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黄金の夜明け前~畏歴二千年前史~ 上  作者: ノウェル・ウィチタ
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イイスス都市国家地帯

 シャン人国家跡に作られた、十字軍参加国の飛び地領土の集合体である。

 この地域は1111年以降続いてきた十字軍の成果であるが、ガリラヤ連合の成立により、誕生当初からは多少性格が変わってきている。


 十字軍はカソリカ派イイスス国家の連合軍であった。(外交圧力によって無理やりにカルルギニョン帝国を参戦させた第二次を除く)

 十字軍は、回次によって主導する国家は違うが、概ね参加国の将軍のうち名声の特に高い者が指揮を務めた。


 ただ、現地での略奪行為・奴隷の確保は、実際には早い者勝ちであったので、回次にもよるが指揮が行き届かない場合も多かったらしい。

 特に、指揮を務めた将軍が自国の利益を優先し、他国軍を後ろに置いて自国軍だけ先に略奪に走らせようとした場合などは、しばしば指揮は崩壊した。


 だが、当時の決戦主義では、大きな決戦が終了しないうちにバラバラになってしまうと、全体が有象無象の衆と化してしまい、戦争に負けてしまう。

 それでは略奪も行えず、全員が損をするので、大きな戦闘があらかた終わるまでは統一指揮のもとで戦う。というルールは、各国軍が一応は守っていたらしい。


 略奪行為は早い者勝ちだが、問題なのは新たに獲得した土地の分配であった。

 土地ばかりは、略奪では折り合いがつかず、全ての参加国が納得づくの上で分配されなければ、後々に火種を残すことになる。

 だが、土地の分配は、指揮を務めた国がするわけにはいかなかった。

 必ずその国に有利な分配になってしまうし、それでは他の国々も納得ができるものではない。


 なので、分配はカソリカ教皇領から出張してきた従軍司教が行った。

 十字軍は実際には戦間期の小遣い稼ぎという側面が大きかったものの、名目的には1111年以降に掲げた解釈である『悪魔の討伐』が目的であったので、『勇者に利益を分配する』のは、やはり聖職者の役目であった。

 司教による分配は、おおむね教皇領の利益がかさ増しされるようにはなっていたものの、それがあまりに極端であったりすると十字軍そのものが続かなくなる恐れがあったので、不公平はそれなりの範囲に抑えられた。


 だが、司教による土地の分配は、要望に対して隅々まで行き届いたものではなかった。

 諸国からしてみれば、土地は旧来の土地に合わせる形で拡大して、一つの大きな圏域にしたかったが、そういった要望に応じていると戦功と矛盾する。というようなケースが多々あり、その場合は金銀のやりとりで埋め合わせをする必要があったが、それは従軍司教が決める内容ではなかった。

 なので、諸国は司教が一次的に土地の分配をしたあと、改めて土地の交換会とでも呼ぶべき会議を開き、そこで土地や都市のやりとりをした。


 その後、各国はその飛び地領土に移民団とでも呼ぶべき人々を送り込み、住まわせた。


 しかし、実際に住んだ現地住民にとっては、北方の地はあまり住み良い場所ではなかったらしい。

 ペニンスラ王国などの温暖地域に生まれた人々は、雪を見たことがなく、極寒も経験したことがない。という人が多く、北部の気候に適応できなかった例も多かった。


 また、この地域では、森林部に篭ったシャン人軍の残党や、クラ人の山賊や野盗による略奪行為が跡を絶たなかったらしい。

 各国は飛び地領土の治安維持には金を使いたくないのが実情だったので、治安維持の軍団は、賊が国境をまたいで逃げると、それを追わない場合が殆どだった。

 賊からしてみれば、順繰りに飛び地領土を略奪して回れば、討伐を受けるリスクはほとんどなかった。

 

 極北地域においては、シャンティラ大皇国時代はトナカイの遊牧が行われていたが、シャン人の奴隷化と共にその伝統は失われ、ついに復活することはなかった。

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