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フェランディスの問題処理係  作者: 雲居瑞香
第5章 その真実の名は
33/43

【1】

投稿再開しましたー。

すみません、パソコンが不具合を起こしまして……。ええ。直りました。ご迷惑をおかけしました。


そんなわけで、『フェランディスの問題処理係』の最終章です。

よろしくお願いします。











 フェランディス国王が死んだ。その報告がもたらされた時、ベレンガリウスは一瞬頭が真っ白になった。


「……父上は、トーレス公爵領で狩猟をしているのでは?」


 やっとのことで口を開いたのはクリストバルだった。その声にベレンガリウスも現実に引き戻される。報告に来た官僚がうなずく。

「え、ええ。狩猟中に落馬して、首の骨を折ったと聞いていますが……」

「……わかった。さがれ」

 クリストバルは官僚を追い出すとベレンガリウスの方を見た。


「ベレンガリア。どう思う?」


 クリストバルに意見を求められて、ベレンガリウスは口を開いた。

「遺体を確認しないと何とも言えないけど……父上が亡くなったのなら、早急に次の国王を決める必要がある」

「虚偽の報告の可能性は?」

「ないとは言い切れない。明日には遺体が到着するらしいから、その遺体を確認する。でも、本当に亡くなっているのなら、やっぱりすぐに臨時の行政体制を作る必要がある。エフラインと相談して……」

「会議は?」

「明日事実確認をしてから考える」

「よし。わかった。マルケス公爵を呼ぼう」

 というわけで、すぐにエフラインが呼び寄せられた。場所はそのままクリストバルの執務室である。やってきた宰相はベレンガリウスを見て驚いた表情になった。

「なんというか、ベレンガリウス殿下は美女だったんですね」

「何それ」

 腕と足を組んでソファに座っていたベレンガリウスは怪訝な表情で言った。ベレンガリウスは整った顔立ちをしているし、それは自分でも認めるところであるが、美女という言い方をされたのは初めてである。

 まあそれはともかく。

「陛下が亡くなられたという報告は私の元にも届いております。まず、最高責任者を決めるべきです」

「やはりそうなるな」

 ベレンガリウスがソファで足を組んで言った。


「私は兄上がなるべきだと思う」

「俺はお前がやるべきだと思う」


 ベレンガリウスとクリストバルの意見が真っ向から対立した。二人がにらみ合う。


「……私からはどちらとも言えませんが、すぐに決定できないのであれば、しばらくは連名で行えばよいのでは?」


 エフラインの案により、しばらく二人連名で行うことにした。

「どちらにしろ、家族会議だなぁ」

「まあ、お二人が連名で決定を行うとしても、政治体制は決めておくべきですね」

「……俺にはよくわからん。お前たちに任せる」

 あっさりとクリストバルがベレンガリウスとエフラインに投げた。それについては初めからベレンガリウスが考えるつもりだった。

「まあ、詳しいことは明日にでも……」

 再び口を開いたエフラインを、クリストバルが手をあげて止めた。ベレンガリウスも視線を扉の外に向けた。

「誰かいるな」

「人数は一人……二人か?」

「ベレンガリア、武器は?」

「いや、そもそも寝巻のまま飛び出してきたからな」

 ベレンガリウスはそう言って立ち上がった。クリストバルが執務机の背後に飾られた剣を手に取り、ベレンガリウスにはグルリット銃を投げた。かなり小型になったとはいえ、まだ、ベレンガリウスの肘から指先ほどの長さがある銃だ。


「私が開けましょうか」


 そう言ったのはエフラインだ。ベレンガリウスが断ろうと口を開く前に、クリストバルが言った。


「いや。俺が開ける。ベレンガリアは援護しろ」

「了解だよ」


 ベレンガリウスは軽く銃をあげて答えた。エフラインはおとなしく元の位置に収まる。

 クリストバルが扉を開いた。聞き耳を立てていた。中年の官僚と若い軍人が驚いた顔になる。軍人は飛びのいたが、官僚はクリストバルが振るった剣に斬られる。

 ベレンガリウスは逃げようとした軍人の足元に向けて引き金を引いた。その銃弾はかかとを貫く。焼けるような痛みに軍人が床をのた打ち回った。

「お前、容赦ないな」

「逃げられると思ったからな」

 クリストバルの指摘にベレンガリウスは平然としたものだ。そもそも、クリストバルだって官僚を斬っているし、そもそも今日の試合で共謀者であるはずのフアニートのことも斬り捨てている。


