EPISODE390:オペレーション・スキュータム PART7
「……ロギアとか言ったな。なぜ都庁を制圧しようと思った」
「我々の力を選ばれなかった者どもに思い知らせるためだ」
「なぜ自衛隊のみんなを殺した」
「ヤツらが落ちこぼれのカスだからさ」
「デミスの使徒に選ばれたならばなんの罪もない人々を殺してもいい権利が与えられるとでもいうのか!」
「貴様ごときのくだらん質問にいちいち答えてやる義務はない!!」
徐々に激昂していった健からの最後の問いをはね除けて、ロギアはダブルイーグルの刃を健の脇腹にぶちかます。アルヴィーはすぐに白龍の姿へと変身し彼の周りを舞う。
「健!」
「ハハハハ……ここまで来れた記念にプレゼントをやろう。貴様は俺がじきじきに殺してやる……」
ロギアは転倒した健の胸を踏みつけ、にじり出した。サディスティックな笑みを浮かべ愉悦に浸っている。
「人間を凌駕する力を得たエスパーよりも劣る人間を守ることに意味があると思うのか? 守る価値があると思うのか? え? 東條さんよォ!!」
「グハァ!」
非情で容赦の無いロギアは腹に蹴りを入れて追い打ちをかける。対する健もやられっぱなしではカッコがつかない。ので――メットの中で血を吐きながらも起き上がり、ロギアのダブルイーグルを打ち払い、シールドで殴る。しかしロギアは動じない。もう一度シールドアタックとキックをお見舞いする。それでもロギアは動じない。
「効かねえなあ~~~~? 蚊でも止まったかあ~~~~?」
「な……」
左腕に取り付けた鋭いライガークローが健の腹へ直撃! ライガークローの切り裂き攻撃とダブルイーグルの猛烈な打撃のダブルパンチが健を追い込む。
「死ね! ショックドライバー!」
己の勝利を革新し慢心した力強いシャウトとともに円状の衝撃波が両刃から放たれ、健を襲う。それはエネルギーの柱を吹き上げて爆発を起こした。
宙へ舞い上がった健は顔面から硬い鉄筋コンクリートへと落下する。凶悪に笑うロギアは左手のライガークローを研ぎ澄まし健を掴んだ!
「フヒャハハハハハハハハアアアアアアアァァァ!!」
健の体は引きずられヘリポートから壁面へと摩擦され、火花を上げながらじわじわと、しかし、すさまじい勢いで体力を奪われていく。そのまま庁舎のふもとへと叩き落とされ、そこにロギアのパートナーにしてサーベルタイガーのシェイドの――紋章の形をしたクレーターが出来上がった。
「あ……う……く、き、貴様ぁ……」
「フヘヘヘヘヘ――やめられねえなあ。弱いくせに虚勢を張って強いふりをしているヤツを蹂躙するのは……たまんねえぜ。その顔が恐怖で歪む瞬間を見るのはよォォォォ!!」
「こんなヤツのために、自衛隊は……警察は……!」
「この俺様にエラそうな口を聞くんじゃあねえ! 黄金龍の力がなきゃクロノスなんて倒せなかったエスパーのクズがあ!!」
健を足蹴りにして悦に入ったかと思えば、「こんなヤツ」呼ばわりされたことが癪に障ったようでロギアは激昂。これまでに激しく、執拗に健を殴っては蹴り、無理矢理立たせると壁際に追い詰めてこう言った。
「もう一度てっぺんから落としてやろうか……ええッ? 東條のォ!!」
「グッ!!」
すごんだロギアはライガークローで健を一気に屋上のヘリポートまで吹っ飛ばし、コンクリートの地面へ激突させる! そのダメージたるや想像にがたくない。こうなってしまえばパワードテクターの試作型があってもなくても変わらない――。だったら、だったら!
