6話 気付き
「昨日はすまなかった!」
「いえいえ」
コックリサンの問題を解決したので、校内放送で呼び掛ける。そして、貼り紙をして対策したのだ。
あの部屋は施錠され、誰も入れない。
窓にも板を張り、釘で打ち付けた。これにより万全の対策が取れたと言えよう。
霊感。
これは20歳までに、得られなければ、それ以降霊感が手に入る事は無い。家のおじいちゃんが言っていた。
15歳までは、僕も霊感は無かったのである。が、どうやら今回の事で目覚めた。いや、覚醒したと言っても良いだろう。
今まで見た事も無かった。
こんな大きな幽霊が居るなんて。
帰り道、僕はそれを避けて通る。
電柱に人影があった。何か居る。けども、それはヤバい。見えていないけど、雰囲気で分かる。関わってはならない。勘でそう思った。
見える霊と見えない霊。
僕にはまだそれしか分からない。帰ったらおじいちゃんに聞こう。
「おかえり」
「ただいま」
玄関におじいちゃんが居たので、霊について詳しく教えて貰える様に頼んだ。おじいちゃんは険しい顔をした後、ボソリと言った。
「運が無いのぅ」
おじいちゃんの部屋に通される。
おばあちゃんは他界して居ない。部屋には写真が飾られており、仏壇に手を合わせた。
「はぁ、困った事になったな」
「うん。どうすればいい?」
「どうもならん。飽きたら何処かに行くじゃろう」
「飽きたらって………どれくらい?」
「さぁ、明日かもしれんし、10年後かもしれんな」
おじいちゃんはお茶を啜った。
僕もお茶に口を付ける。
「他に被害者は?」
「ああ、燐火と堂々先輩。でも、この二人のは帰って貰えたよ」
「絶対に帰ったのか?」
「ゲームで勝った。絶対ではないけども」
「そうか。で、お前は誰じゃ?」
「あは、バレた?」
「すまないが、孫を返してはくれまいか?」
「それは出来ない。助けてやったのだからな」
「そうか。運が無いのぅ」
おじいちゃんは諦めて、部屋を出て行った。
僕にもどうする事も出来ない。ただ、見ているだけなのだから。
「で、寺師羽根君は大丈夫なのかい?」
「大丈夫、とは?」
「取り憑かれては?」
「あはは!大丈夫てすよ。取り憑かれましたから」
堂々先輩は声が出なかった。
唖然としている。こういう時に、何てフォローすればよいのだろう?まぁ、なるしかないわ。
「堂々先輩、まだ大丈夫ですから」
「寺師羽根君………すまない」
「生徒会…………………生徒会辞めませんから」
「そうか………助かる」
僕は負けたのだ。
ゲームに。だから、その対価として、声を取られる。時々だが、奴に乗っ取られるのだ。
意識や記憶はある。
まだ、それが救いかもしれない。
最初のゲームは、はい・いいえ、でどちらを選択するか、だ。
『俺と賭けをしないか?』
誰だ!?
心の中に声がする!
『誰でもいいじゃねーか。賭けをしようぜ』
断る!
『なら、お前の友達は死ぬなぁ』
意味が分からん。
『馬鹿だろ。まぁいい。教えてやる。サービスだ。あの二人は取り憑かれた。だから、悪事を働くぜ。殺しや、強姦、何でもな。放っておいていいなら別だがな』
………分かった。賭けよう。
『そうこなくちゃ面白くないぜ!よし!あの紙を使おう。はい・いいえ、だ。シンプルだろ?』
で、何を賭け、何を得られるか、だ。
『そうだな。俺が勝てば声を貰う。でいいか?』
分かった。なら、僕が勝てばこの二人を助けて欲しい。
『よし!なら賭けをするか!お前は、はい、を選択する。何故ならば、いいえ、を選択したら、そこの女3人は助からない。対価に魂を要求されるからな!コックリサンをお前らが引き継がなければ、そこの女が3人死ぬ。はい、を選択するしかねぇ!最初はサービスしてやるよ!はいを選択したら、そこの友達を助けてやる。どうだ?破格だろ?』
どちらを選んでもいい結果が得られないじゃないか!くそ!不自由の選択だろ!これは!
声1つで全員助かる。
僕以外。除霊とかあるかもしれない。
『あー、言い忘れてたわ。除霊出来る人間は、世界で3人だ。それも、除霊出来る事に目覚めていない奴も居る。72億人の中から、そいつを見つけられるのか?俺は無理だと思うがな』
絶望へ突き落とされた。
この声の主に従うしかない。僕は紙を取り、10円玉に指を乗せた。




