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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第3章 ターニング・ポイント
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EPISODE46:In 3 Weaks...

 浪岡が倒れ、No.2である緑川が出頭。更に本部である研究施設はもぬけの殻――。

 センチネルズが事実上壊滅してから、早くも3週間以上が過ぎようとしていた。

 緑川の供述によってセンチネルズの裏の顔と所業が(おおやけ)の場に公開され、

 世間を騒然とさせた。そして、日本中に平和がもたらされたのである。

 ――だが、センチネルズが壊滅しても悪は滅びていなかった。

 誰もいなくなりすっかり寂れた空気が漂うセンチネルズの研究施設、その所長室に黒いローブの男が立ち入っていた。禍々しい装飾が施された一つ目の仮面を着けているため、素顔は見えない。手には何らかの暗証番号が書かれたメモが握られていた。

 その男は放置されていた浪岡のPCを立ち上げるや否や、メモにつづられた5ケタの暗証番号を手短に入力し極秘のファイルを起動。これに記されていたことを速やかに読み上げ、更に深層へ向かうべくパスワードを入力しにかかる。これもどこかで知っていたのかすばやく入力し、データの深層を閲覧。浪岡の後ろの壁を調べ、隠されたスイッチを押すと壁に扮した隠し扉が開いた。それは地下の深くへ続いており、仮面の男は階段を下っていく。下りきった先には、古びた書物がガラスケースの中で厳重に保管されていた。


