14話
投稿ペース遅れたお詫びとして、2話連続投稿とさせていただきます。
えっと、無駄に伸ばすつもりじゃないですが、今回落ちが尻切れトンボです。
中途半端で申し訳ないです。
次回は23日夜。予定。
「後は俺に任せろ…!」
「おい!槍の!なんだ急に」
「良い、オレらは本来の目的を追うぞ。元々あんな雑魚には用がない」
「そうだがな。しかし敵ながらあっぱれ!!よもやあんな隠し玉があるとはな!!!」
「小賢しい。偽りの勇気でオレ達勇者に挑もうなど…片腹痛いわ」
「まあそれは仕方あるまいよ!後は槍のに任せよう!!!」
俺が「フェンルルの顎」から解放されるとそこには1人の男が立っていた。そして、その後方には走り
去っていく戦車の輝く車輪。
くそ、仕留めそこなったか。
今すぐにでも追いかけたいが、目の前の奴だ。帽子を目深に被って視線を隠す、暗そうなやつだ。両
手には得物である槍、らしき物を握っていた。装飾なのか、平たい刃をいくつも付いている変わった
槍だ。
「変わった槍だな。儀式用か?勇者ってのは見た目も大事なのか」
俺は言ってみた。だが言葉はなく、返事代わりに腰を落とした。どうやら、やり合う気らしい。
こちらも魔槍を見た目だけ構える。奴が雄叫びも上げず、静かに、確かな殺意と槍を向け、突っ込ん
でくる。
「よっと」
それに合わせ、俺は下がりながら、魔槍を放した。元々まともにやり合う気はない。魔槍は地面に溶
け、その影を広げる。突っ込んできた奴がその影に飛び込まず、まるで分っていたかのように寸で避
け、最短距離で詰めてきた。
キュイイイイイイイイイイイイイイイ………………!!!
耳元を不気味な音が通り抜けていく。最近躱される事が多くなった為、詰められた事自体、驚かな
かった。
「なんだよ、その槍っ!」
奴の突きを躱し、不気味な音の正体を見た。それは槍の刃が回転している音だった。先程飾りだと
思っていた刃の数々が回転している事に不気味な音と風を作り出しているのか。と、回転が止まる。
「それも魔導の力って奴かよ。気持ちわりいな」
「…そうだ」
槍の、と呼ばれていた勇者が遂に答えた。
「へえ、本当魔導ってやつは便利だな。さっきの鉄球もそうだろ。どういう仕組みなんだ」
「フェンルルの顎」を躱された以上、時間稼ぎをしている場合ではないのだが、仕方がない。
「…………」
「その槍といい、お前といい、不気味だなあ。勇者ってのは似合わないんじゃないか」
「…………」
返事がない。そして、再び回転を始めた槍を向け、こちらへ近づいてきた。回転で生み出されている
のか、不気味な音が背筋を撫でる。俺は魔槍をそれを受け止め、
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!!
魔槍と回転する槍がぶつかると、激しい音と衝撃が俺を襲った。たまらず手を放し、体がよろける。
奴は気にせず、そのまま槍とこちらへと振るう。俺は何とか躱すが、見てしまった。折れた魔槍を。
「嘘だろおい。魔槍が折れた…?」
魔槍は正直何で出来ているのかよくわからない。だが、砕かれたことはなかった。1度として。
「…ついに、」
「何?」
「ついに、この呪いに打ち克てた」
呪いだと?
「そうだ」
槍の勇者を名乗る男は相変わらず目を伏せている。表情はわかならいが、声が震えていた。
「俺は遺跡から発掘された数々の武器や防具、それらを壊す為に勇者になった。お前、まだ持っているだろう。呪われた遺跡の物を」
まさか、ヨルムの事を言っているのか?
「俺にはずっと視えている。お前と俺は似ているんだ。この、呪いに憑りつかれているという点では」
「呪いって何のことだ?何を言っている」
「とぼけても無駄だ」
無駄なのか。
槍の男は俺の胸元を指さす。
おそらくは、俺の胸にぶら下がっているであろうポーチだ。まさかこいつもヨルムに?
