厨二神の世界
初投稿です。主人公の厨二力が足りない…
「よく来たな、異界の魂よ。」
そう声を掛けられて俺は目覚めた。石造りの広間、高い天井、足元には魔法陣、背の部分が不必要に高い椅子。そしてその椅子に座ってこちらを見ている異装の少年。少年はRPGの終盤で盗賊キャラが着る革の鎧のようなものに身を包み、右眼に眼帯をし、左右非対称な籠手をはめている。右手にはぴったりした革手袋、左手にはごついガントレット、背には黒いマントを羽織り、腰には長剣を帯びているようだ。
「ここは…」
俺は立ち上がってあたりを見回す。石の柱が並ぶ広間で、少年が座っている玉座の反対側にはだいぶ先まで広間が続いている。100mほどだろうか、玉座の対面には大きな扉があり、その開け放たれた扉の向こうには荒れた空が見えた。巨大な城の、玉座の間といったところか。このだだっ広い空間に、俺と少年以外の人影はない。ひととおり見回して少年に目を戻すと、少年が再び口を開いた。
「そなたは死に、その魂を我が招いたのだ。」
死んだ…そう言われて思い出した。道路を渡ろうとしたとき、目の前で転んだ子供。迫る大型トラック。とっさに子供を突き飛ばした俺は反射的に手を伸ばした気がする。まるでトラックを押しとどめようとでもするかのように。…それが最期の記憶だな。とすると、この状況は、いまネット小説なんかで流行っている異世界転生っていうやつか。とすると、この少年は神なのだろうか。
「ほう、さすがに冷静だな。」
何がさすがなのかは良く分からないが、少年は、ばさり、とマントを翻しながら立ち、近づいてきた。少年の腰の左右に一本ずつ長剣が下がっているのが見えた。
「そなたに新たな肉体を与える。今までの世界とは勝手が違うだろうが、達者で暮らせ。」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。あまりに説明不足だ。だいたい、こういうのってチートスキルとかくれるんじゃないのか。」
「チートスキルだと?何を言っているのだ。おのれの才覚だけで生き抜いて見せよ。だが、そうだな。確かに説明不足かも知れぬ。我はこの世界の創造神。我の世界は、剣と魔法、亜人や魔物、秘境に迷宮、妖魔や幽鬼のはびこる混沌の坩堝だ。」
少年神(?)はここで言葉を切ると、ぐい、と顔を寄せて、にやりと笑ってみせた。
「どうだ、心躍るだろう?」
うーむ、確かにそういうものに憧れた時代が、俺にもあった。混沌の坩堝が何なのかは良く分からないが。しかし、ファンタジーは大好物ではあるものの、それが現実になったら「おのれの才覚だけで、チートスキルなしに」生き延びられる自信は、まったくない。俺がよほどひきつった顔をしていたのか、少年神は器用に片方の眉だけ上げて「ふむ」と言うと身をひるがえすと、玉座に戻り、おもむろに口を開いた。
「なぁに、そなたなら大丈夫だろうが…」
何が大丈夫なのだろう。しかも、神の言うことだからと信じたいのだが、姿が少年だからなのか、何の根拠もなく言っている感じがする。口調は重々しいのだが、芝居がかっていて鼻につく感じがするというべきか。俺はそんな失礼な感想を抱いていたが、少年神は言葉を続ける。
「よし。異界からの客人には手向けの言葉を贈るとしよう。チートスキルなどというものは無いが、我が世界の真理だ。『あるべき姿を洗練された言葉で語れ。』」
「あるべき姿を洗練された言葉で語れ?」
「そうだ。この真理を極めれば、剣でも魔法でも最高峰へと至るだろう。」
正直、ワケが分からない。禅問答みたいなものだろうか。混乱している俺をよそに、少年神は、ものうげにユラり、と手を動かす。
「では、今度こそ、さらばだ。」
少年神がそういうと、俺の足元から光が立ち上る。
「え、あ、おい。ちょっと…」
「そなたが真理を極めるなら、再びまみえることもあろう…」
そして、視界が暗転した。
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気が付くと青空が見えた。身を起こすと起伏のある草原が見えた。丘陵といった方がよいか。振り返ると、数十メートル先からたくさんの木が影を作っていた。つまり、森林地帯と丘陵地帯のほぼ境目に居たわけだ。
自分の姿は、と見ると、くたびれた硬い革の鎧に黒いズボン、ブーツ、そして左の腰には剣があった。剣を抜いてみると、普通の鉄製に見えた。剣の目利きなんてしたことがないから分からないが、少年神の下げていた剣とは比較にならないくらい、みすぼらしく見える。あの少年神は、どうやら最低限の駆け出し冒険者程度の装備をくれたようだ。
剣を鞘に戻し、人の気配がないかと見回す。今居るところは小高くなっているので、遠くまで見晴らすことができる。ここから緩やかに下り、丘を二つ越えた先に白く光るものが見えた。人工物、それも城壁都市のように見える。よくよく目を凝らしてみたが、やはり町で間違いなさそうだ。まずは、そこを目指すことにして、俺は異世界を歩き出した。
