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おののき、そして厄災へ  作者: ハロ
1章高校1年生 悪魔編
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11話 寄せる、離す、祓う、憑依、そして封印

次の日の放課後。

燐火からは質問の嵐だった。何処の病院に行った?どんな先生だった?直ぐに見てもらえたか?お前は浮気した男を問い詰める主婦か!僕はうんざりそながら、受け流す。


燐火の旦那は浮気は無理だろう。

御愁傷様と僕は心の中で呟く。え?僕の事だって?それは無い。幼馴染みで妹にしか思えないからだ。いい人が見つかってくれればなと思う。


一段落したので、生徒会へ向かった。

燐火は堂々先輩を見るなり、うるうると目を滲ませる。多分、ちんちんに綿棒をぶっ刺された事を言ったからだろう。勿論、嘘だが。


※実際にはぶっ刺されます。尋常では無い痛みが伴いますので、ご注意下さい。綿棒は子供用ではありません。


「堂々先輩!もう治ったのですか?」


「お、おう!まだちょっとな」


「お薬は飲んでますか?」


「あ、ああ。液体をだな!ゲル状だ」


「まだ痛みはありますか?」


「い、いや。もう引いた」


何故か話が噛み合わない。

堂々先輩は燐火に合わせられなかった。口裏合わせてと頼んだのに。


「堂々先輩はショックから立ち直ったばかりなんだ!そっとしておいてやれ」


「………うん。分かった」


釈然としない燐火だが、こう言われては引くしかない。


僕は生徒会の仕事が無いか聞いてみる。


「そうだ!校内の見回り頼む」


「了解です♪」


僕の承諾も得ずに、燐火は手を引っ張る。

こいつ強引な時があるよな。大抵、僕が折れるのだけど。





コックリサンをやっていないか、教室を見回る。

殆どの生徒は帰宅していた。が、男女が抱き合って、激しくキスをしている場面に出くわす。こういう時ってさ。何て言ってあげればいいんだろう?


「そういうのはお家に帰ってからやれ!」


「ご、ご免なさい!」


慌てて部屋を出て行った。

鞄持って帰らなくていいのかよ?ここは2年のクラスだから、先輩だったのか。僕は頭から記憶を消去した。大丈夫、僕は何も見ていない。


「ねぇ」


「何?」


「奏介もああいうキスしたい?」


燐火が上目遣いで言う。

胸元で手を握る。くぅ!可愛い仕草をするなぁ!おい!


「そ、そういうのはだな!す、好きな相手とするんだぞ」


僕は誤魔化して、部屋を出た。


「奏介となら、あたしはキスしてもいいよ」(小声)


聞こえたが、聞かなかった事にしよう。

本日、2回目のリセットだ。





ある程度、見回りをした。

これと言って問題は無かったのだ。なので、生徒会へ戻る。


「そうか!それは災難だったな!それとなく注意をしておこう」


「お願いします」


「てらっちは欲情しなかったの?ぐふふ」


田中先輩が悪い顔で笑う。

え、ええ!何もありませんでしたよ!何も!重要なので二回言った。


「生徒会役員がそういう事をするのはどうかと思いますけどね」


「国光っちは固いよ!」


「規律を乱してどうするのです!」


「まぁ、まぁ、その辺にしておくれ。二人共、ありがとう。もう上がっていいよ」


「了解しました」


僕達は生徒会を後にした。

直ぐに燐火のスマホに着信が入る。短いのでメールかライナーだろう。


「田中先輩からだ」


(押し倒せ!頑張れよ!て、もう!恥ずかしい)


「何て?」


「気にするなだってさ」


僕は相槌を打って、そのまま帰宅した。

帰り道は特に会話もなく、歩を進めるだけだ。分岐で手を振って別れる。


「ただいまー」


「おお、奏介か。丁度良かった」


おじいちゃんに呼び出され、リビングに座る。

帰って来て喉が渇いたので、お茶で潤す。麦茶なのが戴けない。僕は麦茶が嫌いだ。後味が嫌で、飲み干した後の何とも言えないあの感じがダメなのである。


お茶は緑茶か烏龍茶かジャスミン茶がいい。

玉露を出してくれれば、最高なのだが。玄米茶でもいい。


麦はビールに限る。

あ、僕は未成年で飲んでませんからね!お父さんが言う口癖を真似ただけさ。あはははは。





おじいちゃんも席に座る。

僕は待つしかない。この何とも言えない威圧感は、あまり好きにはなれない。おじいちゃんは霊感がとても鋭く、家族で一番だろう。それも、この間までは、だ。


この家で霊感が一番強いのは僕になってしまった。

目覚めたからだろうか?それとも素質があったのか?それは分からない。


「奏介、お前は霊感がとても強い。そして、更に困った能力が備わっているようだ」


「え!?」


「霊を寄せる能力がある。分かるか?お前が帰って来た途端に、こんなにも霊が集まっている。それはお前の能力によるモノだ」


「………そんなの知らないよ。知ってて発動なんかさせてないし」


「それが厄介なんじゃな。自動で発動するタイプなんじゃろう」


おじいちゃんが教えてくれた。


霊を寄せる能力。

霊を追い払う能力。

霊を祓う能力。

霊を憑依させやすい能力。


そして、霊を封印する能力があるらしい。

おじいちゃんは見た事無いので、人づてで聞いたみたいだ。


霊を寄せる能力とは、僕の様に知らず知らずに近寄ってくるらしい。好奇心で寄って来て、そのうち何処かに行ってしまう。


霊を追い払う能力とは、さっきとは逆で霊を遠ざける。自分から近寄っても逃げて行く様なので、結構便利な能力だと思う。


霊を祓う能力とは、霊に取り憑かれた人から、霊を引き剥がす事が出来る。祓う能力が無い人が同じ事をすると、しっぺ返しを食らう。それ相応の報いを受ける事になるらしい。


霊を憑依させやすい能力とは、普通の人よりも憑かれやすい体質となる。心霊スポットとかに行けば、間違いなく取り憑かれるのだ。一見デメリットが多いが、どうしても祓えてない霊を一時的に移す事が出来る。


霊を封印する能力とは、未だに解っていない。

何時、何処で、何を、どうするのか?も、だ。おじいちゃんが言うには、かなり危険を伴うので、教えてはくれなかったらしい。


「霊相手ならば良かったのだが………まぁ、それでもその相手クラスでは太刀打ち出来んかったじゃろうな」


「こいつはどれくらいなの?」


「ふむ。鷲の見立てでじゃが、魔王クラスと言った所か。すまんな。不安にさせてしまったか」


僕は凍り付いた!

魔王だって!?そんなのどうしようもないじゃないか!


「普通の寄せる能力では、こんなにも集まらん。そいつに興味があるのじゃろうて」


「僕はどうしたら?」


「藤堂院は何と言っておった?」


「もう賭けをするな、と」


「鷲もその方がよいと思う。じゃが、賭けは避けては通れんじゃろうな。だが、もし賭けをするならば、鷲か藤堂院に相談するのじゃ!いいな?」


「………分かった」


僕は頷くしかなかった。

窓を見ると、雨が降っている。ようやく梅雨の景色が彩られるな。もう直ぐ7月なのに。

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