「それがお前の呪いの元凶なのだろう?俺にはわかる。俺は、俺は先祖からこの呪いを受けたのだ。もはや、俺はこの呪いから逃れられない」
『ああ、何かと思えばあれだな。昔の余が別の方法を模索してた頃の話だな』
唐突にヨルムが話しかけてきた。
『別の?』
『そうだ。・・・ナッツルーラーよ。これ、受注しといて。マルチだから絶対変な事するなよ。いいか、絶対だぞ。・・・そうだ、かつて貴様の様な下僕が他にもいたよな、という話だ。どうやらその時の方法がまずかったのか一代限りではなくその家系に代々影響が残ってしまってるんだろう』
『一体何をやったんだ』
『忘れた』
おい
『一々覚えていられるか、結局その時は何の成果も得られませんでした――――!とナッツルーラーを仕置きしていたからな。ほれ、くるぞ』
「え」
俺はヨルムとの会話に夢中になっていて、目の前に回転する槍が近づいてきているのに気づかなかった。
「おわああああああああ?!」
回転の音に俺の悲鳴が飲まれていく。情けなくも地面に跳んで避け、腹を打った。
『まあそんなこんなでお前、同族嫌悪か?こちらの気配、というか動きが見ずともまるわかりなんだろう。じゃ、・・・あ!フレンドが解除されてるし!おい!ナッツルーラー貴様、こっち来い!お仕置きだ!』
「止めろ!それ以上、語りかけるな!!」
腹を打った俺に追撃が来るかと思ったが、どうやらひるんでるのは向こうらしい。
「なんだ、お前。まさか、今の声が聞こえていたのか」
「うるさい」
「ははーん、なるほど。呪いってのは本当らしいな?」
「うるさい」
「先祖代々からとは大変だな。どうだ、久々に呪いの元凶に挨拶してみるか」
「うるさい!」
どうやら、こいつが目線を合わせない理由とそれでも正確にこちらを攻撃してきた理由が分かった気がする。
奴は回転する槍をやたら滅多に振り回す。こちらはどうせ受けきれないので躱す事に専念する。それ
でも、回転する槍が放つ不気味な甲高い音にはびびる。だが俺は冷静に、着かず離れずの距離を保
ち、機会を待つ。
刃が回転する為、その刃の威力は絶大だろう。おそらく、太い幹だって粉砕出来るほどに。だから、
突きだけでなく、薙ぎや払いの動きにも気を付けなければ当たっただけで体もっていかれるだろう。
だが、その回転も無限じゃない。
振り回されていた槍はその回転を落とし、止まる。そこで、すかさず俺は槍の男に近づき柄を握って
いる方の手を掴み、締めあげた。
「く、放せ」
やはりな。
さっきちらと見えたが、刃が回転する前、こいつが柄を不自然に握って捻っていた。仕組みは分から
んが、それをきっかけに槍が回転し出していたのか。当りだったようだ。
にしてもここまで、うろたえてなければ近づけもしなかったろうがな。
「俺に、俺に近づくな」
「なんだよ、似た者同士って言ったのはお前だろ?仲良くしようぜ」
「誰が呪われた貴様となんか」
「まあそういうなよ。ほら」
と言って、俺は目深に被っていた帽子を取ってあげた。
「あ」
槍の男と目が合う。本当はヨルムを呼び出そうと思ったが、
「ああ、あああああ、あああああああああああああ!!!」
その必要はなく、俺と目を合わせただけでみるみる怯えていった。その隙を逃さず、男から槍を奪
い、回転していない凶悪な並びの刃で顔面を殴りつける。
「が」
最後まで怯え切った男の顔が血まみれになり、倒れた。
「ふう。ここ最近で一番びびったが、ここ最近で一番穏便に片ついたな」
独り言もそこそこに俺はアリシア達が向かったであろう樹海の方を見る。すぐに追いつける距離じゃ
ないが、かと言って放置もできない。
俺は気絶した男に止めを刺さずに樹海へ走り出した。