しばらく歩き、さっきまで近くに見えた森がどれくらい離れたか確認しようと振り返って、俺は立ちすくんだ。 そこに大きな犬がいたのだ。狼だろうか。痩せて明るめの体色をしており、丈の高い草むらにでも紛れれば見失いそうだ。狼ではなくハイエナというやつだろうか。真っ赤な目をしてこちらを観察している。彼我の距離は20mほどだろうか、いや10m?やけに近く感じる。
襲ってくるのか、と思ったとたん、その犬がダッと動き、俺は恐怖に駆られて逃げだした。必死に走りながら、狼やハイエナが群れることを思い出した。他にも居るのか。そもそも人の脚では逃げ切れないだろう。どうする?足音が、息づかいが、すぐ背後に迫っている。剣が重い。
そこでようやく剣の存在を思い出した俺は。必死に剣をつかんで、抜きざまに後ろに向けて剣を振り、しりもちをついて、へたり込んだ。幸い振った剣に手ごたえがあり、剣が犬に当たったのだろう、犬は5mくらいの距離で頭を下げ、唸りながらこちらをにらんでいる。
犬はけがをしている様子もないが、剣を警戒しているのか、唸って睨みつけてくる。俺は剣を犬に向けたまま、なんとか立ち上がる。脚ががくがくと震えていて止めることができない。他にもいるんじゃないか、そう疑って正面の犬から周囲に意識が逸れた瞬間、犬が飛びかかってきた。「うわあー」俺は叫びながら剣をむちゃくちゃに振り回した。俺には幸運がついているのか、また剣が犬にあたり、犬は頭を下げた体勢に戻った。
剣が当たったと言っても、殴りつけただけなのだろう。犬がけがをしている様子はない。刃筋を犬に向けて、今度は目をそらさないようにしていた。つぎに犬が飛びかかってきたとき、剣道の小手の要領で斬りつけた。犬の頭の高さがちょうど、それくらいだったのだ。3度目の正直でようやく意識的に放った攻撃。だが、その斬撃も当たっているのに、犬にけが一つ負わせることができない。犬はまた、いつでも飛びかかれる体勢に戻った。
幸い、他に犬はいないようだ。が、この犬が硬いのか、剣がなまくらなのか、それから犬は三たび飛びかかろうとし、俺はそのたびに剣をあてることに成功し、しかし傷を負わせることができないまま、膠着した。同じことの繰り返しに、俺は少しずつ落ち着いてきた。なぜ斬れないのだろう。次に犬が飛びかかってきたとき、俺は口に出して叫んでいた。
「斬れろ!」
効いた。血がしぶき、犬の鼻づらに一撃を与えた。だが致命傷には程遠かったようだ。犬は身をひるがえして去って行った。助かった。結果としては、無傷で最初の戦闘を生き延びたのだ。俺は深く息をついて、剣にもたれた。座り込みたかったが、他にも襲ってくるモノが居るんじゃないかという恐怖があって、視界を低くすることができなかった。さっきの犬は、もう草むらに紛れて、どこに居るか分からなくなっていた。
息が整ってくると、最後の一撃が、それだけがなぜ有効打になったのか思いをはせる余裕がうまれた。剣道は高校の授業の一環でちょっと習っただけだ。それが命を救ったとも言えるが、そんな俺に剣の理屈など分からない。だいたい日本刀でも竹刀でもなくて、両刃の鉄剣だ。分からない以上、一刻も早く町に着いて、安全を確保したいところだ。だが、そこで俺は愕然とする。方向が分からない。目覚めた地点から見えた町は、今は丘の陰になって見えない。犬から逃げて必死に走ったときに見失ったのだ。いや、待て待て、森が見える。森の逆方向に進んで、どれかの丘に登れば、町が見えるだろう。よし。
抜き身の剣を持ったまま、俺は歩き出す。さっきよりも神経がささくれだって、何かの気配があるんじゃないかとおびえながら。だが、どうやらさっきの犬みたいに大きな生き物は居ないようだ。丘を登っていくと、途中で町が見えた。確かに白い城壁に囲まれた町のようだ。近くを流れる河も確認できる。河は町を貫いて流れているようだ。
町を確認できて、すこし気持ちに余裕ができた。町に向かって歩きながらまた、犬を傷つけた斬撃のことを思う。最後に斬れろと叫んで、気合が入ったのだろうか。俺は右手に持ったままの剣で、ちょっと丈の高い草に斬りつける。斬れない。草は柔らかすぎて、ぬるい剣撃など、するりと受け流してしまうのだ。当然だな。冒険小説などで道の無い山中を草を切り払いながら進む描写があるが、あれだって、それなりに研鑚を積まねばできないわざなんだろう。
丘を下り、次の丘に向かって進むうち、草の丈が俺の腰くらいの高さになってきた。少し低い土地だからだろうか。おれは剣で草を左右にかき分けながら(斬れてないが)進む。さっきの犬みたいな大型の獣ならともかく、蛇みたいのがいたら、分からんな。町まで何にも出会わずにたどりつけるだろうか。不安になって、どうすれば有効打になるのか追究すべきだという気分になり、「斬れろ、か…」とつぶやいた。
