EPISODE387:オペレーション・スキュータム PART4
――黄色。
緑。
青。
白。
紫。
赤。
黒。
灰。
それぞれの色ごとに分隊された機械の戦闘兵、マスプロイドたちは目の前の新宿都庁を見据えて、侵攻しつつある。その中には戦闘ヘリコプターやVTOLを操縦しているものも――。
いずれの色の部隊も戦闘に立つのはバズーカ砲やガトリングガンで武装した、その部隊に対応した色のマスコマンダーだ。引率のエスパーも同じく対応した色のエンドテクターを装着している。目標は筒井管理官だ、既に補足されている。
「なっ、何をしている! 指揮官殿! 早く迎撃を!!」
「慌てることはありませんよ筒井管理官。あんな烏合の衆など一瞬で吹き飛ばしてご覧に入れましょう。撃てーッ!!」
焦燥し出した筒井に対して指揮官の魚沼は落ち着いており自信に満ちていた。筒井の目の前で涼しく笑ってみせると部下へ号令をかける。はじまったッ! レールガンやマイクロミサイルなどからなる、マスプロイド大隊への一斉放火だ! マスコマンダーとデミスのエスパーに率いられていたマスプロイドたちのうち数体が破壊された。
しかし全滅しきれていない。鉈や斧などを持ったマスプロイドが自衛隊に襲いかかり、すれ違いざまに切って、切って、切り捨てていく。これぞ無慈悲で好戦的な戦闘ロボットの本懐!
それだけではない、デミスのエスパーたちも自身が持つ武器や固有能力を駆使し自衛隊員を圧倒した。指揮官・魚沼の余裕も落ち着きもあっけなく崩されてしまった。
「ば、バカな……!? 選りすぐりの精鋭たちが、最新鋭の装備が……!?」
そうしている間に第一庁舎の上空、屋上や高所に機銃を構えて待機していた自衛隊員に戦闘ヘリコプターやデミスのエスパーが奇襲攻撃をしかけた。
空飛ぶデミスのエスパーが装着している茶色と白のエンドテクター、その形状はモズを彷彿させる。手には長槍が握られ、一対の立派な翼がついていた。
「デミスの使徒シルバークラス、【竜巻く空中騎兵】ガリアーノ! 恨みはないが灰燼に帰すがいい!」
「ぐわ――――っ!!」
ガリアーノが握る長槍の穂先で圧縮された空気が渦を巻く。それは自衛隊の勇士たちに放たれ容赦なく爆発! 悲鳴を上げて日本が誇る勇士たちは灰燼に帰した。
「突入ゥ――――ッ!!」
更にV-TOL機からロープにつかまって降下したデミスのエスパーたちが第一庁舎中層の窓ガラスをぶち破って内部へ潜入。全部で三人だ。リーダー格はサメ型の蒼黒と白を基調としたフルフェイスのエンドテクターをまとう長身男性。ルキウスだ、両刃の大剣をふたつ――どちらも両手剣を手にしており、切っ先を自衛隊員に向けている。ベルトのバックルは銀色だ。
もうひとりは水色と白を基調とした、フクロウ型のエンドテクターをまとった男性――駿河だ。その手にはムチと分厚い書物が握られている。やはりベルトのバックルは銀色であった。
三人目は前髪が右側に流れたアシンメトリーな髪型の女性――榊夕実だ。ハクトウワシ型のエンドテクターを装着し、両手にはミントグリーン色のエネルギーが弾けている。
三人の背後にはすぐさまマスプロイド部隊が榊の力によって転送されてきた。装甲の色は青い。
「で、デミスの使徒だな……」
「ここを通せ――そうすれば命までは奪わない。これは忠告だ」
「黙れテロリストどもが!」
襲撃者のエントリーに自衛隊員たちは恐怖する。恐怖心から震えていた手つきが引き鉄を引いて闇雲な射撃が行われた。しかしデミスのエスパーたちは払いのけたどころか、無傷だ。薄ら笑いしながらデミスのエスパーは前進――ルキウスが率先していた。
「あ……? あ……? そんな……!?」
「抵抗したということは死を覚悟したと見なしていいのだな? 忠告はしたはずだが?」
「ば、バケモノッ!!」
無意味な抵抗を続けようとした自衛隊員へ、ルキウスは剣を振り下ろし速やかに殺害! しかし、何を思ったか大剣をしまうと、今度は両腕のパーツからサメの背ビレ状の鋭利なブレードを生やしたではないか。そのブレードは迷いのない冷たさで輝いている。
ルキウスは思った。曲がりなりにも彼らは自衛隊。国を守るという強い信念を持っているはず。にも関わらず戦う者としての信念や誇りが感じられない。恐怖に怯えたことによりそれらを自ら捨ててしまったのか。残念でならない――。
「尊厳を失くした者の血でこれ以上俺の『グランブルー』と『ディープブルー』を汚すわけにはいかない」
輝くアームブレードから巨大な三日月状の切断光線がほとばしり自衛隊員たちを切って裂いた。バトルスーツで守られた自衛隊員たちをいともたやすく! あっさりと!