走り出して数分と経たずに樹海から土煙が上がった。それはこちらへむかっているらしく、どんどん
大きくなってくる。
その正体は、馬二頭が引き連れた戦車。それを御するのは例の勇者を名乗る大男だった。
こちらに気づいているのかまっすぐこちらに向かっている。手を掲げて何かを掴んでいる。が、それ
もすぐわかった。
「まじかよ」
そして戦車が近づき、止まる。どうやらこちらを轢き殺すつもりはないようだ。この距離ならすぐわ
かる。
奴が片手で持ち上げていたのはアリシアだった。体躯の差か、どう考えても樹海の中で兎を狩ってき
ましたという風にしかみえない。
「どうやらそちらも勝負あったようだな。よもや槍のが負けるとはな」
「そっちこそ勇者ってのは森の中で兎狩りでもしてるのか?随分様になってるぜ」
俺はすっかり縮こまってるアリシアを見ながら言ってやった。残念ながら俺のギャグはアリシアには
わからなかったらしい。まあ実際にあの高さで掴まれたらそうも言ってられないか。
状況的にはかなりやばいが、俺はちょっと笑いそうになってる。
「つまらん口の減らん奴だな貴様。とはいえこちらの目的はほぼ達した。もう用はないと先に槍のを拾いに来たつもりだったが」
「奴ならあっちで伸びてるぜ。そういえば半裸の奴はどうしたんだ」
無難な会話で場を繋ぎつつどうするか考える。
「さあな。馬から落馬もとい、あの樹海の中で落ちてな。いや、この嬢ちゃんにやられたのだから大したもんだわい」
「へー詳しく聞きたいね」
「酒の席でなら面白おかしく話すところだがあいにく貴様とはその席に着くつもりはない。悪い事は言わん、ここで手を引け」
「手を引けばアリシアは返してくれるのか」
「そんなわけはなかろう。手を引くという事はそのままの意味だ。ここでこの娘と別れ、ジリョーへ向かう事は諦めろ。それさえ叶えばこれ以上不必要な殺しはしない」
ち。こいつ叫んでる時はただの馬鹿かと思ってたが、話し方に無駄がない。話してるようで詰める所
は詰めてきている。勇者とか言ってるが普段は政でもやってるのか。
さて、どう時間を稼ぐか。
ここであっさり引けば奴はこの場を去るだろう。かと言って拒否すればおそらく、この場で馬と戦車
に轢かれるか。不要な殺しはしない、なんていう奴は大抵こっちが断れば殺しにかかってくるような
奴の常套句みたいなもんだしな。
俺が答えないでいると大男からため息が出る。
「諦めろ若造。貴様の様な賊に預けるような話ではなかった、という事だ。命のやり取りの話ではない。聖女降臨に関しては毎回人が死ぬ。それは権力、金、その他諸々が聖女候補本人達と関係ない所で蠢いているからだ。本来であれば皆一丸となって聖女降臨に力を貸すべきなのだがな。肝心の聖導師様が何もお応えにならない以上、我にはどうする事もできまい」
「それは今こうして邪魔な聖女候補を殺せと命じられた自分に対する皮肉か?」
「ん?何か勘違いをしているようだな」
「なんだって?」
「まあ良い。それを説明する事も今は詮無きことだ。さて!!無駄話はここまでだ!!」
まずい。もうここから去るつもりか。
「待て待て待て!!」
「なんだ、そこをどかんと我が愛馬達で踏みつぶしてしまうぞ?」
「せめて、…アリシアを降ろしてやってくれ。あんただっていつまでも片手で持ってるはつらいだろ?アリシアも苦しそうだ。だから」
「油断ならん奴だ。貴様は隠し事が多そうだからな。悪いがその手には乗らんぞ」
「本当に俺は何もしない!この通りだ!そうだ、もしアリシアを降ろしてくれれば何でもする!何でも!」
「ん?何でも?」
「ああ、何でもだ」
この際ヤケだ!今動かれたらまずい!