「え?」
草をかき分けるだけだった剣が、草を斬っていた。いま俺は、斬れろ、とは言った。言ったが、叫んで気合が入ったわけではない。つぶやいただけだ。突然、少年神の言葉を思いだした。「あるべき姿を洗練された言葉で語れ。」語れ、とは何だ。
「斬れろ」
言いながら剣を振ると、面白いように草が斬れた。黙って振っても斬れない。これが、この世界、少年神の世界の法則なのか、言霊が支配する世界ということか?剣で斬るための言霊は、斬れろ、ということか?いや、たまたま俺がそう叫んだだけだ。洗練された言葉とは何だ。俺はちょっと考え、「スラッシュ!」と叫びながら剣を大きく振った。俺の周囲で剣に触れた草がきれいに刈られた。 同じ動作で、斬れろ、と叫んでみたら、確かに草は斬れたが、スラッシュの方が範囲が広い気がする。スラッシュの方が「洗練されている」ということなのだろうか。確かに、何かの技名っぽいしな。
技名か…。俺はちょっとほろ苦い気分で、中学の頃に考えた最強の技名を思い出す。自分で格闘ゲームを作ったら、こんな名前の技にするのに、とか、当時書きかけていたファンタジーの主人公に修行の末に修得させようとかしていた技の名だ。その物語は未完に終わり、そんなものを書いていたなんていうのも黒歴史だ。いや他にも黒歴史はあるんだが、書き溜めたものはベッド下の奥に封印してある。そうか、俺は死んじまったから、親か姉貴が発掘するかも知れないのだな。姉貴にはもう見られているから、願わくば他の誰かに知られる前に処分してもらいたいものだ。
何だか思い出だけで、どんよりした気分になってしまったが、カサリ、という音に警戒を強める。何だ?音のした方に剣を向けると、草の間からぬるりと蛇が姿を現した。草に隠れて全長がどれくらいか分からないが、青黒い鎌首をもたげたその胴回りは、直径で30cmくらいありそうだ。でかい。
鎌首をもたげているというのは、蛇がいつでも飛びかかって来れるということでもある。だが今の俺は、犬から逃げ出したときの俺とは違う。少年神に贈られた真理を見出し、言霊の力を知ったのだ。
「斬れろ!」
呼気とともにするどく言い放ちながら振った剣は、しかし空をきった。当然だが当たらねば意味がない。その隙を大蛇が逃さず噛みついて来る。「うわぁあぁ」俺は剣を振り回しながら慌てて後じさる。カチン、と剣が牙に当たったのか硬質な音を立てたが、悲鳴では斬れない。それがこの世界の真理なんだろう。犬の時と同じように、今度は蛇とお見合いになる。だがおかしい、噛まれたわけではないのに、左腕から熱が伝わってくる。蛇の吐いた毒が左手首のあたりに付着したようだ。
接触しただけで腫れ上がるって、どんな毒だよ、と思わないでもないが、文句を言って事態が好転するわけでもない。いや、言霊に支配された世界だというなら、言ってみれば何か変わるかも知れないが、それは今試すことではない。まずは目の前の大蛇を何とかしなければ、確実に死ぬ。と、今度は蛇の方から向かってきた。こちらにも余裕はない。
「スラッシュ!」
ガッという手ごたえがあった。大蛇は後退し、だが、まだそこにいて俺を狙っている。確かに当たったし、見れば喉(?)のあたりに一筋、刃の痕がある。だがそれだけだ。鱗に覆われて硬いのかも知れないが、言霊の力を使って斬っても、効いてない。とはいえ蛇は警戒しているのか、俺の剣が届かない距離でこちらを伺っている。その距離は蛇の方からは一息に飛びかかれる距離でもある。
まずい、左手の感覚が無くなってきた。この距離では剣が届かない。いや、本当に届かないだろうか。剣先を蛇に向けたまま、事態を好転させようと知恵を絞る。そういえば侍が登場する格闘ゲームには斬撃を飛ばす技があったな、などとたわいないことを思う。毒に犯されて朦朧としていたのかも知れない。それでも何かを振り切れていない俺は、「飛空斬」とつぶやいて、小さく剣を振ってみた。誰かに見られたら憤死ものだな、という意識があったのは認める。ところが、その言霊は思いがけず効果を上げたのだ。
ビシ、と蛇の頭部に何かが当たった。それは俺が振り切れない気分のまま放った飛空斬、剣気を飛ばして離れた相手にダメージを与える技だ。蛇には意外な攻撃だったのだろう、ビクン、と後退する。それは引いたようにも、飛びかかるために溜めているようにも見える体勢だ。今の一撃は俺にとっても意外だった。だが、いけるかも知れない、という思いに、毒の熱にうかされた頭が後押しをして、一つ息を吸った俺は羞恥心を振り切った。呼気とともに剣を振る。
「飛空斬!」
