010
棘の道を抜けるともう、服などはボロボロで所々肌も切れて血が滴っていた。
折角ムルジムで貰った装備品なのだが、仕方なかった。
「しかし・・・此処からどう出ようか。」
髪に付いた葉や紫の花弁を取りながら険しい顔でヴァルナが見据えるのは直ぐ目の前。
僕は興味本意で大股一歩踏み出し、俯き、頬を伝った冷や汗は見えない水底に消えた。
眼前は断崖絶壁。右斜め上の大河から流れ出す水が滝となり、遠い遠い滝壺へ落ちている。いや、最早滝壺があるのかどうかも怪しい。その位僕らは高い位置にいて、そして恐ろしく危険な場所にいるということだ。
「何でこうも危険な場所なんだ・・・ていうか今更だけれど、ロンウェーは何処に?」
地面に膝をつきながら首を捻って背後に立つヴァルナに聞いた。
「分からない。知らない。だから探しているのだろう」
「えっ!?」
意外にも彼女は分かっていなかった。では今の今まで当てずっぽうに進んでいたということなのか。
此処で、ふざけんな!だからこんなとこ来ちまうんだ!、何て言ったら今後の旅に支障がでるうえに何かボコボコにされる、確信してそう思う。
現に今僕はヴァルナに睨まれているのだ。だから僕は
「え、あ、いや、うん、うん。あ!取り敢えず此処は直にいけないから回り道をして西に進み続けてみよう。」
と。目を反らして拡散するように広がっていく長い道を指差した。
滝を通り過ぎ、川沿いを歩き続ければ段々細かった道も太くなり、再び高く聳え立つ木が空を隠すようになってしまった。
しかしそれでもロンウェーの所へは辿り着かない。
やはり、たださ迷っているだけではこの相当広い森では迷っていくばかりで、また、僕らは新たな難関に直面していた。
「どうしろというんだ・・・こんな銃や剣でも穴すら空けられないような扉」
高い段差の途中。頂上へ行く階段もなく、その扉は如何にも怪しく存在を示していた。
丘の断面に付けられた自分の背の二倍はある大理石の戸。しかもかなり分厚そうに見え、取っ手に手は届かず、更には丘に奇っ怪な模様が赤く染められた樹脂で描かれている。
一応試せることは試した。
だが、二人で押しても引いても扉は動かず、仕方なく使ったヴァルナの呪文でさえ無効という結果に終わってしまったのだ。
困ったことになった。
僕は扉を見上げ、頭を悩ませる。