10話 霊と悪魔
ここから最終話まで、2話更新します。
7月中に終わらせたいからです。
伊集院 神無月。
女の子にしては、4文字以上とは珍しい。
日本人だと、大抵3文字である。加奈子、早苗、渚と漢字はそれぞれだが、上手く組み合わせているのだ。4文字となると、涼子、緑子、桜子。最近だと、向日葵、鈴蘭、雛菊、白百合。花の名前が多い。
名字も珍しく伊集院か。
お金持ちを想像する。僕の名字もかなり珍しい。寺師羽根も日本で2件しかないのだ。伊集院はもう少し多いと思うけど。
伊集院さんに案内され、建物の中に通される。
道場なのだろうか?かなり広く、剣道や武術をするのには最適だと思う。障子や襖で囲われており、昔ながらの作りだ。
正面奥には、神棚が設置されており、お供え物が置かれている。花も飾られており、手入れもしっかりとされていた。
座布団に座り、暫く待っていると、障子が開く。
「お待たせしました」
僕は立ち上がろうとする。
が、手で制止された。
「よいよい。寺師羽根の孫じゃな。よく来た。鷲は藤堂院 美佐子じゃ。よろしゅうな」
「寺師羽根 奏介です。宜しくお願いします」
見た所、お婆ちゃんだ。
巫女装束が似合う可愛いお婆ちゃん。伊集院さんと比較すると、あまり似てはいない。歳を取ると、この可愛いらしい伊集院さんもこうなるのだろうか?失礼な事を考えていた。
「では、聞こう。何時からじゃ?」
「はい。説明させて頂きます───」
今週の水曜日。
コックリサンで遊んでいた生徒が、契約を完了出来なかった。そこで、僕が契約し直す。その時に自分達3人が取り憑かれた。僕はそいつと賭けをして、取り憑かれた2人を何とかゲームで勝ち、帰って貰う事に成功する。しかし、自分だけは帰ってもらえず、こうしてここに来たのだ。
※呼び出したのは、1人とは限らない。
一人につき一人が呼び出される。
「そうか。運が悪かったのぅ」
「それで何とかなりますか?」
「……………………………………すまぬ。鷲は霊により取り憑かれたお祓い専門なのじゃ。そなたは儀式をしたのじゃろうて。悪魔の事は専門外でな」
「そうですか」
僕は最初から諦めていた。
自分で言うのも何だが、こいつは普通のとは桁が違う。
「あの、こいつは"悪魔"で間違いないですか?」
「ああ、霊ではない。だが、普通は低級の悪魔が来るんじやが、何か心当たりはないか?」
そういえば1週間以内に何度も、コックリサンを呼び出していたのかもしれない。最初は何も来なかった。でも、重ねる事に低級の悪魔がきて、それが積み重ねとなり高位の上級悪魔が召喚された可能性が高い。それを藤堂院さんに伝えた。
「そう考えた方が良さそうじゃな。負の連鎖か。幸い、これは断ち切れたのじゃからマシと思うべきじゃのう」
「あの、霊と悪魔って、どう違うのですか?」
「簡単に言えば───」
霊とは、本能の赴くままに行動する存在。
善悪に対して、人間の常識とはかけ離れている様だ。
悪魔とは、知識を持った存在。
嘘を付いて人を騙し、契約を結ばせたり、破棄させたりする。しかし、賭けをする時は、嘘を言わない。これはどの様な不利になっても、守るという。賭け自体が成立しなくなるからだ。
信用は第一。
悪魔は賭けをして負けた場合、絶対にそれを守る。例え、悪魔自身が消滅したとしても。悪魔のプライドがそうさせるのか?そこはよく分からない。
霊と悪魔、似ていて非なるモノ。
あの時、賭けをして正解だったのか。
少しだけホッとした。
「そなたはもう賭けをするな。分かったな?」
「………善処します」
「神無月!何か出来るとは思えんが、寺師羽根のフォローをしてやってくれ」
「分かりました。おひい様」
「おひい様?」
「ああ、神無月は鷲の曾孫じゃ」
あんたいくつだよ!?
見た目は60歳と言っても通用するだろう。二十歳で産んで、更に子供が二十歳で産めば………あれ?違うな。更に更に二十歳で孫が産めば最低60歳か。それに神無月さんの年齢は………15くらいか?とすると、75歳かよ。
「………だから、名字が違ったんですね」
「そなたは不埒な事を考えておったな?」
「イエイエ、滅相モ御座イマセン」
お金を取り出すと、祓えていないのだから不要と断られる。
悪魔専門の人を紹介してくれるそうだ。でも、連絡がつかない人なので、何時になるか分からないと言われる。
スマホや携帯のある時代に、そんな事もあるのだなぁと思う。
電車に乗り、家に帰る。
ああ、何だが疲れたのでもう寝る事にした。




