20話 始まりは突然に
この話は短いです。
僕達は、高校2年生になった。
燐火も無事、進級する事が出来たのだ。
夏休みが終わっても、退院は叶わなかったけど、燐火は頑張った。2学期はまるまる休みで、冬休み毎日補習を受ける事で、何とかして貰う。勿論、春休みも補習で学校に通っていた。
そのかいあって、僕と同じクラスになる。
学校側にお願いして、燐火と同じクラスにして貰った。まだ精神的に不安定で、癌の再発に怯えなくてはならないからだ。
定期検診は受けている。半年に1回。
それでも、半年では進行は早い。なので、不安になったら、検診を受けさせる事にした。
「お!後輩君だよ」
「新入生か。もうそんな時期なのか」
「初々しいねぇ♪」
そんな光景を流す。
燐火と僕は徒歩通学となった。膝の件で、燐火は自転車に乗らなくなっている。だから、僕もそれに伴い歩く。
「ねぇ、桜が咲いてるね」
「ああ、とっても綺麗だな」
「私は?」
「燐火は綺麗というよりも、可愛い、だな」
「えへへ♪嬉しい」
僕は違和感を覚える。
何だろう。分からないけど、モヤモヤする。
桜の花びらを踏み、上を見上げた。
桜坂と呼ばれるだけあって、壮大な光景である。桜の木が並び、風で桜の花びらが空を舞う。
桜の花びらに、燐火が飲まれる。
僕は慌てて、スマホを起動させ、写真を撮った。
「見ーせーてー♪」
「お、おう」
「すっごい桜の花びらだねぇ!スマホ貸して」
「いいよ」
燐火はスマホを弄ると、僕に渡した。
すると、待ち受け画面が、さっき撮った写真になっていたのだ!
「止めろよ」
「にしし♪嬉しいくせに」
僕はスマホをポケットにしまい、足早になった。
「ちょっと!待ってよ!?」
燐火は帽子を押さえて、追いかけて来た。
そして、隣にピタリとついて、笑う。
気のせい。
これ以上不安になりたくないのだ。
僕はここから、奈落の底へ落ちていく。