「おお、これだ。古代に封印された偉大なる力、進化をうながす灯火(ともしび)――錬金術ッ!」


 ガラスケースを力ずくで破壊し、その中身である書物を手に取る。


「そのすべてがこの古文書に記されているッ!」


 心地よい風が巻き起こるほど速くページをパラパラとめくる。やがてすべてを閲覧すると、それを横領するかのように懐に仕舞いこむ。


「もはやここに用はない……」


 仮面の男はひとり不敵に笑いながら、闇の中に溶けるように消えていった。


 その頃、京都では――。



「おじさんビビってんのォ?」


 夕方、ある大通りの脇道にて。フード付きのパーカーを着た男と、スカジャン姿の男、

 ダウンジャケットの男が薄汚くみっともない格好の老人に寄ってたかって暴行を加えていた。

 いずれも服の色は緑色で、刃物や鈍器を持って、嫌がる老人を一方的にイジメていたのだ。

 おびえるホームレスの老人に、血も涙もない悪漢どもが牙を剥く。


「ウヒャヒャ! 見ろよ、このジジイ泣いてやがるぜ! なっさけねえ~!」

「なんか可哀想になってきたよなあ?」

「ヘヘッ、いっそ楽になっちまいなあ!」


 ホームレス狩りの一人が嘲笑いながらバールのようなものを振り下ろす。

 が、下ろそうとした瞬間に顔面を蹴り上げられ転倒。バールを持っていた男を蹴飛ばしたのは、

 青いチェックシャツにベージュのズボンを穿いた別の男だった。だが男の顔から悪意は感じられない。

 瞳も濁っておらず、純粋で正義感が強く、むしろホームレス狩りの連中の行為を快く思っていないようだった。


「な、なんだテメェ!? 邪魔すんな!」

「だったらこんなことすぐにでもやめろ! このおじいさんが何したって言うんだ」

「こいつクサいんだよ! ただのクサい匂いじゃねえ、何ヶ月以上も頭洗ってねえ臭いがしてんだよ!」

「そうだ! こいつはゴミだ! クズだ!」

「……ああそう」


 口答えする男たちを前に、チェックシャツの青年――健が大剣を抜く。

 右手には大剣、左手には盾を持っていた。明らかにその辺のチンピラとは格が違う。

 それでも命知らずなチンピラは健に喧嘩を売ろうというのだ。

 日夜シェイドと戦い訓練を積んでいるエスパーと、暴れるだけしか能のないチンピラとでは差は歴然。本気で相手してやるまでもない連中だった。


「ゴミならおじいさんの前にいっぱい落ちてるじゃない。悪臭を放つ腐ったゴミがさ!」

「野郎、フザケやがって!」

「ブッ殺してやる!!」


 ホームレス狩りのチンピラどもがナイフやバットを手に、罵声を浴びせながら殴りかかってきた。

 だが軽くかわし、背後を狙っての攻撃も盾で巧みに防いだ。

 これまでに何度もシェイドや悪人と戦って来た健にとって、この程度の手合いは話にならない。

 一見危険な凶器も、ただチカラ任せに振り回して暴れているだけ。


「やああっ!」


 横に振られた剣の腹がパーカーの男に命中、腹を押さえて後ずさりしながらパーカー男はダウン。

 「なめんじゃねえ!」と、スカジャンの男がバールで殴りかかるも弾かれる。

 弾かれた隙に肘打ちを食らい、剣の柄で喉をどつかれ気絶。あまりの痛さに口から血を垂らしていた。


「こ、こいつバケモンか!? ひえ~っ!」

「待て!」


 ダウンジャケットの男がおびえて腰を抜かす。逃げ出そうとする彼にも健は容赦しない。

 襟を掴むとそのまま剣で、なでるように斬った。血しぶきが飛んだりはしたが、

 誰しも死ぬほどの重傷を負ってはいない。健は相手を殺すというより、懲らしめる気持ちで戦っていたのだから。


「どうする。まだやるのか?」


 健が剣を突きつける。これでもし「まだやる」などとほざくようなら、

 もう一発キツイのをお見舞いしてやるつもりだ。そのくらいしないと、

 こいつらは反省しそうもないからだ。一方でホームレス狩りのギャング達は、

 恐怖に引きつった顔で健を見ていた。勝てる気がしない。こいつは桁違いだ、

 強さが化け物じみている。むしろ殺されなかっただけ幸運だ。


「も、もうかんべんしてくれェェェー!!」


 一目散にチンピラたちは逃亡。それを見届けると、「ふう」と、健がため息をついた。

 襲われて尻餅をついていたおじいさんに「もう大丈夫ですよ」と優しく声をかけ、

 腕を持って立たせてやる。「お礼がしたい」と言ってきたが、「そんなのいりません」と即答。

 あえて多くは語らず、健はその場を去っていった。



「ただいまー」

「おう、お帰り。今日は遅かったようだが……」


 アパートの一室に帰ると、テレビと雑誌を見ていたアルヴィーがリビングにいた。

 そんな退屈そうにしている彼女も健が帰ってきたとたんに笑顔になり、

 帰ってきた健をあたたかく出迎えた。手洗いとうがいを終えると、

 アルヴィーに早速今日の帰りにあった出来事を話す。

 ホームレス狩りについて、「同じ人間とは思えんな」と、アルヴィーは苦言を呈した。


「ところで夕飯はまだかの」

「もうちょい休憩してからでもいい?」


 健は疲れていた。情け容赦のないシェイドに比べれば、あんなチンピラごときは正直屁でもない。

 だが、今日は頭が痛くなるくらい難しい事務仕事のあとだった。

 仕事でフラフラだったのを押してまでチンピラどもを片付けた。

 それがかえって疲れを増長させたのだ。センチネルズを壊滅に追い込んだとはいえ、

 まだまだ未熟で荒削り。上には上がいる。精進しなければ――。


「前にも言ったけど、今月ピンチなんだ。あまり贅沢は出来ないよ」

「うむ、分かっておる。別に質素なメシでも私はかまわん。卵焼きでも納豆ごはんでも、何でも来い!」

「納豆はイヤ……」


 納豆といえば、ネバネバした豆。

 これに醤油をつけてかき混ぜたりしてごはんにかけて食べるほか、

 様々な用途に使える秀逸な食品である。しかしながら評価は千差万別で、

 ネバネバが気持ち悪いと嫌うものや、健康にいいから大丈夫、むしろ食えというもの――。

 見事に意見が二つに別れていた。健は完全に前者で小さい頃から納豆が大嫌いであり、

 それも口にしたくもないほどだという。理由はネバネバが気持ち悪いからと、

 あんなゲテモノを食べている場面が想像できないから、である。

 しばらくすると、健がトレイに肉野菜炒めとインスタントの味噌汁(二人分)を乗せて運んできた。

 夕飯のメニューに困ったときはとりあえず、この組み合わせが一番だ。味噌汁のにおいと、

 塩コショウの利いた野菜炒めのにおいが食欲をそそる。まだ腹が減るならバナナなりみかんなり、

 プリンなりを食べればいい。もう十分なら一服してから風呂に入る。風呂から上がってしまえば、そのあとはもう布団に入るだけ。


「すやすや……」


 そして、就寝。今夜はぐっすり寝られることだろう。だが、健は眠らなかった。

 いつもいたずらを仕掛けてきているアルヴィーに、今度は自分が仕掛けようというのだ。

 寝ている間は無防備、はだけた襟元から覗いているおっぱいを揉んでやろうとしていた。

 「にひひ」と、少しいやらしく聞こえない程度の音量で笑いながら、アルヴィーに這い寄った。


(よ、よし。あともう少しだ……ひひひ)


 性欲をもてあました右手が、彼女の放漫で顔より大きな胸を鷲掴み!

 更に、左手でも乳房をつかむ。身体中のアドレナリンがみなぎってきた。

 このままアレをやってしまおう。一度やってみたかったことがある。

 たった一度でいい、この時しかできないことをぜひともやりたい。


「ぶんだばああああああァ!!」


 興奮のあまり、健は如何ともしがたい奇声を上げながら未知の空間へ、

 エロスの極致へと頭から突っ込んだ。というのも、会ったときからずっと挟まれてみたかったのだ。

 あの谷間に。自分も『ぱふぱふ』してもらいたかった、それだけなのだ。

 あの時、ぱふぱふでとどめを刺された緑川をうらやましいとさえ思っていた。だから、この晩にこんなことをした。

 そこは気持ちよかった。どんな楽園よりも、どんな極楽浄土よりも。

 やらかしてしまった感じが否めないが、至福のひとときだった。

 こんな快い思いをしたかったのだ。自分がこんなスケベな性癖を持ってしまったのは、

 幼い頃の些細な出来事がきっかけだった。母に抱かれた際にその大きな胸に触れて、

 快感を味わったからだ。これをきっかけに、自分は巨乳に目覚めてしまったのだ。今となっては言わずもがなだ。


「ん〜……」

「あ、やばい」


 だが、長くは続かなかった。お楽しみの最中で相手が起きてしまったのだ。

 こればかりはもうどうしようもなく、相手から手痛い反撃を受けるしかほかはなかった。


「ふふふ。お主、さてはやりおったなぁ〜?」

「ドキッ」

「よろしい、ならば……報復(しかえし)だ!」


 その晩、駅前のアパートから耳をつんざくほど大きい男の悲鳴が聞こえたという。

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