第六話~勇気あるアプリコット~
こんばんは、藤ヶ谷 秋子です。投稿、遅くなってすみません。でもその分、少し長めにしてあります。
「どういうこと、とは?御説明ください、お嬢様。」
マスターは冷静に言い放つ。マスターの瞳が少し濁った。
「とぼけるな!!何回言わせるのじゃ!我は浄化される気などない!」
カルーアの瞳はもう真っ黒だ。その瞳には怒り以外の何かが隠れているような気もしたが、それが何かは雫には解らなかった。
「それが人間のためなのです。お願いします、お嬢様。」
「ほう、人間のためか...人間、人間なぁ。」
その会話で、雫は気が付いた。カルーアさんの瞳に隠れた感情。それは...
雫は声を出そうとした。俺なら何とかできるかもしれない。しかし、それはあまり聞き馴染みのない声に遮られた。
「待って。マスター、私が説得する。要は大人しくそのカクテルを飲んでもらえればいいんでしょ?...任せて。」
杏子はゆっくりと前に出る。そして、カルーアと目線を合わせた。
「貴女の感情を当ててあげる。誰かに愛されたかったのでしょう?でも、愛されなかった。だからその八つ当たりで、浄化されることを拒否する。そうでしょ?」
「なっ...そ、そんなことは、」
「もういい。私にもその気持ちは解るから。私も、誰かに愛されたかったから。でも、愛してくれる人なんて何処にもいないことに気付いた。...だけど、それでもいいの。私たちは、少なくとも神には愛されているから。それだけで、もういいの。自分と同じ種類の生き物に、愛は求めなくてもいい。......はい、これ。」
杏子は、もう一度作ったカルーア・ミルクを手渡した。それから、ニコリと微笑む。彼女の笑顔は、世の中の全てを悟ったようだった。
カルーアは、少し驚いたような顔をして、ハッと鼻で笑った。
「紅酔、いい部下を持ったな。小娘も小僧も、いい目しとるわ。...じゃあな、紅酔。」
カルーアは、グッとカクテルを飲み干した。その瞬間、彼女の身体が光り、宙へ浮かんだ。そのまま身体は光り輝く粉となり、空気に散った。
雫には、二人の笑顔が忘れられなかった。
いかがでしたか?どうなるかは分かりませんが、新シリーズも始めようかと思っています。またその時は、よろしくお願いします。