまるかよ。情報以外はそこらのクズ以下の価値しかねえなクソじじいが」


「はぁ?聞捨てならないんですけどぉ?そのおっさんが?わざわざ?勝負鎧を身に着けてまで?敵のほとんどを吹き飛ばしてあげたんですけどぉ?」


熊をイメージした全身鎧に身を包んだおっさんが言葉のリズムに合わせて体をひねる様はかなりキモい。


俺は、はいはい、といって聞き流した。


「いやー疲れた。ほい」


情報屋が例の手のマークを出してきた。


「なんだよ」


「助っ人代。金貨持ってんだろおい」


「ふざけんな前金でもらったもんをなんでてめえにまた払わなきゃいけねえんだよ」


「あぁん?俺がいなきゃ死んでたろうが」


「そもそもてめえに付き合って寝過ごさなきゃこんな目には合わなかったんだよ」


さすがの俺もこれには堪忍袋の緒が千切れ、締めれない。


が、足に何かかが引っかかる。


それがローブから伸びる小さな手であることが分かった。


「ぁ…………ぅ…………」


下向いてるし、声小さいせいで何言ってるか全くわからない。


「あー、悪いけどさ、今取り込み中だからさ、とりあえず後でいい」


どうせ裾を軽くつかまれてるだけなので足を動かして手を払う。


「きゃ」


こっちに体重を預けていたのか、払った途端、そんな可愛らしい声が聞こえて思わず振り向く。


情報屋もその声に反応して振り向いたらしく俺と同じものを見ていた。


ローブのフードが取れ、顔があらわになる。てっきり高貴な育ちの聖女候補と聞いていて、オホホ私を安全な場所にかくまいなさーい的なめんどくせえ貴族女を想像していたが、


超 絶 美 少 女 


肌は陽が当たり輝く程の白さ。


ぶかぶかのローブのせいだろうか、華奢な矮躯矮躯(わいく)が全体的に儚く感じられその髪は1本1本職人が金の糸を頭に植えていったかと思うほど美しかった。




夜も更け、森は暗闇と静寂さに包まれる。


夜の獣たちが蠢く時間ではあるがその森で、わずかに明かりが灯っていた。


焚火を囲むように俺たちは座っている。


槍を振って作った倒木に腰掛け、横目で後ろ盾を失った聖女候補である―――《アリシア》―――をみた。


最初に見た綺麗さにも目を魅かれたがまさかローブ以外何も纏ってなかったとは…




「おっさん、やっぱついてく」


「は、急になんだよ」


「えだってぇこんな可愛い娘さんだよぉ?しかもぉ後ろ盾失って独り孤独で戦ってるんだよぉ?おっさん応援したくなってきちゃったなあ。お近づきになりたいなあ。夜を共にしたいなあていうかよt」


「いや言わせねえからな!?」


しゃべり方とか内容とかあと独りで孤独って意味被ってるとかいろいろ突っ込みたかったが、なんとか一言で済ませた。


「おまえだってぜってー手ぇ出すだろうがよぉ………」


「出さないんですけどぉ………俺」


「え、それはそれでないわ」


俺は、あんたと違って紳士だからなあと続くはずが。くそ、この情報屋、まじでうぜえ。


閑話休題。


「あの、先ほどは助けていただきありがとうございました」


「いいんだよお嬢さん。いや聖処女よ。私は森の熊さん。あなたとこの森で出会って、あなたを助けにきました」


「おい、本音」


「そうなのですか………?では、あなた方がニコライ様の言っていた…」


「そうそう。依頼者の名前は聞いてなかったが、俺、は、後ろ盾を失ったあんたを無事女神降臨の儀ってやつまで守り切って依頼されたもんだ」


下心丸出しな情報屋を押し退け、自己紹介をしておく。


この少女はとりあえず俺の事を話し相手に選んだようで名前を名乗りだした。


「私はアリシア。ご存知の通り私は聖女候補の1人として、今まで聖導貴族であらせられたニコライ様、ニコライ・ニーカエノレ様の庇護下にあった者です」


どうやら情報屋が教えてくれなかった事を踏まえ俺に教えてくれたらしい。


この少女アリシアは、聖印を授かった後に両親を亡くし、今まで国に7人しかいない最上級の聖導貴族7人のうちの1人であるニコライ導士に身を寄せていたらしい。


だがそのニコライがつい先日天寿を全うしてしまい、挙句新たな聖女候補が見つかるという事態に流され、こうして独り彷徨う身となったらしい。


「いやー聖導貴族の連中も冷たいなあ。こんな可愛い娘さんを放り出すなど。けしからん。けしからんよこれはぁ」


「その、今まで今期の聖女候補が私しかおらず、それをニコライ様が聖導師様の寵愛を独り占めしようとしていた、と他の聖導貴族の方々に思われていたらしいのです」


「ふーん、で、新たに聖女候補が出てきて今度はそれを6人で山分け。要らなくなったあんたは放逐、てわけか」


「………はい」


あー流石に放逐は言い過ぎた。


ま、俺も最初は金にしか見えてなかったんだから人の事は言えないが。


「ともかく、話は分かった。要はあん、いやアリシアを匿ってもらえる所まで連れていけばなんとかなりそうだな。聖導都ならともかく田舎の方の教会なら聖女候補の名前を出せばひれ伏すだろう。後は見張ってればいけるな」


