19話 命の対価
僕は慌てて道路を走る!
自転車で、もう息も出来ないくらいに!そして、僕は車に引かれたのだ。
対価。
等価交換の原則。
僕は意識を取り戻した。
さっきまで、見ていた夢を思い出す。
『負けたぜ。仕方ねぇ。約束は約束だからな』
ありがとう!
『礼を言われる筋合いはねぇ』
それでもありがとうとしか出てこないさ。
また勝負するだろ?
『ああ、そいつはもう無い。今回で契約は完了したかりな』
え?
『少し足りなかった。だから、事故に会わせた。それだけだ。嫌だったか?』
意味が・・・。
『そいつは自分で考えろ。じゃあな。楽しかったぜ。久しぶりの地上はよ』
ま、待ってく───。
全身打撲。むち打ち。骨もヒビが入り、右腕は折れていた。
「っ!」
痛みで体を動かせない。
誰か居ないか、辺りを見回す。
「お!奏介!!意識が戻ったんだね!!」
お母さんが側に居た。
抱き締められ、体中が痛い!
「あ、た、た、た、たー」
「あ、ごめんなさい!」
お母さんは興奮して、電話をする。
多分、家族全員にだ。それと燐火にも。
僕は3日寝ていたらしい。
意識が戻らない可能性が高いと医者から告げられたそうだ。でも、良かった。お母さんはそう言う。
燐火はというと、何とか乗り切った。
100万円の注射が効いてきて、どんどん体調も良くなっているみたいだ。膝の腫瘍も、放射線の治療が上手くいき、消滅した。
「燐火ちゃんも心配してたんだからね!」
「お母さん、電話してくれよ」
「そうだった!」
燐火に電話してもらい、僕はスマホを耳に当てて貰っている。
『もしもし』
「あ、奏介だけど──」
『奏介!?奏介なの!!!やだ!う、う、心配したんだから!』
「ごめん」
『でも、良かった!助かって!これもアレのお陰だよ』
「あれ?」
『あ、ああ。あの、お祈りだよ!神様が奏介を助けてくれたんだよ!』
「神様、か」
僕はそうだといいなと思った。
だって、悪魔が存在するのだ。神様が居ても不思議では無い。まぁ、今回は神様ではなく、悪魔に助けてられたのだが。可笑しな話しだよ。全く。
燐火とは同じ病院だったので、手押し台車を借りて燐火の部屋に向かった。そうしないと、燐火が体に刺さっている針を全部抜きかねないからだ。
奏介に会いに行く!
燐火のお母さんにお願いされ、僕が説得したのだが。点滴の針を抜かれては困る。ベッドが血だけになるぞ。
膀胱に刺さった管も・・・これは言わない方がいいな。きっと。
「こんにちは」
「奏介!会いたかったよ!挨拶のちゅーは?」
「僕達、付き合って無いだろ?」
「あたしの事、好きだと言ったくせに!」
「ちょ!おま!それ、お母さんの前で言う?普通!」
「ちゅーしない罰だよー」
燐火は元気になった。
薬の投与はまだまだ続くが、回復の兆しが現れている。医者はもう治るだろうと言っているらしい。でも、まだ気を抜いてはいけないそうだ。
「奏介ちゃんも座って」
「あ、ありがとうございます」
椅子に腰掛ける。
かなりキツイけど、燐火の笑顔を見たら吹き飛ぶ。ようやく僕の日常が帰って来るんだな。僕はそう思った。