切断光線は自衛隊員たちをダイレクトに切り裂いただけではなく爆発をも起こし、自衛隊員たちはルキウスたちと対峙して数分も経たないうちに全滅した。
「悪く思うな」
「やるねルキウス。マリエルからの信頼も篤いわけだ」
死を前に怯えていたとはいえ仮にも国のために戦った立派な兵士ではあった。葬った相手へ彼なりの敬意を示したルキウスは鼻を鳴らして立ち会っていた榊と駿河に振り向いた。
ちなみに、榊は上司であるマリエルのことを呼び捨てにしていたが――これはアメリカなどの外国ではよく見られる習慣である。そこにはちゃんとした尊敬の念があるため、彼女には責められる謂われはない。
そして、ルキウスたちの向こう側で、冷気に似た冷たい輝きが放たれると冷気が爆発――凍結を起こし、そこからマリエルが姿を現した。エンドテクターはまだつけてはいない。いや、つける必要すらなかった。
「今のでこのフロアの敵は殲滅できたようね」
ロングポニーテールで束ねた髪の毛をすかして彼女はこのフロアの自衛隊員を殲滅させたことを告げる。しかし、マリエルの反応から察するに第一庁舎下層と都民広場の隊員たちはもう――。
「「マリエル様!」」
「マリエル……!」
「下層のヤツらは私ひとりで全滅させたわ。あなたたちの手をわずらわせるまでもなかった」
「それでこそ俺たちが忠誠を誓ったお方……」
膝をつくルキウスたち。戦いで白のロングコートに付着したホコリを払ったマリエルは左目のサポーターアイを起動し、ほかの五戦騎率いる部隊の戦況がどうなっているかを確認する。――微笑んだ。それだけで戦況はデミスの使徒が優勢であると即座に理解した。
ルキウス、榊、駿河の三人もまた、各々のサポーターアイを起動。ルキウスのみエンドテクターがフルフェイスであったため、ヘッドパーツに内蔵されたバイザーに情報を提示した。
「……ふむ」
「戦況は把握できたかしら? 今から次の指令を出すわ――榊」
「はっ」
「あなたはVTOLへ戻って後方支援。ルキウスと駿河は私とともにまだ残っている敵と増援を叩きましょう」
「「「了解」」」
新しい指令に従いデミスのエスパーたちは動く。ひとりだけでも最新の武器で武装した自衛隊員など簡単に殲滅できてしまう者たちが合流したことにより、ますます脅威となった。
◆◇◆◇◆◇
「フハハハハハ!!」
その頃、第二庁舎周辺に点在するふれあいモールでは自衛隊員を相手にサリヴァン率いる部隊が暴れていた。サリヴァンは霧を発生させることによって自衛隊員を幻惑し、動揺している隙にその手に握った、骸骨の意匠を持ちドス黒い殺意が込められた禍々しい剣――フォッグガッシャーを振り回し斬殺!
斬られた者はいずれもひどくもがき苦しみながら死んでいった。サリヴァンは戦慄している自衛隊員たちを前に哄笑しフォッグガッシャーの刀身を――霧状に変化させた。
「スペクトルエッジ!」
「なんだ! 剣が霧みてーに変わったぞ!」
霧状になった剣を打ち消そうと銃を向ける自衛隊員、しかし弾丸は全部霧の刃をすり抜け、霧の刃は自衛隊員にまとわりつく。次の瞬間、まとわりつかれた自衛隊員たちは皆全身をズタズタにされて死んだ!
「ハハハハハハッ! もっとだ!! もっといい声で泣けッ!!」
サリヴァンは弱者を痛めつけることに対して愉悦を覚えるタイプだ。実際に今、愉悦に浸っている! 次に誰をなぶり殺しにしてやろうかと既に考えている!
自分の背後に立っていた自衛隊員に視線を向け、奇声を上げながら斬りかかっていった!
