08
お前はどう思う?そう尋ねられたが僕は混乱して直ぐに応答することが出来なかった。
この世界に龍神が居るだと?呪いだと?非現実過ぎた話しに耳を疑う。
僕ら、つまりヒドラ(自分)とヴァルナ(元女王)はムルジムを出て、また北へ北へと進み始めていた。砂漠は未だ広がっていて昼の今は日差しが辛いところ。
やはりヴァルナも国を救いたいとは思っていたらしいが仲間を必要としていたそうで、亡命先のムルジムの世話になっている国の長がどうやら病を患っているらしく、薬の材料となる植物を砂漠で探していたら偶然僕が来て、髪の色が緑だったことによりロノウェの民だということが分かって、もし僕が『ロノウェを救いたい』などと言わなくても説得して仲間にし、共に戦う気でいたそうだ。
なんてことを言ってくれたのは別に良いが、そのあといきなり『絶望の里』について語られても内容が内容だったので困ると言うか―――追いつかない。
「ほ、本当に龍神なんて居るのか?神話だけの話しじゃ・・・」
「でもその存在を信じずに一体どうやって此れから旅をするというか。それに私だって神紛いの術は心得ている。」
「あ。確かに、そうだ。あれは何なんだ?」
「何なんだと言われてもね・・・なんと言えば良いのだろう?・・・しかし簡単なものだからお前も使えるようになるんじゃないかな。兎も角、それについては何れ教える。今は考えなきゃ。絶望の里へ行く方法を、星の意味を、良い?」
言い含められてしまった。けれども納得出来るっちゃあ納得出来る。
そうだ。現に僕はヴァルナの奇っ怪な術に助けられたのだ。
だとしたらまぁ、その辺の事情はただ単に、僕が魔術や神のことを知らなかっただけとして割り切り、今は絶望の里へ行く方法を考えねば。
何せムルジムの人に『そんなみすぼらしい格好をしていては獣に襲われた時ひとたまりもないだろう』と言われ、無償で服や武器やらを提供されてしまったのだから。これは、その恩返しとしても国を取り戻さなくちゃいけない。
人に助けられるということは、その恩を仇で返すような真似はしたくない。
「星が導く月への道かぁ・・・海に龍神が居るんだからきっと絶望の里は海にあるんじゃないかな、そう、そうだ。例えば―――海に映った月の中。」
僕はふと思いついたことを言った。
海と月が重なる場所。それは海に反射した月。
「確かに。けれどその場合、星が導くというのはどうなるかしら。月は別に星が導かなくたって見つかるし・・・普通に見える月とは違うのかもしれない。」
「だとしたら何だろう。星、星、星・・・」
「星・・・星よ!!」
念仏のように星を唱えていると急にヴァルナが目を見開いて叫んだ。
「だから星が何なんだ?」
眉を潜めて尋ねると、肩を強く掴まれて揺さぶられる。そして、ヴァルナは何時もの気高い雰囲気を崩した笑みを浮かべて言った。
「西へ行きましょう!!レメトゲン19番地・・・ロンウェーに手がかりがあるかもしれない!」