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全部まるっとお見通しだ!


「どうしようってお前……」


足利は歩きながら溜息を吐く。

あの後、午後の授業も近いので話は移動しながらとなった。



「だ、だってあんな風に啖呵切られたら……仕方ないじゃない!ノリよ!」


「ノリって貴女ねぇ。」


「取りあえず。どういう事情なのか説明して欲しいんだが?」



早鷹はおずおずと語り始める。


「その、去年の秋ぐらいにいきなりあの生徒会長が柚葉に告白したのよ。『君が好きだ、付き合って欲しい』って。」


「いきなり?それ以前に関わり無く?」



西神は疑問を呈する。

そのようなタイプには見えなかった。



「一目ぼれだって言ってたけどね。それは結局嘘で本音はあの子の家に取り入ろうとしてたのよ。ほら比佐鷺ってイグレットの、聞いた事無い?」


「そういえばそうね。朱音の跡取りだったり桂木重工の息女だったり神宮寺だったりでいまいち印象が薄かったわ。」



昴は違和感を覚えた。


(なぜ嘘だと言い切れる?)


足利がふと、首を捻る。



「そもそも神宮寺の家ってどのくらいの格なんだ?委員長の家とどっちが上?」



「それは当然朱音家ね。神宮寺は精々、市議県議の過半数を支配している程度よ。国家権力の中枢に埋まってる朱音とは比べものにならないわ。」



早鷹が答える。


(それでも十分だろう、少なくともこの地域では口出し不能って事だぞ……ん?)


そこで昴には疑問が。



「……その割には随分チヤホヤされていたようだが。」


「そりゃイケメンだからだろ。」


「イケメンだからよね。」


「まぁ朱音の息女が仮面あんなんだし、格落ちでもイケメンなら飛びつくわ。」



三者ほぼ同意見である。



「話が逸れたな。まぁ事情は掴んだ。あの会長は柚葉ちゃんの家目当てで近づいてきた、んで早鷹的にはそれがとっても気に食わない。そういう事だろ?」


「そうね……概ねそう。これまではアイツは家の力は使ってこなかったけど、手段を選んでくれるような状況じゃ無くなったみたいね。」


「神宮寺の力でイグレットをどうにかできるの?結構な大企業よね?」


「それは無理よ。日本の血管を引き千切るような真似、朱音でも無理。でも、柚葉ピンポイントで狙う事なら簡単。」


「そうだな……護衛がいるっつっても絶えず襲撃されたら幾らなんでも……」



話が物騒な方向に転がる。

昴にとっては慣れた話。だがそれを彼らが話題にするのには、強烈な違和感を覚えた。


(そういう話はお前達はしちゃいけないんだ、それは俺の……!)



「待て待て。物騒すぎるだろ。仮にも惚れてるって言う相手にそんな事するとは思えないな。」


堪らず口を出す。

足利も西神もはっとなる。



「お、おう。確かにそうだな。」


「いくらなんでも飛躍しすぎたかしら?」



だが、早鷹の顔は変わらない。

焦燥、苛立ち、懐疑。



「違うわよ。あの男は惚れてなんかいない。取れる手段に躊躇いなんて持たないわ。そういう男よ。」



その言葉には三人が違和感を感じた。


なぜ、心を読めるわけでもないのに、そんな事を言えるのか。




「そういう意味じゃアンタの方がよっぽど信用出来るわ、伏見。」



早鷹は振り返り、昴を見る。

昴の胸を、見る。



「何?どういう……」



疑問を感じる前に、早鷹は剣道部特有の摺り足で接近。

昴の耳元で呟いた。



「アンタ、柚葉に惚れたでしょ。」



「―――ッ!?」



思わず後ずさる。

足利と西神は怪訝な表情。

早鷹はニヤリと笑い、再び摺り足。



「ともかく。これは柚葉と私の問題だから。もう大丈夫よ。さ、早くしないと授業遅れるよ!」



そのまま教室に入る。

気づけば既に2-Aの前に到着していた。


3人は顔を見合わせる。


「なんなのかしらあの子。」


「昴、お前何言われたんだ?」


「さぁ、よく聞こえなかったからな……」



咄嗟に嘘を吐く。



「どいたどいたどいたァーッ!!ぶつかるよォーッ!」



廊下を駆ける爆音!

振り返ると、爆走するポニーテールが。

周囲の生徒がギョッとして壁に寄る。



「ふぃー、間に合ったぜ。おっ、すばるんいすみんたけりんじゃん!元気?」



龍宮は全く息を切らさずに教室前に滑り込む。

スカートが捲れ、黒のスパッツが露わだ。



「貴女よりは元気じゃないわね……」


「えー?いかんですな!元気出すには適度な運動が一番!さぁ片腕立て伏せ300回!」


「適度って意味知ってる?」


「つーかたけりんは止めてほしいんだけど……」


「ワハハ!細かいことは良いんだよ!さぁ授業だヒャッハー!」



笑いながら教室に入る龍宮。

すぐさま宇佐の「うるせぇぞ龍宮ァ!」の怒号。



「……入るか。」


「そうだな……」



3人は釈然としないまま教室に入る。


同時にチャイムが鳴った。




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