ザシュ。剣には遠すぎる間合いにも関わらず、蛇の身体に明らかな傷をつける。だが浅い。スラッシュよりも強力だが、致命傷には至らない。引くどころか、大蛇は、じり、と近づいて来る。俺の攻撃力は大したことがないと見切ったのだろうか。いつ飛びかかられても不思議ではない。大振りすれば隙を衝かれるだろう。だが羞恥心を振り切った俺は、躊躇なく中学のときに考えた最強の剣技の名前を口にする。そっと、だがそれはテレ臭いからではなく、確信を持って呪文を唱えるように。
「秘剣・虚心水明鏡」
相手の姿を映す水鏡のように、相手の動きにノータイムで追随する後の先の剣。動き出した瞬間が、最も無防備なのだ。見てから動くのではなく、無心のうちに、動こうとした相手の急所を貫く必殺の剣。…という設定を思い浮かべていた俺は、我にかえると、首を断たれた大蛇の脇で残心の構えをしていた。どうやら俺は秘剣を手に入れたようだ。だが、左腕の熱は全身に広がり、俺は草原に崩れ落ちた。
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と、まぁ、以上が俺の最初の戦いの記録だ。
あのあとどうなったかといえば、俺は近くの村人に拾われて町にかつぎこまれた。俺が倒れた場所の近くを街道が通っており、そこを町へ向かう馬車が通りかかったのだ。馬車には近くの村で農業を営む獣人と、その孫娘が乗っていて、大蛇の血の匂いに異変を感じて様子を見に来たら、俺を発見したそうだ。俺はその親切なバルナベという名の獣人の老人に手当てを受け、解毒薬を分けてもらったのだ。町に着くとすぐ、おれは古びた教会に運び込まれた。あの大蛇の牙や鱗・皮が何かの素材になるとかで、良い値で売れたらしい。らしいというのは全部、バルナベに任せてしまったからだ。バルナベの身振り手振りにうなづいていたら、いつの間にか売りに行っていた。教会で休んでいた俺のところにバルナベが金貨の入った袋を持ってきた。解毒の薬代を差し引いても金貨が何枚も残った。その半分をバルナベに渡し、さらにその半分は教会に寄附した。これがこの町、ウォータエッジでの一日目の出来事だ。
以来、俺はこのウォータエッジの町を拠点に生活している。最初は言葉が分からなくて苦労した。金貨を寄附したせいか、教会での待遇はよく、毒から回復したあとも数か月、教会に居候させてもらった。その間に必死で言葉を覚えた。今では日常の会話に苦労することもなくなり、俺は教会を出て宿屋で寝起きしている。テンプレとも言えるが、この世界には冒険者という職業があって、俺は冒険者になった。魔物を討伐したり、迷宮を探索したりする日々を送っている。ウォータエッジの近くにも迷宮があるのだ。
冒険者になって知ったが、この世界の戦闘術では、斬ったり突いたりするたびに声を上げるのが常識になっている。剣道の掛け声みたいなものだ。だが、複雑な掛け声を発明しようとする者はいない。冒険者を始めた直後の時期に、一緒に迷宮探索をした冒険者に掛け声のことを聞いてみたら、「一言なら気合も入るが、ぶつぶつしゃべりながらじゃ斬ったりできねぇだろ?」とのこと。「おまえの『スラッシュ』だって似たようなもんじゃねぇか」とも言われた。では、この世界の強者たちはどうしているかというと、スラッシュと同レベルの言霊を使い、剣の技能を鍛え上げることで、強大な魔物に立ち向かうのだ。言霊が大きな力を持つことに気付いている者は俺だけなのだ。
俺の飛空斬は異国の魔法だと思われている。そう、この世界には魔法がある。少年神もそう言っていたしな。多少なりと魔力を持った者は半数弱で、珍しいものではない。とはいえ、戦闘で使えるほどの魔力を持つ者は多くなく、魔法使いとして冒険者をやっている者は、ごく少数だ。幸い俺にも魔力があったが、それは魔法使いとして冒険者をするなら最低ランク。だが俺は、魔法の威力が魔力だけでなく、言霊にも依存することを知っている。魔法使いなら呪文を工夫しそうなものだが、この世界の魔法使いたちは師匠から伝えられた長々しい呪文を愚直に唱えることで魔法を使っている。呪文を変更すると、ほぼ間違いなく魔法の効果が弱くなってしまうそうで、呪文の研究は生涯を賭けても成果が出ない、という認識のようだ。
思うに、俺が日本語、とくに漢字を知っていることが有利に働いているのではないだろうか。漢字であれば、短い読みの中に意味するもののイメージを籠めることができる。おかげで教会のシスターが呪文の詠唱に10秒ほどの時間をかける治癒の魔法を、おれは「快癒掌」の一言で発動できる。シスターに俺と同じように声を出してもらったが、治癒魔法は発動しなかった。音声ではなく、言葉、それを構成する文字の持つ意味を、術者が把握している必要があるのかも知れない。少年神はチートスキルなどないと言っていたが、十分すぎるほどのチートだ。
