4話 帰って下さい!いいえ
椅子に座り、詳しい話しを聞く事になった。
お客さん対応の座椅子は座り心地が良く、僕の尻を翻弄する。こいつとならば、2時間でも耐えられるぞ!勉強も捗る事、間違いなし!
あくまで尻が、だ。
頭や手は30分と耐えられないだろう。
「おほん!では説明しても?」
「あ、すいません。どうぞ」
「最近、下校時刻を過ぎた時間に、ある部屋である遊びが流行っていてね。それがコックリサンと言うんだ」
コックリサン。
低級悪魔を召喚して、こちらの質問に答えてくれるらしい。的中率は何と100%!誰もが質問したいと思うだろう。
だが、世の中そんなに甘くはない。
タダで質問に答えてはくれないのだ。
帰ってもらう為には、手順が必要となる。
その手順さえ、間違わなければ、対価を支払わず帰ってくれるらしい。
が、失敗すると、呪われる。取り憑かれる。等の噂もある。本当かは定かではない。
儀式の中心に鳥居を描く。
はい・いいえ
そして、"あ"から"ん"までを書くのだ。
儀式には10円玉が必要となる。
それに全員の指を置いて、質問すると10円玉が動く。答えを導き出してくれる。
儀式には何かの呪文が必要で、それを唱えるとコックリサンが降りてくる。
このコックリサン遊びには、ルールがあるのだ。必ず1週間以内に別の誰かがコックリサン遊びをしなくてはならない。
それを破ると、コックリサンに呪われる。
「だから、その悪ふざけの遊びが無くならないのですね!」
「でも、本当に怖くない?呪いだよ?」
「だから、生徒会も慎重に事を運びたい」
聞いているとアホらしくなる。
誰かが指を無理矢理動かしているのだろ?それしか思い付かない!悪質なイタズラだよ!
「僕がコックリサン遊びを最後にやって、それから誰にも指名しなければいいんじゃないですか?」
「うーん。寺師羽根君、もしもがあったら、ね」
「大丈夫です!僕には霊感が全くありませんから!」
「奏介、本当に大丈夫?」
「ああ!僕に任せてよ!燐火は先に帰っていいよ」
「分かった!俺も参加しよう!」
「え!?堂々先輩も!?」
「二人ならば怖くあるまい!な!」
こうして、ある部屋に向かう。
何だか空気が変わった気がするんだけど、気のせいか?何故か燐火までもついてきたし。
僕の腕に掴まる。
胸が!くぅ!柔らかい感触が腕を伝う!両手でしがみつくのは勘弁してくれ!
『きゃあああああああ!!!!』
「!?」
「ど、どうした!?」
ある部屋に駆け付けた!
すると、女の子達がお尻をついて泣いている!何があったのか不明だ。
「な、何があったの!?」
「コックリサンが!!!コックリサンが!!!」
「落ち着いて!」
「コックリサンが帰ってくれないの!!」
「いやぁ!ああああ!!もうダメ!!」
女の子達は、再び泣き喚く!
堂々先輩が宥めるのだが、最早そんな猶予も無い。
とりあえずコックリサンに帰ってもらうしかない様だ。
床に転がる10円玉を拾い、儀式の紙を机に戻す。
10円玉を真ん中にセットし直すのだ。指を10円玉に乗せる。
「コックリサン、コックリサン。お帰り下さい」
ズズズズ。
いいえに移動した。
それを見ていた女の子達は悲鳴を上げる。
僕は指を離す。
「コックリサン、コックリサン。お帰り下さい」
10円玉は動かない。
だから、僕は指を乗せて、はい、に移動させたのだ。
「もう大丈夫だよ」
そう言い聞かせ、女の子達を家に帰した。
燐火に付き添いを頼み、もう校門を過ぎているだろう。
僕は堂々先輩に言う。
「これはヤバいです。手に負えません」
堂々先輩が笑った。
「ゲームをしよう」
「は?」
「なぁに、簡単なゲームさ」
すると、部屋の角に移動する。
僕は燐火を帰らせて良かったと、この時本当に思った。