◇◆◇◆◇◆◇
同時刻、都議会議事堂前にて五戦騎が誇る巨魁――オブシディアンが身の丈ほどもある大剣・アダマンタインを地面に叩きつけ震動と衝撃波によって周囲の自衛隊員を一掃していた。
その威力は地面のコンクリートなど紙や薄皮のように破壊して亀裂を走らせたほど。飛びかかってきた自衛隊員も左の豪腕から繰り出された強力なパンチで仕留めて地面に穴を開けた。
「はぁ……こ、こいつバケモノか!?」
「甘い、甘い。警察が自信満々でこしらえた精鋭部隊とやらもこの程度か」
「い、いぎいいいいい――――ッ!!」
「死ねィ!!」
アダマンタインの一振りはその大きさゆえに地面や壁もえぐるほどの突風と衝撃波を起こし、オブシディアンの足下に群がる自衛隊員をすべてなぎ払った。
「もはやここの制圧も時間の問題だな!」
◇◆◇◆◇◆◇
時同じくして第二庁舎内――。その中心でマーガレット率いる部隊と自衛隊が交戦中だ。魔術や手品のように変幻自在なマーガレットの動きに自衛隊は翻弄されるばかり。どちらが負けるかは、既に両者の目には見えていた――。
「超ウザッ。あんたたちしつこすぎない? ワタシ、しつこい人は嫌いなんだよネ」
「こ、このガキ……! さっきから我らをナメくさりやがって……もはや女とも子どもとも思わん!」
「殺せ! 殺さずとも生け捕りにしてやるッ!」
「今更そう思うの遅すぎだっつーの」
逆上した自衛隊の兵士たちが一斉に襲いかかった。マーガレットは彼らを鼻で笑いながら速やかに裾からトランプカードを取り出して並べ、周囲に旋風を起こしてそれをばらまくように投げる。
「あんたたちは戦い始めたときからもう引いてるんだよ! 死のカードと敗北のカードをねッ!」
「ぐわ~~~~っ!!」
破壊エネルギーが込められたトランプ・カードが床や壁、自衛隊員のアーマーに刺さり一斉に爆発を起こす!
その中をマーガレットは華麗に舞った。ひるがえった黒マントが華麗さを三割増しで引き立てている。
「エヘヘッ……あんたたちの上司はハッタリかましていたみたいだけど、飛んで火に入る夏の虫はそっちのほうだったのよ!」
着地したマーガレットは口元を綻ばせ、手にしたステッキ――『ファンタジスタ』の先端から光の刃を展開。自身の身長を優に超えるほどの長さであった。
それを勢い良く振り回して周囲を取り囲む自衛隊員を、あっさりと殲滅。燃え盛る炎の中に彼女は立っていた。
「ま……まずいぞ……魚沼隊長に報告せねば」
第二庁舎に配備されていた自衛隊員は残りわずかとなってしまった。あるひとりの兵士が、上官である魚沼へ連絡を取り救援を要請しようとした、その瞬間――。心地よい笛の音色が彼らの耳に入ってきた。
「? なんだ、この音は?」
「癒される……」
それは天使や精霊の歌声か? 笛の音を聴いた自衛隊員にはこの世のものとは思えぬほどの安らぎを与えられた。刹那、その笛を吹いていた者が姿を現す――。
水色の髪。赤みがかったピンク色の、ミサゴを模した形状のエンドテクター。その手には笛――フルートが握られ口に添えられている。何よりルックスもイケメンで、耽美な雰囲気な男だ。
しかし穏やかそうなその顔の裏には明確な殺意が秘められていた。眠ったことを確認すると、その男はフルートに仕込んでいた剣を抜き――目にも留まらぬ速さで眠りについた兵士たちを切り捨てた。
「……欲望にギラついた愚かな政府の犬のいいように操られた哀れな子羊たちよ。安らかに眠るがいい――」
「お見事♪ さすが、【深き眠りに誘う魔笛奏者】シベリウスの奏でるミュージックは一級品だね」
その男、シベリウスは喜び称賛するマーガレットへ一礼した。
◇◆◇◆◇◆◇
場所は変わり、新宿都庁付近で秘密裏に停まっていた大型トレーラー内。都庁防衛作戦の戦況を見ていた村上をはじめとするシェイド対策課の面々はは予想通りの結果になってしまった現実と、やはり自分たちだけの力では何も出来ず東條健たちに頼らなければならないという残酷な事実を前に頭を抱えていた。
「……やはり筒井管理官のやり方ではダメだった。あのオッサンがヤツらのことをろくに調べもせずに戦力をテキトーに集めたから、不要な犠牲を出してしまった……」