「んッ! うおおおおおおおおおお!!」
「なにい!?」
だったらやられる前にこちらからやるしかない! 雄叫びを上げた白金色の竜騎士はその剣に土のオーブを宿し、禍々しい黒金色の砂の王子へと突進する。
迎え撃つ砂の王子はツインイーグルを巧みに動かし竜騎士の斬撃を弾くも勢いに押し切られ、一瞬――ほんの一瞬、隙を見せた。
「グアァ」
横に大きく一閃、ロギアは転倒させられた。しかしロギアもまた攻撃をしかけており、健の頬にかすり傷を負わせていた。速すぎて見えなかったのだろう。
「信じられん……この俺に膝をつかせた……だと!?」
驚愕のち、ロギアは高笑いを上げる。すぐさま、激高し怒号とともにツインイーグルを振り回した。
「余計に貴様を殺したくなったぞ!! 親の七光りの、エスパーのクズめッ!!」
☆★☆★☆★
同時刻、不破とオブシディアンもまた白熱した戦いを繰り広げていたが、戦況はオブシディアンのほうが圧倒的に有利だ。パワーとタフネスはオブシディアンのほうがはるかに上でディフェンスは完璧。不破が彼に勝っているのはスピードのみ。チマチマと、確実に削っていくしか方法はない。
「スタミナ切れか? もう少しホネのあるヤツだと思っていたのだがな――」
「ああ、オレは骨太だぜッ……まだまだ、引き下がらねえぞ!」
大剣アダマンタインを振り上げた隙を狙い、何度打ちのめされようが勝機を見出す不破はランスを構えて突進する。一瞬だけガードが甘くなる機会をうかがっていたのだ。
「大振りだッ! お前は熟練者だが脇が甘い!」
「甘かったか……しかし」
その刹那、オブシディアンの体は金属の塊と化し――不破の一切の攻撃を寄せ付けなくなった。
「そんなバカなッ!?」
「見くびってもらっては困るな」
これぞ金属化――メタライズボディ。オブシディアンの持つ固有の能力にして、彼が『盤石の鉄鋼将軍』たる所以だ。不破の瞳孔が驚愕によって開き、その手は防御時の衝撃から震えていた。この完全防御の弱点はその場で直立不動となること――この状態ならば動いてかわす必要などないからだ。
やがて攻撃のため、オブシディアンは金属化を解除。今度こそ勝機! 不破は恐怖を打ち払い、ランスを力強く振り回して一閃しようとする。
「食らえ――――ッ!!」
「効かんよ!」
――直後、むなしくも、強力無比なアダマンタインにより吹っ飛ばされあっけなく地面に崩れ落ちた。これ以上の屈辱は不破の戦士としての、警官としてのプライドが許さない。しかし――ここから彼はどうやって道を拓こうというのか。
「ぜぇ、ぜぇ……デカブツめ……」
◇◆◇◆◇◆
「倒れた相手に斬りかからない? 奇遇ですね――わたくしも同じことを考えていたわ。でもあなたのような冷血じゃない!!」
あずみとマリエルの戦いもまた、より熾烈を極めたものへと発展していた。地に伏した状態から復帰してイバラやレイピアの突きを巧みに使い分けて攻めるあずみであったが、マリエルはイバラの水分を凍結させることにより崩壊させ、先ほどまでのように高圧水流やウォーターカッターを駆使して容赦なくあずみを襲う。
「その様子ならまだまだ楽しませてくれそうね? 葛城コンツェルンの次期総帥さん」
「父と母の名にかけて、わたくしの誇りにかけて――!」
「譲れないものがあるのは私も同じ。来なさい」
あずみとマリエルが互いの信念と誇りを乗せて斬り合いを演じたのは、これで何度めであろうか。はじめて戦うというのに、まるでふたりとも既に好敵手となっていたように、そうなることが最初から運命づけられていたように――不思議な感覚がふたりのなかにあった。
「てい! えいっ! そりゃーっ!」
「ふっ! はっ! せぇあっ!」
片方の軌跡はバラのように尊く美しく、もう片方の軌跡は氷のように冷たく麗しく。相反する剣と剣の応酬を続けているうちに、あずみはもうすぐでダウンを奪えるところまで行けたが――冷たく笑ったマリエルの蒼い剣閃があずみを貫き、マスクを破壊した。
「っ! ……蒼海の魔女と名乗るだけあるわね!」
「わざわざありがとう、お嬢様。でもね、あなた――!」
突きからの突進を派生させ、マリエルはそのまま壁まであずみを押し切って追い込む! あずみのほうをかすったレイピアはコンクリートの壁に突き立てられた。むろん、お互いに顔が近い。この状況で――壁ドンというものである。
「はっ!?」
「口の聞き方がなっていなくってよ」
激しく動揺するあずみのアゴを片手でクイッと持ち上げたマリエルは、彼女に冷たい視線を浴びせる――。
☆★☆★☆★☆
「ウラァァァァ!」
「ぐぅわああああああああああ!?」
怒り狂うロギアの凶刃は健の防御をたやすく切り崩し斬撃の連打を浴びせた! そう、ツインイーグルによる乱舞攻撃! 目にもとまらぬ早業だ!