「おっさんも見張る?」


「いらない」


「だー!も!こんなか弱い娘をおまえ1人に任せるのはもったいない!見ろよ!この華奢な姿を」


情報屋がアリシアに近づきそのローブをめくる。が、その下はまさかの―――


「あ」


「え、きゃあ!」


「おほー!」


という事でおっさんは置いていく事が確定した。




「まさか鎖を買う為に天の衣まで売りに出すとはな…」


「はい、恥ずかしながらお金を手に入れる手段がそれしかなくて」


本当はあるんだけどな。


俺は言わないことにした。


にしても、とその鎖をつけている棺桶をみる。


襲撃の傷は残しているものの全体的には綺麗な装飾の施された箱だ。


ここまで代わりに引き摺ってきたが、中身は入っていないらしい。


「にしてもこの棺桶必要なのか」


「はい、それは女神降臨の儀に際し使う、その、一種の祭壇の様なもの、と聞いています」


「ふーん?なら今回の依頼には関係ないな。とりあえず次の村か町か、引き取ってもらえる葬儀屋でも探すか」


「え、引き取る?」


「ああ、葬儀屋がだめなら教会にでも寄付して金に換え」


「それは駄目です!」


「え」


「あの、あなたは私を女神降臨の儀まで守ってくださるんですよね?」


「それが契約だが」


「つまり、女神降臨の儀が行われる聖抜都である大ジリョーに連れて行っていただけるんですよね?」


「はぁ!?大ジリョーてあの!?」


「はい。私はどうしてもそこへ向かわなければならないのです」


ふざけんなよ情報屋!!銀貨5枚も取っといて肝心な事言ってねえじゃねえかよ!


「わかってると思うがジリョー、しかも大ジリョーとなるとここ聖導都近辺の地域から更に西へ、それこそ大陸を渡る、て程じゃないが途中に大山脈デス・フジャンもある。普通に考えれば無理だろ」


「え、ですが聖女候補の方は皆決まったルートを通ってジリョーに向かわれると」


ああ、この小娘。見た目は聖女級かもしれないが、頭の中はそこらの貴族の娘より軽い。


軽すぎる。


「いいか。正規の聖女候補てのは本来各地を巡礼しながら向かうんだよ。それも隊商もかくやという大所帯でな。それなら超えられるだろうよ大山脈だろうと。けどな、俺は1人であんたの命を狙ってる奴から守んなきゃいけない。そんな状況で棺桶背負って山越えなんてしようものならこの中に入ることになる」


死体になってな!


ここまで言ってどうやらアリシアは自分が無茶な事を言っていたと気づいたらしい。


焚火で赤く照らされた顔を更に赤らめ、俯いてしまう。


気まずい沈黙だ。だが、いくら金貨300枚だとしてもさすがに割に合わない。


いや、ある意味で護衛で金貨300枚なのだ。


それくらいやらせるつもりだったのだろう。


「………それでも、私は行かないといけないのです」


「それはなんでだ。もうニコライも死んだんだろう。死者に義理立てして死ぬつもりか」


「違います。ニコライ様は、聖女とは聖導師様の元でこの世界を救う役目を唯一担うことができる存在だと教わりました。この世界にはいろんな方がいます。救われたいと願い祈りを捧げる方。日々労働に追われ明日を生きる為に暮らす方。自らの役割を忘れ、又は見失い途方に暮れ生きる方。あなたの様にお金に執着し損得で生き続ける方。もしかしたら私にもそういった別の生き方があったのかもしれません」


だったら、


「けど、私はこの聖印を持って生まれました。私には私にしかできない事があるのです。他の方にその役割を譲る事ができれば、私よりふさわしい方にお譲りできれば。でもそれは出来ないのです。この印、聖印がある限りこれは私の役割なのだと」


少女の言葉はとりとめのない願いに聞こえた。


そんなのは夢物語だと。


他の聖女候補がいる今、意味をなさない願いだと。


ただ、手を組み祈るように告げたその言葉に口を挟む事は出来なかった。


「その、どうしてもだめでしょうか」


急に我に返ったのかその組んだ手のまま俺の方を向き、再度尋ねる。


これが酒場にいた看板娘からの催促であれば財布の紐を緩めて酒なり料理なり注文したところだが、


「今新たな聖女候補が出た以上、お前のその役割は他の者に引き継がれたわけだが?」


結局この言葉は言ってやることにした。


「それは、そうですが」


もう言葉が出てこないのか口を動かしても言葉は出てこない。


それでも何かを言おうとする姿がおかしく見えてきた。


「ぷ、あはははははは」


俺が噴き出した事に、アリシアの動いていた口も半開きで止まる。


「わかった俺の負けだ。金貨300枚の報酬をもらうんだ。それくらいはやるとしよう」


「本当ですか!!」


「ただし、そうなるとこの棺桶はどうにかしないとな。流石に俺1人じゃあどうにもならん」


「私も何か手伝えればいいんですが…あ、」


「なんだ」


「そういえばあなたの名前を聞いてなかったなって」


「ああ、俺の名前か。俺は」


『アルファズル様アルファズル様』


と、耳元で俺の名前が呼ばれた。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

投稿当初(おそらく現在も)閲覧件数は0件ですので、まあこの前・後書きでは好き勝手につぶやいていいのかなあ、と。

これも一応某作家さんリスペクトです。ええ。


今は各アプリのレベル上げで忙しいです。いや、続き書けよ。


不定期投稿になっていますが、最後までよろしくお願いします。

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