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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第4章 夢のジャムセッション
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EPISODE66:卑劣! 三谷の猛攻

「え……あ、う……、ち、違うってば。そんなことしないよ」

(む? どうやら告白ではないようだが……)


 健が言葉に詰まるのも無理はない。その日はバイトで、しかも通勤中。

 偽者のようにスーパーに寄っていられる時間などなかった。みゆきから逃げている時間もなかった。もちろんそのようなことは身に覚えがない。

 何故なら彼は正真正銘、本物の東條健そのもの。特売品の卵を何度も買い漁った挙句他人に押し付け、健になりすまして市役所で暴れていたほうが偽者。

 しかしみゆきから見れば、そのときの健が偽者だったかどうかを確認することは出来なかった。偽者がみゆきに振り向いた瞬間、すぐに逃げ去ったからだ。


「ホントにしてないの?」

「うん。絶対にできないよ、そんなズルすぎること」

(……ほうほう)


 とはいえ、この場はなんとか抜けられそうである。問題は落ちてしまった信頼をどう取り戻すか、だ。


「……決めた。今わたしの目の前にいる方の健くんを信じるわ」


 みゆきはあることに気がついていた、だからそう言ったのだ。

 人間、嘘をつくときもある。つかなければならない事もある。だが、健の瞳は澄んでいる。口からウソは出ても、目はウソをつけない。

 思い返せば、卵を何度も買い漁っていた方の健は瞳が濁っていた。まるで嘘という名のドロで塗り固められたように――。だから、信じたのだ。自分の知っている健ならこんなことはしないはずだ、と。


「ホントに? ありがとう!」

「ううん。お礼なんかいいよ。元はといえば健くんのこと疑ったわたしが悪いんだもん……」

「みゆき……」


 肩透かしを食らっていたアルヴィーだったが、そんな二人のやり取りを見て気が変わったのか、口元を少し上げて微笑んでいた。

 こっそりと見守るのが野暮ったくなったか、そのうち彼女は二人の間に加わって3人でショッピングを楽しもうと提案。

 無論結果は可決で、3人とも心の底から大いに喜んだ。やれ3人一緒にUFOキャッチャー、やれ3人一緒で音ゲー、やれ3人一緒でボウリング。

 3人揃えばキバを剥く――とは少し違うが、とにかく3人いれば楽しさも3倍。誤解も解け、みゆきと合流してからは嬉しいことばかりだった。


「じゃあ、あんたココやってちょうだい」

「へーい」


 健たちが3人で楽しんでいる裏側、やりたくもない仕事をやらされてゲンナリしているものもいた。

 トイレ掃除だ、この迷彩柄のつなぎを着た男は主任のおばちゃんに指定された区画の男子トイレを掃除するよう指示を受けていた。


「ケッ、めんどくせ〜っ!」


 その男は延々とそんな調子で文句を垂れながら、至極面倒くさそうに洗剤をぶっかけたり、モップがけで床を拭いたりしていた。

 ――やる気がない。あまりにもやる気が無さすぎる。どうやらアルバイトのようだが、これではクビにされるのもそう遠くはないだろう。

 いつの時代も働くものにやる気がなければ、そのものは容赦なく首を切られ職場を追い出される。それが文明が開花し、機械化の進んだ現代社会における自然の摂理だ。やがて男は、モップを投げ出し仕事も一緒に放棄した。


「あーあ、やってらんねぇ!」


 壁に腰かけて腕を組むと、大きくあくびを上げた。

 元よりものぐさなのか、それともただ単にやる気がないのか。床に投げつけたモップを立ち上げると、それに顔と両手を乗せた。


「どうせなら楽して稼ぎたいよなぁ……ん?」


 携帯電話が鳴り響いた、誰からだと思い電話に出ると――


「はい、三谷ッスけど」

「私だ。この建物に例の小僧がいる。殺れ!」

「へいへい」


 その言葉を待っていたかのように、三谷はニヤリと嫌らしく笑った。

 これでこの小汚ない便所を掃除せずに済む。トイレを出て先に清掃を終わらせて待っていたおばちゃんにモップを押し付けると、すぐに走り出して健たちがいる場所を探す。



「ねえ、これからどこ行こっか?」

「うーん。どこにしよう……」

「それより腹が減ったのぅ。そろそろメシにしないか?」

「そだね。ちょうどいい時間だし! 行こう」


 気がつけばもう昼過ぎだった。満場一致で昼食を食べることになり、空いていそうな場所を探す。フードコートにレストラン、定食屋――探そうと思えば、いくらでも見つけられるだろう。

