幕間
この話は10話を読んだ後に読んでいただけると幸いです。
馬が走る。
様々な人や馬が走って均された道を新たにその跡を残すように荒々しく馬が走る。
2頭の馬が引くのはいわゆる戦車。戦時中や戦闘の真っ最中なら理解もできるが、
その戦車には更に荷車が繋がれ、何故道を走っているのか。そも戦車が必要なのか。そう問いたくな
るような光景があった。
戦車には男が1人。2人は立てるであろう位置を1人分で埋めてしまうような大男。その姿は野蛮さと勇
猛さを兼ね備えた様な井出達で荷車さえ引いてなければ今まさに戦場へと駆け付けんばかり姿であった。
次に荷車の中には2人の男。
1人は半裸であり、この暴れ狂う荷車の中でも優雅さを崩さずにくつろいでいた。だが時折、道の石で
跳ねているのか、がくん、と頭を激しく揺らす。その度に戦車に乗る男に苦情を申し立てていた。
「貴様、いい加減この荒々しい乗り方を止めろ!このオレにそんなにも拷問をしてほしいのかこの脳筋めが!!」
「あ?何か言ったか?すまんな!こう速度が出ているとそのか細い声では何も聞こえんぞ!まあ聞こえた所で速度を落とすわけはなかろうがガハハハッ!!!」
「聞こえているではないか!!!疾く止めぬというのであれば俺の矢が貴様の馬を穿つぞ?」
「ええい貴様がそう文句ばかり言うからなかなか辿りつかんのだぞ。ほぉれ」
そんなやり取りの末、戦車に乗った大男は渋々速度を落とす。と言っても普通の御車より明らかに速
いが、先程と比べると、その速度はどこか穏やかに見えなくもない。
そしてそのやり取りをなすがままに揺られていた男が見ていた。此方は帽子を深く被っている為、表
情を隠しているが、酒場で歌でも歌えばたちどころに女達に囲まれるような顔立ちだった。この3人、
こうして聖導都からほぼ休まずに飛ばしてきたのだ。
「にしてもどうしてこのオレがこんな尻拭いの様な真似をさせられるのだ。我が主からの直々の命令でなければオレが動くことでもあるまい」
「それがなあどうもきな臭い話のようだぞ。なんでも聖導騎士の騎士隊長を務めていた男が打たれたという話ではないか。我も1度会ったことがあるがその辺のごろつきにやられるような男ではなかったが。まあそれでも我の図体の半分もなかったが」
「…何でも、そいつは遺物、を持っていたらしい」
「遺物、とな」
「ふん、かつての古き神の遺した遺物か。今はどの遺跡も聖導都が管理し、そのほとんどを封鎖している。どうせ、盗掘でもしたのだろうよ」
「どうかな。たかだか遺物を操っていただけの者にしてはまぐれが過ぎる、気がするが。その前にもこちらから放った狼どもを返り討ちにしたとも聞いた」
「ああ、あの偏屈者の子飼か。あんな有象無象数ども、数にも入らんわ。そもそもを辿ればそやつら雑魚が仕損じた事であろうに。まさに尻拭いではないか」
「がっはっはっは!我らが主と並びし聖導貴族を偏屈呼ばわりとは。貴様は相変わらずよなあ!!こうして我ら三勇者が揃うのも久しい。どうだ、槍の。お主の女癖、少しは治ったか」
「……………………」
三勇者。それは7人いる聖導貴族の中で三賢者と称えられるウーズ、ベルザ、グルドの三つ子の導士
に仕える勇者をあらわす言葉である。
当時、双子ですら母子ともに命を失う事がほとんどの難産であったが、彼らの母は三つ子を授かって
から祈り続け、生まれた。その為か三賢者は幼少期の頃から3人共に行動し、まるで意識が繋がって
いるような意思疎通のやり取りをしていた。そして、3人の知恵を合わせた賢さから聖導貴族へと選
ばれたのだった。
勇者とは、その三賢者に仕える者の中から特に勇敢で勇猛、そして義勇に優れた者が自ら名乗る称号
である。聖導貴族に仕える者は多く存在する。しかしながら、勇者を名乗るには三賢者に認められる
必要がある為、そう容易く名乗ることはできない。
そして、三賢者に勇者として認められた者にはその証が授与される。
それが、魔導具である。
魔導具は、最新技術である魔導を仕組みとして取り入れられた道具全般をさし、勇者にはそれぞれの
得意に合わせた武具が渡される。今大男が乗っている戦車にもその魔導が使われているのだが。
「つまらんな。女以外と話す事はない、ときたか。やれやれ。しかしなんだ。話を戻すがその賊というのがただの遺物を使いこなす用心棒、とでも言うか。どう思う」
「どうも何も。オレが出るという事はやる事は一つ。我が主より賜ったこの魔導を込めた弓にてその不敬者の頭を吹き飛ばすまでよ」
「頼もしい限りだわい。しかしなんだな、遺物と魔導。古き技術と最新技術の闘い。我らが主の三賢者がいなければこうしてぶつかり合う事もなかったとなると。いやはや楽しみで仕方がない」
「ふん、相変わらず興奮すると静かに語る奇妙な奴よ」
遺物と魔導。
遺物とは遺跡から見つかった古き神の遺したとされる物。その全ては解かれてはおらず、ただ聖導師
様によって封印と調査が行われている。「フェンルルの牙」も大蛇ヨルムが遺したとされる遺物だ。
一方、魔導はその遺跡調査の過程で得られた技術でこの世界に漂う魔導の素となるものを指す。
この魔導を発見したのが三賢者の1人である総領ウーズ導士、そしてこの魔導を世界
より取り出し目に見える形で変換し使用する技術の基礎を築いたのが次子であるベルザ導士、そして
魔導の仕組みを作成の段階から取り入れ開発された道具、又は武具を魔道具と呼び、魔道具の開発に
成功したのが末子グルド導士とされている。
「にして、もう一つ確認したことがあるのだが」
「全く語るに飽きない大男よ。今度はなんだ」
「その賊と聖女候補だったか。どんな姿をしておるのだ」
「知るか阿呆が!そういう事は斥候なりにやらせるものだろうが!」
「そうはいってもその斥候なんだがな。我が戦車についてこれず置いてきてしまったわい」
「何度言わす阿呆が!!だから加減せよとしつこく…ええい!」
「任せろ」
「槍の。今何と言ったか」
「それなら任せろ。おそらくだが、奴らに近づけば俺がわかる」
「ほう、随分とした自信だな」
「念の為、聞くが様相を確認してきたのか」
「…いや」
「では何故わかる」
「……………………槍遣いとしての、勘、だ」
「くく、くくく、くはははははははははは!!貴様、酒場ではそのような戯けを本当に言っているのか。なるほど、貴様の様な道化にはくくく、ふさわしい」
「おいおい、さすがに笑えんな槍の」
「とにかく、任せろ。近づけばわかる」
「まあなんにせよ行き先は分かっている。その言葉、実際に我が戦車にて確かめるとしよう」
三勇者を乗せた戦車は荒々しくも進む。その行き先は、小ジリョー。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
投稿遅れて(ry
最近グラ〇ルを再開しまして、あるイラストレーター推しの某おっさん錬金術師が入団しました(イベントの奴じゃない奴)。
可愛い、あざといイメージしかなかったけど、いい表情するよね。惚れそう。