「そうだその顔だ! 貴様のその顔が見てみたかったんだ! 殺したくなる顔がなあ……!!」
「アグッ!」
「痛いよな、苦しいよな。辛いだろうなああああ~~~~ッハハハハハハハハハッ!! 貴様のことはもう嫌いになったが、できることなら楽に死なせてやりたいんだよなあああああ~~~~ッ!! フヒャハハハハハハハハハハハ!!」
「うううあああああっ」
ロギアは健を一方的にいたぶることを愉しむだけでなく、自分を侮辱するような言葉を並べた彼への憤怒と憎悪もぶつけていた。哄笑しているだけでなく怒りで煮えたぎってもいたのである。
「だがまだまだ死んでもらっちゃ困るな……俺の楽しみが無くなっちまうんでね」
「どういう意味だ……!?」
「これから教えてやる!」
健を突き倒したロギアは、サーベルタイガーとワシのクレストが刻まれた、あるデバイスを取り出して健の前に見せた。健は信じられない表情で視線を注目させた。
「それは――!」
「白峯とばり博士が作ったパワードテクターは、しょせんは俺たちデミスの使徒がまとっているエンドテクターのサルマネでしかない。その事実を俺が、俺たちが教えてやる。――終装!!」
ロギアが邪悪なる終焉の鎧――エンドテクターを装着する掛け声を発して構えたとき、
「――終装」
マリエルも、
「終装……!」
オブシディアンも、
「終装ぉぉぉぉぉ!」
サリヴァンも、
「レッツ! 終装!」
そして、マーガレットも――ほかの五戦騎たちもいっせいに『終装』の構えをとった。
まずは、ロギアのエンドテクター……サーベルタイガーギアのパーツが黒と金に輝きながら浮かび上がり、瞬間的に装着されていく。その全貌はクレストに記されていたように、サーベルタイガーとオオワシの意匠を持っていた。ヘッドパーツはサーベルタイガーの頭部を模しており、左肩はオオワシの頭部、背中にはオオワシの翼、腕はたくましいサーベルタイガーの腕、フィンガーはオオワシの巨大な爪のような形状。ボディと脚部はそのハイブリッドだ。全体的に黒と金を基調としており、バイザーや各部についた宝石状のパーツは紫色に輝いていた。
マリエルのエンドテクター……ソードフィッシュギアのパーツは青と白に輝き、瞬間的に装着されていった。バショウカジキの意匠を持つそれは、マリエルの美貌に似合った機能美と外見美を追求し突き詰めたマスターピースであった。ヘッドパーツはヘッドギアあるいはヘッドセット状となっており、吻とヒレのパーツがマリエルの美貌を損ねないように巧みにつけられていた。
両腕ともアームガードつきであったが、ライトアームにはバショウカジキの背ビレのような思わず目を見張る見事なパーツが取り付けられており、背中には人魚の背ビレが妖精の翼のように展開したような神秘的なパーツつき。
メインカラーは金で縁取られたコバルトブルーとホワイト、ひし形の宝石状のパーツもまた淡いブルーに輝いていた。細かいことに、メインカラーを引き立てるダークカラーのインナーには魚鱗の意匠が見られた。
オブシディアンのエンドテクター……ベヒーモスギアは黒とシルバーを基調とし、オレンジ色のラインが光る重厚なものであった。彼のような巨躯の持ち主にしか装着できないそれは、ヘッドパーツからダークオレンジのタテガミと一対の太くて立派な角を生やし、胸部からもまた一対の角を生やしている。両腕・両足にはフェイクファーがあしらわれ、慎重派の彼の性格とは対照的なワイルドさだ。
何より前述したように巨大で重厚であるため、見た目のインパクトと迫力は群を抜いている。あの大剣アダマンタインもこのベヒーモスギアの力でより強化され、さらなる脅威と化すであろう。
猛牛やクジラが合わさったような意匠を持つそれはまさにその名の通り、巨獣――ベヒーモスのようであった。
サリヴァンのエンドテクター……ナイトメアギアは白と紫を基調としたカラーで、角や関節部のオレンジや赤がアクセントとなっていた。
ナイトメアとは英語で悪夢や、悪夢の象徴である馬の魔物を指す。これは後者がモチーフとなっており、ヘッドパーツは馬の頭部を模した兜に、両腕は袖がヒヅメの形をしている。両足は足首がヒヅメの形だ。
インナーは黒いため白いボディと合わせて全体的におぞましく、馬だけでなく幽鬼めいたイメージも持っていた。このように同じ白いボディでも、マリエルのソードフィッシュギアとはまるで正反対のイメージだ。
マーガレットのエンドテクター……ピジョンピーコックギアは、その名の通りマジシャンのマジックに使われる定番たるハトと美しさで知られるクジャクを掛け合わせた意匠を持っていた。トランプのスート各種の形をした宝石が埋め込まれたヘッドパーツはシルクハット型で、ボディをはじめ、二種の鳥だけでなくマジシャンにちなんだ意匠も盛り込まれており、大魔術師と名乗るマーガレットのイメージを損なわないものになっていた。
さらにマジシャンらしさを強調する要素として、ボディにはハートのスート型の赤い宝石が、左腕にはダイヤのスート型の青い宝石が、右腕にはスペード型の紫の宝石が、足にはクローバー型の緑の宝石が埋め込まれていた。赤と黒を基調とし金で縁取ったカラーリングもまた、華やかさと禍々しさ、かわいらしさと苛烈さを備えたマーガレットの魅力を引き立てていた。
――あらぬ方向へと転がったオペレーション・スキュータム、光の矢のエスパーたちは、警察は、自衛隊は、この絶望的状況を覆し生還できるか?
皆様、お待たせしました。
エンドテクターの描写を力を入れようと考えすぎたあまり、
これを書きあげるまでに半年以上もかかってしまいました。
本当にごめんなさいm(__)m
では、引き続きお楽しみくださいませ^^;