 そうしているうちに三人はフードコートで食べることに決め、それぞれが今食べたいものを注文した。

 健はボリュームたっぷりのカツ丼、みゆきはスパゲッティ、アルヴィーは旬も近付きつつあるざるうどんだ。


「ひゃあ。そのカツ丼大盛りじゃない。全部食べられるの?」

「平気、平気。デスクワークって体力要るんだよね。だからスタミナつけとかなきゃ!」

「たまにはあっさりしたもの食べたほうがいいぞー」


 やろうと思えば、自分だけ先に食べることもできた。だが、皆は敢えてそれをやらなかった。せっかくの機会であるゆえ、みんなで揃って食べたかったからだ。

 現に三人とも実に幸せそうな雰囲気で食事をしていた。見ているだけでもおいしそうな、嬉々としたイメージが伝わってくる。

 それはフードコートの端っこからその光景を見ていた三谷にもしっかりと伝わっていた。驚いたあまり、パスタをすする口が一時停止するほど。すぐに食べるのを再開し完食すると、食い入るように三人を見つめた。

 ターゲットを見つけ、目的も果たせそうな三谷はまたも良からぬことを思いつく。そのにやけ面から、隠す気もない悪辣さと陰湿さがにじみ出ていた。

 それはさっきまでほがらかに笑っていた周囲の気分を萎えさせるほど。三人が食べ終わって別の場所へ行こうとするのを三谷は見逃さなかった。

 誰も見ていないところで透明になって文字通り姿を消し――尾行を開始した。『絶対に見つからない』と豪語するも、よく見ると彼がいる辺りだけ、空間が少し歪んでいる。


「うん……今なにかいたような」

「アルヴィーさん?」

「いや、何でもない」


 姿を消したまま、執拗にこの三人を尾行する。

 見つからないという揺るがない自信が、彼にはあった。

 だが、またしてもこの過信が命取りとなろうとは彼は思っても見なかっただろう。


(くそっ、あの女……さては気付いたか!?)