この世界に転生して1年、俺は遠い異国から転移魔法で跳ばされてきた魔法剣士という設定で、町の生活になじんでいる。ソロで活動する冒険者であり、異国の不思議な技をつかう、かなりの凄腕ということになっている。最近の悩みは、バルナベの孫娘であるシェリが、冒険者になりたいと、俺に弟子入りを志願していることだ。シェリは犬耳の美少女で、一緒にいるのが楽しくないとは言わないが、恩人であるバルナベが嫌な顔をするので、断りつづけている。
この一年でできた知り合いはバルナベとシェリだけではない。長期滞在している宿屋の娘のリュネットとも気安く話をする仲だし、冒険者ギルドの受付嬢のアデルは、高ランク冒険者になった今も俺の身をいつも案じてくれる。アデル嬢が俺の専属だと思うのは勘違いの可能性があるから自重しているが。冒険者といえば、俺の魔法が気になっている様子の魔法使いの少女アンバーも、よくからんでくる。お世話になった教会のシスターであるサシャさんとも仲良くしてもらっている。教会には今も時々寄付をしに行ったりしているが、これは、ほぼサシャさんに会いに行っていると言ってもいいくらいだ。もうこのまま、テンプレ通りにハーレムでも作ってやろうか、という気分にすらなる。
俺の剣技と魔法を支えている言霊も、長足の進歩をとげている。戦闘中にとっさに思いつくものでもないので、魔術師ギルドで買った羊皮紙のノートに少しずつ書き溜めている。もはや生前の俺がベッドの下に封印した黒歴史ノートに匹敵する勢いだ。オリジナルの黒歴史ノートは、姉貴に発見されて「うわぁ、かっこいいねー」と笑いながら言われたわけだが、今回のノートに書かれた言霊には、俺の命がかかっていると言ってもいい。中学生が抱く幻想ではなく、この世界の現実、いや真理に干渉する言葉なのだから。このノートは黒い革で装丁されており、購買部で買ったオリジナルノートよりも断然に重厚感を持っている。もちろん、中身は日本語、それもほとんど漢字で書かれているので、俺以外の人間には読むことができない。一度、宿に押し掛けるように遊びに来たアンバーに隙を衝かれ見られたことがあるが、難しい顔をして悔しそうに返してきた。文字だということは雰囲気でわかるが、複雑すぎるとのこと。姉貴との反応の違いに俺は感動さえ覚えたね。
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サシャさん目当てに教会に出入りするうち、俺はあの少年神についてもいろいろ知ることができた。そういえば名前を聞かなかったが、創造神は多くの名前を持っていて、いろいろな神話に登場するのだ。いわく、右目と引き換えに破滅を封印した『隻眼の封印者』。もっとも、その封印された破滅がどんなものなのかは、よく分かっていないらしい。いわく、右の剣を抜けば大地が灼熱の地獄となり、左の剣を抜けば天が虚無に凍りつくという『双剣の黒騎士』。また、ある伝承では、巨人と共に邪竜の討伐に挑み、一度は剣を奪われ、敗退する。その敗北で親友であった巨人の命と自らの左腕を失った彼は、亡き友の腕を自分の左腕に移植して、再戦を挑み、みごとリベンジを果たす。そして付いた名が『巨神の復讐者』だ。どれも称号というか二つ名のようなもので、少年神個人の名前ではないが、サシャさんいわく、神を表すのに人のような個人の名前は要らないのだそうだ。
他にも、黒いマントや、革の鎧にまつわる神話もあって、確かに俺が会った少年神の姿に符合する。左腕で大きかったのは手の部分だけだった気もするが、まぁだいたい合っている。冒険者の中には、迷宮の最深部に創造神の所有した武具が眠っていると信じる者もいる。アンバーとパーティを組んでいる巨漢の剣士バルテルは、ウォータエッジ郊外の迷宮に「炎獄の剣バルデュール」が封印されていると信じている。傭兵だった親が神話にちなんでバルテルの名を付けたらしく、自分の名の由来になった神剣を手に入れるのが夢だとか。いや、でも迷宮の奥には無いと思うなぁ。俺が会ったとき、少年神の両腰に剣があったもの。
知り合いも増え、言霊によるチートのおかげでイージーモードの異世界生活を楽しんでいた俺の前に、ある日、とてつもない美女が現れた。それは迷宮の奥を一人で探索していたときのことだ。ソロながら、迷宮踏破階層の記録を更新した俺は、人跡未踏の広間にいた。奥の扉の向こうは迷宮の心臓部だろうか、それとも更に下の階層への階段だろうか。だが扉に近づこうとしたとき、その女が現れた。まるで貴族のパーティーにでも出席しているかのようなドレスをまとい、迷宮の深層の危険など気にもかけない様子で、俺に声を掛けてきたのだ。
「あなたね、異世界からやってきたというのは。」
「なんだと?なぜそれを知っている?」
「あの子の記録を見たのよ。そうしたら、お父さまの世界から魂を呼び寄せたってあるじゃない。そういうことはしちゃいけないことになっているの。」
あの子?お父さま?なんのことだ?
