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「ロノウェの国旗が気高き星と広き海を表すのは知っているかしら。知らなくても今、言ったのでそれを前提として話すわ。私、ラオメデイア家の書物にあったのだけれど星と海にはロノウェの歴史が深く関わっていた。ただ、勘違いしてはならない、この歴史は闇だ。だけれども、私はロノウェを取り戻す。後戻りは出来ないうえに、私は人間だから。」
これを冒頭に始まった『絶望の里』の話し。
「絶望の里よりも先ずはロノウェの歴史を語らなければならない。元々あの地域は海だった。けれど、ただの海では無かった。龍神の住む海だった。何百年も前のこと、其処に人間が訪れ住むための土地を探した。時代としてどうやら発展した時代だったから・・・というのは言い訳かもしれないが、兎に角どんどん自国の土地を増やす為の戦いが各地で成されていて、その矛先は神の住む海にも向けられた。こうして始まったのがロノウェの先祖と神の戦いよ。その戦いによって龍は私の何代も昔の人によって傷を負わされ、人間による世界の侵食から逃れるために人間の立ち入ることを禁じた絶望の世界を創造し閉じ籠った・・・と、いわれている。それが絶望の里の誕生、愚かな私達の行動によって絶望の里は生まれた。そして呪われた国ロノウェの誕生。」
「神に傷を負わせるなど愚行極まりないわ。天罰が下っても至極当然と言えよう。戦いに勝ったロノウェは呪われたといわれる。最も代表的な呪いの内容といえば四十五年ほど前だったかしら、結構近代的だけど大津波が国を襲ったわ。本当に大きな大きな津波だったそうよ。沢山の人が死んだ。それからやっとこの国は呪われたのだと、核心的な決定づけをする理由になったの。それから災害が起こることは無くなったけれど、今回の戦争で負けたのも・・・罰なのかもしれない。滑稽よね。結局どうせ国は滅びてしまったのだから。でも端から見れば、その国を滅ぼした神に国の再建を願いにいこうとする私達のほうが、よっぽど滑稽に見えるでしょうね。確実に。」
「それでも私はめげないつもりよ。確かに、龍神には申し訳ないどころか何も言えない立場であることは分かっている。けれど大切だもの、この国が。父を殺された気持ちがどれほど辛いことか。父が護ろうとしたものが簡単に奪われるのを易々と血も流さずに見ている己を私自身が許せない。私はどんなことがあろうともロノウェを取り戻す。」
「で、ロノウェを取り戻す為になのだが、海のことは話したでしょうが未だ星のことは話してないわね。星は道標よ。書物には『星が導く月への道』と、ある。月への道・・・これはよく分からないわ。きっと絶望の里の場所を示しているのでしょうが、お前はどう思う?」