「そうさなあ。で、あればだ。貴様の持っている、それ。もらい受けようか」
「それ?」
「魔槍だ。先程から使っておったろう。それは本来遺跡にあったはずだ。どうせ盗品の類だろうが聖導師様に返上できるのであればそれに越した事はない」
「…わかった。じゃあアリシアを降ろしてくれ」
「まずはそちらだ。首飾りか何かなのであろう?間違っても胸に手を当てるなよ?」
「なら、首にかけている紐に手をかける。それでアリシアを降ろしてくれ。そしたら俺はこいつを投げて渡す。それでいいだろ」
「それでよかろう。だが、渡す必要はない。真上に投げろ」
わかった、と俺はゆっくりと両手を広げ、首にかけている「フェンルルの牙」の紐に指を引っかける。
それを見た奴はアリシアを隣へと降ろす。降ろしただけで手は離さないようだ。
俺はそれで良いと思い、指に力をかける。
突如、空から袋が降って来た。俺が首飾りを投げる寸前で。それはちょうど俺と奴の戦車の間に落
ち、どさ、と土の上で音を立てた。中身が入っているらしく、それが飛び出した。
「!!!」
それは、黄金にきらめく籠手。それも腕つきの。
「やあ、俺、森の熊さん。今あなたの後ろで斧を振ってるの……!」
「ぬ!」
大男の後ろにそれと並ぶ位大きな姿が現れる。それは熊を模した鎧。それと同じ大きさの斧。大男は
アリシアから手を放し背中に手を伸ばすが、もう遅い。
「伏せろ!!」
俺はアリシアに叫んで自分も横に逃げる。金属同士のぶつかる鈍い音に合わせて大男が吹っ飛んだ。
その巨体は俺の立っていた位置にどう、と倒れた。そして、動かない。
「ふー、さてと。俺様の戦利品は無事かなー、と」
「アリシア無事か」
「ええ、なんとか。………!」
「おい、おっさん。そんな趣味悪いもん早くしまえよ」
「お、わりーわりー」
「あ、あの。あの方は以前…?」
アリシアは熊の鎧を着た、情報屋を見て俺に問いかけた。なぜ、奴がここにいるのか。
「おい、おっさん。なんであんたがここにいるんだ」
「なんだよ、近づいてきてたのは見えてたろ?露骨に時間稼ぎしてたもんな」
情報屋は腕から黄金の籠手を剥ぎ取り、放り投げた。
そう、俺は戦車の後ろから情報屋が、まるで虫みたいに丸くなって転がってきていたのが見えてい
た。だから、会話を長引かせようとしていたが、
「きもい。くんな」
「ひどい!」
「で?」
「そうだなあ。まあ簡単に話すとこうだな」
情報屋のおっさんがいうには、
森で昼寝をしていた所に、
金ぴかの男が落ちてきてそいつから籠手を剥ぎ取り、
攫われるアリシアを見かけて追いかけてきた。
「まあそんなとこだ。こっそりころころ転がって追いつくのは大変だったぜえ。いわば俺は嬢ちゃんを助けた救世主ってわけよ。いいねえ聖女様を助けた救世主。ということで嬢ちゃん!俺は控えめな男だ。チューでいいよチューで」
「はい?」
「いや、無視していいから。都合よく森で昼寝していた、とは思ってねえぞこら。どうせ山越えがめんどくさくて俺達があそこを通るまで待ってたんだろ」
「お、お前もそこまで読めるようになったとはねえ。ておいおいおいおい何すんだよ急に」
「という事はだ、おっさん。ただの護衛じゃなくてアリシアを大ジリョーまで連れて行って聖女降臨の儀に間に合わせる、ていうのを分かってたよな?そしてそれ、俺聞いてないんだけど」
「あれ、行ってなかったっけ?ふん、べろり☆」
情報屋の汚ねえ笑顔に俺は魔槍を投げつけんのを止めた。不毛すぎる。
「で、お前ら山越えの準備は出来てるのか」
「この状況で出来てると思うか?お前も命がけの山越えに参加すんだよおっさん」
「はあ?何の為にケチって森の中にいたと思ってるんだよぉ。お前が絶対小ジリョーに寄ると思っておっさん、節約野宿生活してたんだぞ」
「元々森ん中がおっさんの住処だろうが。…小ジリョーに着いた途端こいつらに襲われたんだよ。そんでそうだ!アリシア、あの商人は」
「はい、あの方は森の中で追いつかれた時に私だけ捕まったので無事だとは思うんですけど…」
「まあ無事ならとっくに逃げてるよな」
あの糸目の商人には悪い事をしたが、出来れば山脈デス・フジャンを超えるまでは利用したかった。
が、さすがにこれ以上は虫が良すぎるか。
「なあ、もしかしてその商人っていうのはあれか」
情報屋が指さす方向、樹海の方から馬車がやって来た。乗っているのは間違いない。糸目の商人だ。
「戻ってきてくれたんですね!」
「ああ、そうみたいだな。こっちも悪い事をしたし謝らない、と、」
な。と言い切る前に異変に気付いた。近づいてきた馬車をよく見ると、商人は確かに乗っていた。
が、顔から血の気が引いていて、しかも血がついていた。
「待て、アリシア近づくな」
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今執筆途中ですが、このアルファズル(主人公)とアリシアを見守るヨルムのお話は20話前後で完結予定です。いわゆる1部、というんですか。巻でいえば1巻?そんな文章量ない?ソンナー
まあ今絶賛眠気とイベント攻略と睡眠時間の計算の狭間で書いてますのでぶっちゃけ投稿ペースすら守れるか怪しいですが………
グラ〇ル再開しました、て言いましたっけ?