 徐々に焦りが生じてゆく。

 だが、それでも三谷は同じ要領で尾行を続ける。


「ぬ……!」


 やはり誰かにつけられているという確信。

 アルヴィーの瞳が鋭く研ぎ澄まされたかと思うと、誰もいないはずの方向で姿なき何者かをその手が掴み上げていた。 

 よく見てみれば、かすかにその部分だけ風景が歪んでいた。不審に思った彼女は、そのまま姿の見えない何者かを突き飛ばす。

 やかましい唸り声を上げながら、床に大きく迷彩柄のつなぎを着た男が張り倒されていた。


「うぎぎぎ……」


 昨日健につけられた左腕と顔の傷がうずき、三谷が歯を軋ませながら悶える。

 姿を露わにした三谷にアルヴィーは詰め寄り、再び掴み上げる。


「野暮なことはしないでほしいのぅ。今はデート中だからな」

「へっ……何を言うか。上位のシェイドであるお前が、人間にキバでも抜かれたかぁ!?」

「ほう、なぜそれを? ぜひ理由を聞かせてもらいたいものだが……」

「う」


 三谷は、彼女の正体を見抜いていた。

 それでも彼女は動揺することなく、むしろ余裕を保ったまま三谷を挑発していた。

 その視線には覇気があり、見るものすべてを震え上がらせることはたやすかった。

 対して三谷は弱々しく、覇気をかけらすらも感じさせない。

 実力を隠しているわけではなく、あくまでアルヴィーが放つオーラの前に慄いているだけ。

 いくら強がっても、その小心な本性は隠しきれなかったということだ。


「いつまで偽りの姿でいる気だ? 私は隠す気などさらさらないぞ」

「は、離せ。首がイタい……」

「もしや人前では見せられぬほどヒドい姿なのか?」


 アルヴィーはなおも三谷を挑発する。

 あえてこのまま責め続けて、正体を晒させようというのだ。


「こうやって醜態を晒し続ける方が、私は醜いと思うぞ」

「だ、黙れ! クソ女!」


 度重なる挑発の前に、遂に逆上。

 アルヴィーの腕を振りほどくと、三谷は目を大きくむき出してツメを伸ばし始めた。


「貴様ら、あの世に送ってやるッ! キエエエエエエエエェー!!」


 黄緑色に染まった三谷の姿がモザイク状に歪み、人ならざる異形の姿に変わっていく。

 それはまるで、カメレオンと小型の恐竜を足したような姿だった。

 腕は太くツメは鋭く伸びており、肩などには軽装の装甲のようなものがついていた。

 何より先に印象に残るのは、なんといってもその目玉だろう。

 大きな目の瞳孔が360度回転し、辺りを一望していたのだから。


「キキキキ! 死ねぇぇぇ!!」


 どこからどう見ても異様な光景だった。

 百貨店のド真ん中でカメレオンの化け物が人語を喋り、目から蛇行している軌道の怪光線を放っていたのだから。


「うわっ!!」


 三谷の攻撃の手は休まらず、両目から次々に蛇行する光線が放たれ、辺りを手当たり次第に破壊していく。その影響で煙幕が立ち込め、状況は悪くなる一方だ。


「けっけっけ。逃げろ逃げろぉ!」


 己の力をよほど誇示したかったのか、逃げ惑う買い物客に対しても三谷はその鋭い爪を振りかざす。理不尽な蹂躙を止めるべく視界が悪い中を突っ切るも、三谷は一向に見つからない。

 このままでは被害が拡大してしまう! 一刻も早く三谷を探し出して倒さなければ――そう思った矢先、背後から三谷が突然現れ健を拘束した。


「っ! し、しまっ……」

「動くんじゃねえぞ」


 それと同時に煙も晴れた。自分の目と鼻の先にいるのは――縄で縛られさるぐつわを噛まされたみゆき。彼女をいつでも殺せるようにか否か、近くには三谷より格下のシェイドもいた。

 目付きとくちばしが鋭いキツツキのような姿をしており、それも一体だけではなく二体。下手に出れば自分だけではなく、みゆきも危ない。


「お前が動けばあの嬢ちゃんが死ぬ。逆にあの嬢ちゃんが喚けばお前が死ぬ。どっちにしろ無事じゃすまないぜぇ?」

「くっ……!」


 表情を曇らせる健を解放すると、三谷はどこからともなくまさかりを取り出した。そしてそのまま、健の左肩を切り裂く。

 厚みのある研がれた刃は切れ味鋭く、ましてや人肌を切り裂いて出血させることなど容易。そのまま何もできない健を嘲笑うように、何度もまさかりで切りつけて流血させていった。


「ひゃははは! まだだ。俺様が味わった屈辱はこんなもんじゃねえ!」

「うっ……ぐ……」


 悔しいが下手に動けない以上、何もできない。

 身体中至るところから走る苦痛に息を荒げながら、健は三谷を見ていた。


「そういやお前エスパーだったな? なんでエスパーなんかになった?」

「……し、死ぬかも知れない状況で、言葉にできないくらいの恐怖を味わった。だ、だから……みんな、には……僕と、同じような目に……」

「けっけけけけ! あっそ! ばっかじゃねえの、お前!」


 死に直面したとき全身に走った恐怖を、味わわせたくない――そんな彼がエスパーになった動機を嘲笑い、三谷は健の腹を蹴り飛ばす。


「何が同じような目にあわせたくねーだぁ? もう恐怖感じてるじゃねえか、お前のお友達がなァ!! しょせんお前ら人間は口先だけ、いくら大層なこと言ったところで何もできやしねえんだ!」