「あら、まだ分からない?この世界の創造神、わたしの弟よ。」
なんと…あの少年神の姉だというのか。確かにとてつもない美女ではあるし、女神なら迷宮の深層にいても何の問題もないのかもしれない。しかし、教会で聞いた神話には姉神など登場しなかったが。人が知らないだけだろうか。
「本当に創造神の姉なのか?そんな神話はなかったと思うが…」
「神話ですって?」
何かツボだったのか、姉神は、ぶはは、っと意外にも下品な笑い方をした。
「何がおかしい?『隻眼の封印者』の話にも『巨神の復讐者』の話にも姉がいたなどという話は無いぞ。」
俺が少年神の二つ名を言うたびに、姉神は身をよじらんばかりに笑う。ひとしきり笑うと、一所懸命笑いをこらえる様子で、こう言った。
「…それはね…あの子の『設定』なの。かっこいいでしょー。…くくく。」
この女神の笑い方にデジャブを感じる。何だろう。このデジャブも気になるが、女神の言う「設定」という言葉も気になる。
「設定だと?事実ではないというのか。」
まぁ、神話なら事実ではないということもあるだろうが。だが、俺は少年神に会って、神話にある通りの姿を見ている。
「くくく。んー、事実じゃないというのは、ちょっと違うわね。そういう歴史はないけれど、あの子の世界で、あの子が設定したことだから、事実として通用するわ。創造神ですものね。」
「神が決めたことだから、そのとおりになると?」
だんだん分かってきた。あの少年神は、見掛けどおり、神としては少年なのだろう。少年がその感性にまかせて、かっこいい感じに、この世界における自分の姿を作り出した。それが神話に登場する創造神の姿なんだ。
「まぁ、そんな感じよ。神っていうのはね、世界の法則を決めているの。ここは、あの子が最初に作った世界よ。作ったといっても、お父さまの世界の設定にちょっと手を加えただけだけど。」
「お父さま、というのは…」
「あなたが元いた世界の創造神よ。お父さまの世界は、とてもシンプルで美しい規則でできているわ。そのくせ無限の発展性を持っている。とても素晴らしい世界なの。それに引き替え、あの子の付け加えた規則は、ぐっちゃぐちゃね。魔法がある世界が楽しいのは分かるけど、場合分けやら条件付けやらが多すぎて…もうちょっと論理的にやって欲しいものだわ。」
「じゃあ、攻撃するときや魔法を使うときに、言霊を使うと威力が増すのは、そのぐちゃぐちゃな規則ということか。」
「言霊ですって?」
姉神は、ひくひくと笑いをこらえながら、俺をさげすんだような目で見る。
「あなたもいい感性してるわね。いい年なのに。だから、あの子が呼び寄せたのかしら。くくく。いい?あなたが言霊と呼んでるものの法則を教えてあげる。それはね、あの子がかっこいいと思うものが強いのよ。あなたの使う、漢字?の響きが気に入ったみたい。」
姉神は笑いをこらえながら続けた。
「秘剣・虚心水明鏡だっけ?かっこいいよねー。」
俺はさっきのデジャブの正体に気付いた。姉貴に黒歴史ノートを見られたときの笑いだ。姉神も俺を笑ったが、今回俺は、分かってやっている。姉貴に笑われたときは羞恥で身動きすらできなかったが、今回は笑われて冷静になった。
「創造神は、あんたがここにいることを知っているのか?」
「あら、内緒よ。でも来てみて、改善するところも、無駄なところも、よく分かったから、教えてあげないといけないわね。」
姉貴に黒歴史ノートをみられた経験を持つ俺には、分かった。この世界は、あの少年神にとっての黒歴史ノートなのだ。いや、まだ黒歴史にはなっていない。少年神は自分の未熟さに気付いていないからだ。だが、それをこの姉神に見られた。そして指摘されれば嫌でも気づくだろう。しかも、こらえた笑いと共に指摘されるのだ。
「その前に、あなたを何とかしないとね。お父さまの世界に帰って、と言ってあげたいけど、死んじゃったみたいだから、帰すこともできないわ。今すぐ、ここで消滅してちょうだい。」
「…最後にひとつ聞きたい。創造神に見捨てられた世界はどうなるんだ?」
「世界に依るわね。お父さまの世界くらい頑健にできていれば、数億年はもつでしょうけど…」