 まあそれはともかくだ。


「何者だ?」

 縛り上げられた二人を調べ始めたベレンガリウスにクリストバルが尋ねた。ベレンガリウスは艦長と軍人の顔と服、持ち物を調べ、結論を出した。

「軍人の方はサンディエゴの間者。官僚の方が、トーレス公爵の縁の者だ。エフライン。南の動きが怪しいんだろ」

「ええ。それに、陛下が狩猟に行っていたのは南のトーレス公爵領ですからね」

「なるほどね」

 ベレンガリウスは軽く笑ってうなずいた。はっきりし過ぎていて笑えるのだ。

「南方の警備を強化しろってことか」

「かといって、北をガラ空きにはできないからね。難しいところだ」

 ベレンガリウスが苦笑してクリストバルに同意を示した。普段ならこんな素直な反応はなかっただろうが、共通の目的は、二人の距離を縮めたのだろうか。


「とにかく、明日、父上が帰ってくる前に王族会議を開くぞ」


 クリストバルの宣言にベレンガリウスは「了解」と答える。


「ってか、王族って言っても、どこまで呼ぼうか」


 どこまで、というのは結構難しい問題なのである。イバン王の子供たちと王妃だけを王族とみなすか、王弟オルティス公爵を含めた親族も王族とみなすか……である。最も、イバン王の兄弟はアドリアン以外国内には残っていない。

「……俺は全員集めたほうがいいと思うが」

「じゃあそうしよう」

 ベレンガリウスはクリストバルに同意すると、扉に向かって歩き出した。

「場所はここでいいね。エフライン。そこの二人、牢屋に放り込んでおいてよ」

「……わかりました」

 エフラインがうなずいて立ち上がる。ベレンガリウスは一旦クリストバルの執務室を出た。


「どこ行ってたんですか!?」


 自分の自室に戻ると、ヒセラが大音声で叫んだ。ベレンガリウスは「ごめんごめん」と謝ると、そこにいるメンバーを確認して言った。

「陛下が亡くなった。らしい」

 みんな息をのんだが、イバン王の実弟であるアドリアンだけが冷静だった。

「らしい、というのは?」

「まだ私が遺体を確認していないんだ。明日、遺体を確認するまでは何とも言えない」

 ベレンガリウスは現実主義者のつもりだ。だから、確認するまでははっきりしたことを言うつもりはない。しかし。


「これが虚偽ではなく、本当なのだとしたら、すぐに対策を練る必要がある。そこで、王族会議を開くことにした。イバン王の子、それに実弟であるアドリアン、それに、第二妃エリカ殿、第三妃レアンドラ殿も参加してもらう。場所はクリストバル殿下の執務室だ。一時間後に会議を開始する」

「私が呼ばれると言うことは、愚息を連れてきてもよろしいので?」


 アドリアンが挙手して尋ねてきた。ベレンガリウスは少し考えたが、言った。

「構わないけど、怪我してるんだから無理はさせるな」

「かしこまりました。まあこれで、私の策は水泡に帰したわけですね……」

 アドリアンが残念そうに……見えない表情で言った。むしろ、自分の策通りにならなくて嬉しそうだ。正確には楽しそう、と言うべきか?

「笑ってないで、頼みたいことがある。妃殿下を離宮まで迎えに行ってくれ。なんとしても引っ張り出して来い」

「御意に。しかし、私でよろしいので?」

「あの人が私や兄上が行ったところで出てくるわけないだろ」

 王妃エカテリーナを無理やり引っ張りだすことはできない。なら、自分で出てきてもらうしかない。その気にさせることができるのは、きっと、アドリアンだけだ。


「リノはすぐにエリカ殿に知らせに行って。エリカ殿に伝われば、全員に伝わるからな。その後はこっちに戻ってきて、会議中はここで待機。それから、アミルはこのまま警備に立ってろ。ディエゴは私の執務室に行って組織改革図を持ってこい。サラは国内各地と諸外国の情勢をまとめたものを持ってそのまま兄上のところへ行け」

「わ、わかりました」


 誰かが答えたが、誰が答えたのかわからなかった。一気に指示を出され、あわただしくみんなが動き出す。

「殿下。わたくしは何をしましょうか」

 ヒセラに問われ、ベレンガリウスはちらりと彼女を見た。

「着替えるから、手伝え」

「了解。ドレス着ます?」

「着ないよ」

 ヒセラはやっぱりぶれない。とりあえず、ずっと薄着だったベレンガリウスは着替えるべく一度寝室に引っ込んでいった。










ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


いろいろありましたが、無事完結にもっていけそうです。よかった……。


イバン王急死により、急展開です。ちょっと長い章になるかと思います。


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