 吐血して腹を押さえ、苦しみながらも剣を取ろうとするその右手を、三谷は無慈悲にも踏みにじる。

 人の思いを踏みにじるのみならず侮蔑するそのやり方は、あまりにも残酷で卑劣だった。


「うら! うら! うらぁっ!!」


 這いつくばった健を何度も踏みつけては蹴り、健が立とうとすればそれを邪魔立て。

 いわゆるリンチだ、どうやら反撃の隙すら彼には与えないようだ。


「けぇーっけけけ! 媚びろ! 詫びろぉー! ……ん?」


 健を蹂躙し続ける三谷の目に、何者かに突き飛ばされて横たわるキツツキの姿が飛び込んだ。

 目は焦点があっておらず、くちばしは強い力で曲げられており、更に身体中の羽という羽がすべてむしられ無残な姿となっていた。


「お、おい。誰にやられた?」

「シ、白イ髪ノ 女ガ、イキナリ俺ヲ……」


 苦しみうめきながら不慣れな人語を話すキツツキのシェイドの顔を、容赦なく何者かが踏み潰す。

 これでこのキツツキは意識を失った。動揺する三谷の目に、次に飛び込んできたのは――膝まで伸びた長い白髪の女性。

 一見すれば華奢で、とても戦いには向いてなさそうだった。あくまで見た目『だけ』は。事実、その右腕は鋭いツメを生やした龍の腕のような装甲に覆われ、彼女の凛々しく美しい容姿に不釣合いなほど武骨で威圧感があった。

 そんな彼女の後ろには、縄とさるぐつわを解かれたみゆきが立っていた。心なしか少し表情が誇らしげだ。


「まったく、世話の焼ける主人だの」


 三谷と対面しているときは凛々しく険しかった表情が、健と話すときだけは柔らかくなっていた。

 それほど彼に信頼を置いている事のあらわれだ。右腕を元に戻し、健の手をつないで立ち上がらせる。


「あ、アルヴィー……、ありがとう!」

「もう一人で無茶をするでないぞ。さて……こやつ、どう料理してくれようか」


 両者は三谷の方を向き、臨戦態勢に入った。

 アルヴィーが来たとたんに焦燥を感じた三谷は、後ずさりして逃げようとする。


「あ、アルビノドラグーン……! お前……!」

「相変わらず汚い手段が好きらしいのぅ。大人しくやけつくいきでも吐いておれば良かったものを、この大イグアナめ!」

「い、粋がってんじゃねえぞ。ブラッドペッカーはまだもう一匹いるんだからなぁ!」


 ブラッドペッカーとは――、先ほどアルヴィーにコテンパンに叩きのめされたキツツキ型のシェイドのことだ。

 その名の通り真っ赤な羽毛、鋭いくちばしとカギ爪を持ち、獲物の肉を引き裂いてはらわたや脳ミソをついばむ残忍なハンターである。

 更に鳥であるため飛行能力も有しており、一筋縄では倒せない。だが、上位のシェイドであるアルヴィーの前ではヒヨコも同然。いくら強くても所詮は下級でしかないのだ。


「せいやああああああっ!!」


 気配を察知したアルヴィーは瞬時に振り向き、ブラッドペッカーの腕を掴み上げる。

 気合の入ったかけ声と共に、そのまま三谷のほうへと投げ飛ばす!

 投げつけられたブラッドペッカーの重みとぶつかった衝撃が一気にのしかかり、三谷の体を容易くなぎ倒した。


「うが……くそッ……」


 のしかかるように倒れこんだブラッドペッカーの体をどかすと、まさかりを担ぎ込んで健めがけて疾走。


「ナメんじゃねえええェ!!」

「ふっ!」

「ぬおおお?!」


 傷を押してまで健はその凶刃を腕力だけで弾き返す。

 その隙に脇腹を突き、そこから更に宙へ打ち上げる。

 高く跳んで落下しながら勢いをつけ一閃。三谷を床へ叩きつける。


「ウギギ……お前ら、なにやってる! 援護しろ!!」


 紫の血を流しながら、無理矢理ブラッドペッカーたちを起こす。

 だが、二体とも既に虫の息。あと一押しで倒されてしまう状態だ。

 にも関わらず宙を舞い金切り声を上げながら、二羽の怪鳥が襲いかかる!


