09
こうして西のレメトゲンへ行くことになった僕ら。
砂漠を抜け(ムルジムの南よりは少し草が映えていた)樹海に入って行く。暗くて湿った空気の漂う深い樹海だ。不気味な雰囲気があって、僕はレメトゲンとはどのような場所なのかとヴァルナに問うた。
「レメトゲンは既に個々らへんの地域を表していて国ではないわ。ただ、番地が決められていて私達は19番地に行くの。レメトゲン、悪魔が住む森。その中でも19番地はロンウェーが居る。ロンウェー・・・異国の言葉でロノウェ。そう、ロノウェは悪魔の名前と同じ。」
「うーん、えーと、悪魔は本当に居るんだ」
「そうね。だって召喚魔法は悪魔を呼び出すけれど神は呼び出せないわ。」
「凄い。全然知らなかった。で、さぁ。つまり?悪魔に僕らは会いに行くってことか?名前が同じなら何か知っているだろう・・・的な感じで。」
「ま、そんな感じだ。でもそんな軽い様子じゃないわよ。私の父さんの父さんの母さんの母さんは召喚魔法が使え、ロンウェーを呼び出していたそうよ。ロンウェーは永いときをロノウェの長であるラオメデイア家に仕えてきた。即ち彼はきっと国境の意味だって知っているはずだわ。」
「へぇ、成る程。でも悪魔って別に異空間とかに居る訳じゃないんだな。結構身近な・・・」
身近な所に居るもんだな―――そう言おうとした僕の額に固い何かが刺さった。
「っつた・・・な、何だこれ!?」
咄嗟に瞑った目を開くと眼前には、比喩でも何でもなく、棘の道が広がっていた。
通る場所何て一切ない。先ず人が来ることを考えていない。そんなことを思わせるくらい棘はぎっしりと目の前を塞いでいた。
しかも回り道をしようと右にあるいても左に歩いても棘は変わらず続いていて、どうやら棘の道を通る他手段はないらしい。
「ど、どうするヴァルナ。炎とかで燃やせ・・・ないよな。」
「ええ。私は炎系の魔法は得てないし更に悪魔が住む森といえど聖域に値するわ。燃やせない・・・だとしたらまぁ、行くしかないだろう。」
そう言うなりヴァルナは棘を退けながら前へと進んでいった。
これには流石の僕も顔をしかめて血迷ったが、結局仕方ないと諦めて棘へと向かって行くのだった。