少年神の、ぐちゃぐちゃな規則で作られたこの世界は、もたない、ということだな。俺が黒歴史ノートをベッド下に封印したように、少年神がこの世界を見なくなったら、もたなくなるまでにどれくらいの猶予期間があるのかは未知数だ。世界がもたない、というのが何を意味しているのか、想像することもできないが、俺が1年ちょっと暮らしてきた世界がなくなってしまう、ということは理解した。
この世界で知り合った人々を想う。親切にされ、仲間意識が芽生え、ちょっと憧れることもある人たち。まだ1年ちょっとしか暮らしていないとは言え、俺にとっては大切な人たち、大切な世界だ。決めた。この姉神を少年神に逢わせてはならない。まだハーレムも作っていないしな。
「わかった。」
俺は剣を構える。
「簡単に消されはしないぞ。」
俺と姉神の戦いが始まった。姉神は言霊を使わない。この世界の理の外にある力を使っているようだ。詠唱もなしに魔法が飛んでくる。だが突然無条件に消されるようなことはないようだ。とはいえ、俺の剣も届かない。俺は消されないだけでなく、この姉神を倒さねばならない。だが姉神は、俺の剣も魔法も避けている。避けている以上、当たれば何らかのダメージがあるはずだ。
「ねぇ、『美女を見ると目がつぶれる』って話、知ってる?」
姉神が話かけてくる。その言葉に力がこもっているのを感じる。まずい、これは異質だが、言霊と同じ力だ。神の法則の力というべきか。俺はとっさに目を閉じる。
「自分で『美女』とか言うかね?」
挑発してみるが、効き目はない。
「あら、目を閉じてて、わたしの魔法が避けられるの?」
腹に大きな衝撃を感じて俺は吹き飛ばされる。目を閉じたまま立ち上がり、声のした方に向けて飛空斬を放つが、まぁ、無駄だろう。
「目を閉じてて、攻撃が当たるの?」
姉神が近づいてくるのを感じる。姉神がこの世界の枠の外の力を使っているとは言っても、この世界は少年神の世界だ。俺が1年間書き溜めた言霊が力を発揮する世界だ。俺は少年神が右目に破滅を封じたという話を聞いたときに作った言霊を思い浮かべる。魔物を拘束する魔法に乗せる言霊だが効くだろうか。いや、言霊の力以外、俺にはない。おれはカッと右目を開き、姉神をにらみつけると、鋭く言い放った。
「秘術・封神邪眼牢!」
姉神の「美女を見ると目がつぶれる」というまじないの効果なのか、急速に霞んでいく右目の視界に、余裕たっぷりだった姉神の姿が見える。それが驚愕の表情をつくると、姉神は霧状になって、俺の右目に吸い込まれていった。 視界はすぐに閉ざされ、俺は右目をあけているつもりなのだが、真っ暗だ。姉神は居なくなったのか。おそるおそる左目をあけると、無人の広間が見えた。どうやら右目の視力と引き換えに姉神を封じたらしい。
どうにも、ものすごく疲弊した。神と戦うなんて英雄の仕事だよな。休みたいが、ここは迷宮の深層だ。この広間には魔物が湧かないようだが、それも確実ではない。念のために警戒用の結界魔法をかけてから、一休みし、地上をめざすか、奥の扉を開けるか悩む。マッピングが正しければ、扉の奥はこの階層の中央で、小さな空間しかなさそうだ。ラスボスがいたりすれば苦戦するかもしれないが、一休みした俺は思った以上に回復している。思い切って奥の扉をあけると、突如、おれは転送された。しまった、転移の罠だったのか、と思う間もなく、見覚えのある場所に居た。
少年神の城の玉座の間だ。玉座は空で、少年神はいない。誰もいない、広い空間を見回していると、突然、玉座に少年神が現れた。
「ひさしいな。」
あわててやってきた、という感じだったが、それをごまかすように、少年神は声を掛けてきた。
「俺は迷宮の深層に居たはずなんだが、なぜここに?」
「そなたは迷宮を踏破したのだ。それも我が置いた、七曜の大迷宮の一つを。」
七曜の大迷宮という名は始めて聞いたが、全部で7つあるのだろうか。迷宮の奥には神器が眠るという噂があったが、神さま本人に逢えるとは思わなかった。
「そなたなら、いずれこうして会えるものと思っていたが、想像以上に早かったな。ん?その目はどうしたのだ?」
