9話 巫女さん見つけた!
「燐火!」
「どうしたの?奏介?」
土曜日に堂々先輩の用事で、家を留守にすると伝えた。すると、燐火も行くと言い出す。それは非常に不味い。僕が取り憑かれたのを、お祓いしてもらうのだ。この事は燐火には内緒にしている。知れば泣くだろう、悲しむだろうから。
「堂々先輩とサウナに行く約束をしたんだ。燐火も一緒に入るか?」
「むぐぐぐ。それはちょっと………」
男だけしか入れない。
もうちょっとで、燐火を説得出来そうだ。
「でもでも!女の子の方もサウナあるよね?なら、あたしはそっちで入れるよ!」
むう!食い下がってくるな!
くそ!どうする!?
「………実は、堂々先輩は性病なんだ(大嘘)!だから、僕についてきて欲しいと頼まれたんだよ。な?察してくれ」
「え!?………そうなんだ………分かった」
ナイス!僕!
堂々先輩には悪いけど、流れでこうなってしまった。仕方あるまい。
「病名は………堂々先輩の性病の病名は何?」
「え!?………………………………クラミジア………だ」
「嘘!?」
「移された………らしい」
「……そう」
よし!これで燐火はついて来ない!
彦根口に行っても、大丈夫だろう。後は堂々先輩に口を合わせてもらえばいい。
堂々先輩を見つけ、口裏を合わせる様にお願いした。勿論、性病のクラミジアについては言わないでおく。
土曜日、電車で向かう。
一応、燐火の事を警戒したが、杞憂だった。田中先輩と仲良くなったらしく、遊びに行くそうだ。
女の子達は、どんな遊びをして、何処に出かけるのだろうか?そんな事を考えていたら、目的地に到着後した。
地図を見て、山の方へ向かう。
坂を登り、神社の鳥居まで辿り着く。
「げ!階段何段あるんだよ!?」
僕は見上げた。
軽く100段はあると思う。ここまで結構歩いた。少しだけ休憩する事にする。
ペットボトルのお茶を一口飲み、喉の渇きを潤す。
石段は少し冷たかった。ひんやりとして気持ちがいい。風も少し吹いており、木陰になっているから、休憩にはもってこいとなる。ここで、おにぎりでもあれば最高なのだが。お昼を食べないで来たのだ。仕方の無い事である。
ペットボトルを鞄にしまい、頂上を目指す。
ゆっくりと慌てずに石段を登る。後ろを振り返ると、湾曲しており怖い。ここを登って来た事を後悔する。
半分を越え、上に誰か居るのが見えた。
巫女装束らしき人物を発見する。帚を片手に持ち、神社の中を掃除している様だ。
ようやく登りきり、僕は肩で息を整えた。
すると、巫女装束の女の子が近寄って来る。
「立ち去りなさい」
「来て早々、それはないよ」
「災いの根元。貴方は分かっていますか?」
「ああ、だから、ここに来た。これを見て欲しい」
「………分かったわ」
おじいちゃんの手紙を渡す。
それを読んでいる間に、この女の子を観察しよう。
髪はボサボサで所々跳ねている。
顔は可愛く背は低い。150センチ無いのでは?スタイルは良いか悪いか分からない。巫女装束が邪魔……おほん!とても、似合っていると思う。
「来て」
「あ、うん。君の名前は?」
「伊集院 神無月。貴方は?」
「寺師羽根 奏介」
「そう。では参りましょう」
こうして伊集院さんに案内して貰う事になった。
謎の美少女だが、会って早々、立ち去りなさいと言われてしまったのだ。少しショックだけど、仕方無いと思う。
僕は無事、お祓いする事ができるのだろうか?不安になる。