「ふんッ!」

「こんなものッ!」


 たったの一振りで、たったの一突きで。

 ――攻撃する隙もなしに、ブラッドペッカーは爆散し消し飛んだ。

 もはや万策尽きたか? 三谷はただ、おびえるしか他はなかった。


「じょ、冗談じゃねえ……」


 恐怖に震えながら建物の外に三谷は逃走。

 一息ついて人間体に戻るも、油断したところにアルヴィーによる顔面への鉄拳制裁を浴びせられてしまう。

 その威力はあまりにも強く、勢いあまって転倒させられてしまうほどだ。

 おびえながら起き上がるも震えながら後ずさりすると、そのまま逃亡した。


「お、お……覚えてやがれ!!」



 ――三谷をなんとか追い払った。如何にも卑怯で器の小さい台詞回しが腹立たしいが、その実力は間違いなく本物。

 事実、その辺のシェイドに比べてだいぶ手強い相手であった。悔しいが、流石に上級シェイドというだけのことはある。

 これまでの相手より遥かに、下手をすると今の自分より強かったかもしれない。

 それにしても――今日は本当にいいことがない。三谷からリンチを受けた体はボロボロ、せっかくのショッピングやデートも台無しだ。ただ、これだけは自信を持って言える。

 ――あの三谷という男は、必ず倒さねばならない、と。

 帰路に着こうとしたところ、健が苦悶に喘ぎながら昏倒。先程の戦いで、あまりにも傷を負いすぎたのだ。

 慌ててみゆきが救急車を呼んだことで健は病院に搬送、みゆきとアルヴィーもそれに同伴することにした。それに理由などない。仮にあるとしても、ただ単に心配だったから――たったそれだけであろう。



「まさか、病院の世話になろうとはのぅ」

「傷は浅いって言われてたけど……心配だなあ」


 病院の診察室前の廊下で、みゆきとアルヴィーは寂しく、しかし健気に健の無事を祈っていた。

 どうやら健が無事に退院できるまで張り込む腹積もりのようで、アンパンや三角おにぎりを持ってきてスタンバイしていた。

 もちろん患者でもない者が病院で寝泊りなどできないことは承知の上。そのくらい二人は、彼の身を案じていたという事だ。


「なーに、心配はいらぬだろう。あやつは丈夫だからのぅ」

「そう、ですよね」


 不安がるみゆきを、そうアルヴィーが諭す。とはいえ、彼女もなんだかんだで健のことが心配だった。

 エスパーは傷の回復が早いとは言えども、今回はかなりのダメージを負わされた。

 少なくとも完治するまでに3日はかかるだろう。だが、三谷も他のシェイドもいつ襲ってくるか分からない。

 本来ならゆっくりと傷を癒すべきなのだろうが、今はそうしている時間が無い。


「そろそろ夜更けだ。ここはひとつ、あやつの無事を祈って帰らぬか?」

「……はいっ!」


 彼は無事に退院できるのか、バイト先にはどう伝えればいいのか、彼がいない間食事はどうすればいいのか?

 などといった些細な不安を抱えながらも、二人はそれぞれが帰るべき家に戻っていった。

◆ブラッドペッカー

◆キツツキ型のシェイド。

 鋭いカギ爪と飛行能力を有し、翼を持たぬものを空から嘲笑う陰湿な狩人。

 素早く巧みな動きで獲物を翻弄し、その頭部をかち割って脳髄を啄ばむことを好む。

 三谷に引き連れられ百貨店で健たちに襲いかかるも、戦いの中であっけなく倒された。

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