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黄金の夜明け前~畏歴二千年前史~ 上  作者: ノウェル・ウィチタ
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補遺:シャン人国家における爵位

 補遺としてシャン人国家における爵位について説明する。


 大分裂以降のシャン人国家では、軍と政治の間で確執が生まれ、その間に大きな溝が生じた。

 それは、1111年に発生した一連の戦役の敗北に関しての、理解の違いに起因する。


 現代における軍事史研究では、1111年の敗北は諸外国への戦力分析の遅れや、軍に頼るあまりの外交戦略の軽視、また諜報の不足が原因、という考えが主流だが、当時における理解はそうではなかった。


 当時のシャンティラ大皇国においては、軍事といえば、それは全て騎士たちの領分であり、軍事における失敗は騎士たちの責任、という理解が主流であったため、この敗北は自然と騎士たちの責任とされた。

 実際に戦争を発生させる外交権について、彼らは何一つ権限を持っていなかったのにも関わらず、である。


 そういった認識の相違から、罵倒の言葉を浴びせられ、憤懣やるかたない騎士たちは、各地を直接的に治め、割拠するようになった。

 が、やはり庶民の間では女王への敬慕の念が強く、槍を持たぬ女性の統治者を望む声は強かった。

 また彼らは統治や為政について不慣れであったので、官僚機構の構築が容易に成らず、殆どの自治領は脆弱な統治しかできなかったようである。


 そこから、女王の娘たちが各王国の建国を宣言すると、ほうぼうで手下の者を従えながら自治をしていた騎士(彼らは後に将家と呼ばれる)は、だんだんと説得に応じ、自治権を保ちながらも王国に吸収されていった。


 そこで問題となったのが、爵位であった。

 将家の長は、自治権を持つ関係上、自らで兵を整える必要があり、よって自ら爵位を授与する必要があった。

 それらは、中央政権となる女王と魔女家の使っている政治向けの爵位とは、趣を異にするものなので、ここで独自の爵位が幾つも発生した。


 以下に主なものを列挙する。


 天爵(てんしゃく)…将家の長の位である

 藩爵(はんしゃく)…将家の下で大版図を与えられていた有力諸侯

 燐爵(りんしゃく)

 陣爵(じんしゃく)…中程度の版図を与えられていた諸侯

 旗爵(はたしゃく)

 騎爵(きしゃく)…騎士章の保有者が騎士団への入団を許されると、無条件に与えられる爵位。所領は持たず、報酬は金銭で支払われる場合が殆どだった。


(旗爵と燐爵については、各爵位の間を埋めるために便宜的に設けられたという側面が強く、慣例上は存在するが、現実には使用しない将家が多かった)


 これらの爵位は、将爵位と呼ばれ、王が直接に授ける王爵位とは区別された。


 ただし、頂点たる天爵については、形式上任命するのは女王であるので、王爵位の一つと見ることができる。

 だが、何時の時代においても、天爵は将爵位の頂点にある称号であり、学術的な解釈はともかく、現実には王爵位の一部とはみなされなかった。


 それは、将家たちが国の中にあって独立性の強い存在であったからであり、事実、儀礼的には天爵継承の儀式は女王が執り行っていたものの、その継承には必ずしも女王の承認が必要ではなかった。


 仁爵(じんしゃく)大魔女家(グランド・ウィッチズ)の家長の位である

 法爵(ほうしゃく)

 燈爵(とうしゃく)

 曹爵(そうしゃく)

 承爵(しょうしゃく)

 魔爵(ましゃく)


 これらの爵位は王爵位と呼ばれ、王から授けられる称号である。

 女王の実務上捌き切れない分は、書面による通知で済ますことや、王の代理として大魔女家の長から渡される場合が多かった。


 ただし、これらの爵位については、序列は上記に書した通りの順番ではあったものの、その動きは激しく、場合によっては実質的に金銭によって売り買いされることすらあったので、現実に家が持っている力の優劣を表すものでは、必ずしもなかった。


 また、王直属の軍である、親衛軍とか近衛軍とかいった軍属は、槍を持つ身でありながらも王爵位を授与されていた。

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