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神と悪魔を差し置いて最強を名乗る。  作者: あるみホイル
種族総合闘技大会編
13/17

剣の銘は《ドルガルト・サルマティック》

種族総合闘技大会まで後一日……


俺は半分自分の家のように感じてきた龍人族の村にある宿屋の一室のベッドでゴロゴロしていた。

昨日、ドラゴンの襲来がありあの後の処理が中々めんどくさかった。

焼け野原になってしまった畑などの灰や家の瓦礫などの片付けなど何故か客であるはずの俺と煌牙が手伝わされた。心の奥にモヤモヤした感情を抱きつつ仕方なしにクレアや妖精達と一緒に大量の瓦礫などを運び重労働のすえやっと終わった次は首謀者でもないし自分の意思で村を焼いたわけでもないが実行犯であるドラゴンを今後どうするかという話になった。俺はもちろんこのまま帰らせてあげればいいじゃないか、と抗議したが頭の堅い妖精のお役人達はそんなわけにはいかないと即座に反駁した。結局応急で造った鋼の鎖をドラゴンの首手足尻尾にくくりつけ神聖であるはずの妖精族のアンダーワールドに通じる大樹に鎖を巻きつけただけの簡単な束縛だった。おそらくドラゴンであれば束縛されている鎖を引きちぎり逃げることも容易であるはずなのだが何故か逃げようとする素振りを見せずまるで鎖をつけられた犬のように黙っていた。ともあれ平和的に解決したことだけはよかった。

明日はついに種族総合闘技大会開幕なのだが煌牙と組手をした以外練習などなにもしていないこともあり多少の懸念はある。だがいまさら一日だけ練習してもどうにかなるわけではない、かといって何もしないのも退屈すぎる。

暇な時間の潰し方が苦手な俺はあることを思い出した。


「そーいや、龍人族の武器屋に行こうと思ってたけどまだ一回も行ってねぇな」


ゴロゴロするのをやめ起き上がりドラゴン襲来事件の後妖精族のアンダーワールドで買った衣服に着替えた。

妖精族の服は非常に繊細に作られており安物の服によく見られる縫い目の雑さや生地の安っぽさは全くなく着ていて心地の良い肌触りだ。

俺は黒色が好きであり、今回買った服も上下黒を基調にした大人に雰囲気をだすエレガントな見た目……だと思う。

煌牙も連れて行こうと思ったが大イビキをかいて爆睡しているから起こさず一人で行くことにした。思えばこうして一人で出歩くのは初めてだ。なにせ隣にはいつも相棒がいて当たり前だったからな。

初めてのソロプレイに多少緊張しながらも宿を出て、向かうはドドルガムの屋敷の通りにある武器屋だ。

人間の三倍を有する巨体がごった返す市場を龍人からすれば小人の俺はちょこちょこと龍人の足元を掻き分けながら武器屋を目指した。

息切れしながらもようやく到着した武器屋には三人の龍人が店内を物色していた。店内は長方形型で奥が会計場になっており長方形のちょうど真ん中にまた長方形の棚がありガントレットや西洋鎧のようなプレートアーマーなどの兜などが所狭しと陳列されていた。

店内の壁には攻撃範囲が広い槍やものすごく鍛えられた太刀などのメインになろう武器がかけられていた。

もちろん武器や防具は龍人サイズでただ見るだけために来たが会計場のカウンターは硝子で作られておりその中には龍人からすれば小型の片手剣が並べられていた。

その片手剣を俺はまるで子供のように硝子越しに目をキラキラさせながら見ていた。すると店番をしている龍人がカウンターの上から見下ろし声をかけてきた。

「おい小僧、いいのがあったか?」

俺は腰を(かが)めていた事もあり首が痛くなりそうなぐらい顔を上げ、見下ろす龍人に返答した。

「この赤い剣、いくら?」

俺は指を指しながら言った。

するとカウンターにいた龍人は硝子の中から一馬が指定した赤い剣を取り出しカウンターの上に置き、一馬も同時に立ち上がったが明らかに一馬より高いカウンターに身長が足りず背伸びをしたが全く赤い剣を拝めない一馬を見兼ねて龍人は赤い剣をカウンターの下にいた一馬に柄から渡した。

一馬は赤い剣を手に取り色々な角度から右目だけを瞑り見ているとカウンターにいた龍人が赤い剣について説明しだした。

「その剣の銘は《ドルガルト・サルマティック》だ。意味は善悪の審判とその剣を造った鍛冶屋が言っていたな、わしはあんまり意味が分からんが」

俺はその名前と剣から放たれる得体の知れないオーラを感じ、ビビッと体に電気が走るような感覚に陥り早口で「この剣売ってくれっ!」と勢いで言った。すると龍人は顎に手を当てながら何かを考えているようだった。

しばらくして顎から手を離した龍人は一息置いてから静かに返答した。

「う〜む、売ってやらんこともないがその剣は何せ古いんだ。一回使っただけで金属疲労で折れるかもしれん、それでもいいと言うのなら売ってやる」

「ああ!別にいい!売ってくれ!」

一馬は即答した。衝動買いと言えばそうだが一馬にとってこの赤い剣には彼を惹きつける魅惑と優美さで買わなければならいと思わせるような魅力があった。

龍人は仕方ないなという顔をしながら言った。

「なら五メールでどうだ?」

一馬はガンタイルからもらっていた百メール金貨をポケットから取り出しカウンターに置いた。

「買った……」




武器屋で買った《ドルガルト・サルマティック》のオマケとして赤い剣と同じような模様の鞘をもらい早速腰にドルガルト・サルマティックを携えていた。

上機嫌な一馬は煌牙に見せつけるため群衆の中を行くのはタイムロスになると思い屋根を飛び回り宿に帰った。

宿の扉をトントンと叩き女将さんが開けてくれ一馬が腰にしている剣に気づき話しかけてくれた。

「あら、あんた買ってきたのかい?」

「分かった?さっき武器屋で買って来たんだよ!」

「誤って壁とかに刺さないでよね」

「大丈夫、大丈夫!」

一馬はいつもより早く階段をよじ登りワクワクしながら部屋の扉を開けた。

「おい煌牙見てみろよ!かっこいいだろ!」と腰から剣を取りながら部屋に入ったが相棒の煌牙はまだ爆睡していた。残念そうに一馬は静かに部屋に入り鞘に剣を収め机に置いた。

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