見てたわけじゃないんだな。それはそれで一安心だ。姉神との一件を話すことはできない。とくにこの少年神には。この尊大な感じも少年神の演出なのであれば、付き合ってやるべきだろう。俺はその場に片膝をつき、臣従するていで頭を下げ、報告する。
「その七曜の大迷宮の最深部で、破滅の邪神を封じました。この右眼と引き換えに。」
「ほう。」
ちら、と見上げると、少年神は何かを思い出そうとするかのように、ななめ上を見ていた。そんなの居たかな、とでも思っているのだろう。あんたの姉さんだよ、とも言えず、俺はかしこまって少年神の言葉を待つ。
「なんにせよ、良い面構えになったものよ。見よ。」
何となく楽しげな声で、少年神は、どこからか取り出した手鏡を向けてくる。鏡に映った俺の右眼は、多面体にカットされた青黒く光る大きな宝石のようになっていた。
「うむ。そなたの言葉に嘘は無いな。…なれば、その功績をたたえて、この神器を贈ろう。」
どうしてそういう判断になったのかは謎だが、そう言うと、少年神は自分の右眼に掛けられた眼帯を外した。俺は一瞬、焦る。その眼帯は右眼に宿る「破滅」を封じているんじゃないのか。だが、眼帯を外した少年神の右眼には、健常な目があった。おい、設定はどうした、というツッコミをこらえ、気を取り直して、俺は少年神の手づから眼帯を受け取る。
「『隻眼の封印者』の名は、そなたにこそふさわしい。これからも我が世界を守護する英雄であれ。」
少年神が、そういうと、俺は迷宮の外へと転送された。
こうして俺は、『隻眼の封印者』の名を手に入れた。町に戻り、冒険者ギルドに行くと、ギルド長に呼ばれ、行ってみると教会のシスターであるサシャさんが居た。普段は冒険者ギルドで見る人ではないのだが。なんでも、すべての教会に神託が降りたそうで、いわく、ウォータエッジの町に隻眼の封印者の名を継ぐ英雄が現れた、と。サシャさんもその神託を聞いた一人で、俺の名を聞いたときは正直、半信半疑だったそうだ。だがギルドに確認に来て、アデル嬢に連れられて来た俺が眼帯をしているのを見て、神託の英雄が俺だと確信したようだ。ギルド長からもサシャさんからも、何があったのか、何を封じたのかと聞かれたが、正直に答えることはできない。特に教会の関係者が居るところでは少年神に伝わってしまいそうだ。真実は俺が墓まで持っていく。
少年神からもらった眼帯は、装着していれば眼が見えるようになるというもので、しかも通常の視力以外にも望遠になったり、暗くても見えたり、魔力の流れが見えたりする優れモノだった。迷宮の最深部に神器が眠るという噂は、結果としては正しかったと言えるかもしれない。バルテルに教えてやろう。ただ、大地を灼熱の地獄に変えるという剣は、手に入れても抜かないで欲しいものだ。
俺が神託の英雄となったことで、バルナベはシェリが俺の弟子になることに反対しなくなった。むしろ積極的に売り込んできた。神に認められた英雄ということで、教会のサシャさんも前以上に俺をリスペクトしていると感じる。宿屋のリュネットやギルドのアデル嬢、冒険者仲間のアンバーは態度こそ変えないように気をつかっているようだが、俺を見る視線に熱いものがこもるようになった。モテ期の到来だ。
以来、俺はウォータエッジの英雄として暮らしている。願わくば、創造神にはいつまでも少年の心を忘れずにいて欲しいものだが、彼がいつ大人になってしまうかは分からない。そうなったとき、世界の崩壊は一気に進むのか、それとも父神から受け継いだ部分はしばらくもつのか。言霊や魔法が使えなくなる危険性を鑑みて、俺は言霊の力にも魔法にも頼らない剣技を学んでいる。実力の底上げにもなるしな。最強の魔剣士がそれでも研鑚を積む姿は、後進の冒険者たちに良い影響を与えているとアデル嬢が言っていた。修行は好感度のアップにも一役買っているようだ。一方で、シェリとアンバー、それからサシャの3人に日本語を教え、言霊の力を伝えながら、冒険者を続けている。
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