「心配いりませんよ。そのために僕たちを呼んだんでしょ?」
村上が振り返った先には――筒井が結成した合同統一部隊とデミスの使徒が戦闘している間に彼が呼び寄せた東條健、葛城あずみ、不破ライ、市村正史の四名が立っていた。その存在が失意の村上たちを励ました。
「これ以上犠牲を出さないためにも僕たち……全力を尽くしてデミスの使徒の暴虐非道を阻止してみせます!」
「先に散っていった人たちの思いを無駄にはしませんわ」
「オレたちがついてる限り、お前らは負けたりなんかしねえよ」
「あんたらはここまでよう頑張った。こっからはもうわしらに任しとき!」
「君たち……!」
感銘を受けるあまり村上の目から、ひと粒だけ涙が流れた。それを拭いた村上は、近くで見守っていた白峯とアイコンタクトを交わす。ここぞというときのために開発した『アレ』を出す時が来たのだ。
白峯はアタッシュケースから携帯化に成功した『ソレ』を四人分手にとってから、健たち四人に投げ渡す。試作品といえど、使わないに越したことはない。
「ちゅうもーく! 私が東條くんのエンペラーアーマーを元に研究を進めていた――パワードテクターの試作品よ。」
「マジ!? こ、これがですか!?」
「マジなの! 説明している時間はあまりないわ、そうと決まれば今すぐ装着・変身するのよ! 掛け声は――」
健たちが驚く暇もなく白峯が説明を進め、息継ぎを行う。そして白峯の声を合図に一斉にこう叫ぶのであった。
「「「「「超装!」」」」」
四人の若き戦士たちの手に握られたパワードテクターのクレストが展開され、携帯化されていた強化装甲は本来の姿となって装着されていく!
そのうち、健のものは装着される過程で白き光のオーブと合体――紅白を基調とし金で彩られた装甲が光を放つ! これでもまだ試作段階だというのだから、白峯とばりという女の技術力は群を抜いて優れている。
「うわぁ……すごい! この着心地、このルックス、この装備……まるで正義のスーパヒーローになれちゃったみたいじゃあないか!」
「健さんがスーパヒーローなら、わたくしはスーパーヒロインだわ! 子どもの頃密かに憧れていたのよ!」
「こいつはいい! 希望とヤル気とみんなの思いが伝わってくるようだぜ。警察官やっててよかった!」
「白峯さん前以上に腕上げたんちゃう? こないだ着せてもうたバトルスーツよりも、ごっつかっこええわ!」
バイザー越しに自分の手のひらや足下などを見ながら健たちは超速理解――変身したその姿に驚きを隠せないでいた。
「も~東條くんてば、謙遜しないの。あなたたちは実際そうなんだからさ」
「はい! 期待に応えられるように戦ってきます! ……必ず生きて帰ってきてみせます」
「右に同じです」
「右に同じだぜ!」
「わしもや!」
デミスの使徒の侵攻を食い止め、村上たちの前に生きて戻るという決意を胸に四人のヒーローたちはトレーラーから出ようとする――。しかし、それを止めるように神田が現れた。ひとりの男を伴って。
「待ちな、ボウヤたち! この戦いオレも行かせてもらうよ! ヤツらには、きれいごとを並べるだけじゃあ勝てねえからな!」
「久しぶりやなあ! 伊東英機や! 悪いヤツらをやっつけるだけお仕事ってのも悪うないな!」
神田ニシキと――その隣にいる緑がかった黒い髪の男性は、伊東英機。特殊な液体金属を操る技能を持った流れの用心棒エスパーであり、健たちとは一度交戦したことがあった。
「ニシキおじさん! 伊東さん! でも、きれいごとは余計……」
「あー、わりいわりい。けどな、戦いに行く前に先に言わせてくれないか。オレが『光の矢』の一員として、8年前の光魔大戦に参加したのは知ってるよな?」
「……はい」
「オレはその大戦の最中、必死に戦った。その過程で敵も味方も、多くの戦士が命を落とした。オレの手で命を奪われたものも決して、少なくはない。たとえ相手が女や子どもであっても、だ。……過酷な戦いだった」
健たちの前で自身の体験談を語りながら、神田は光魔大戦のときのことを思い出す。己の正義のため、あるいはエゴのため、互いにぶつかりあい多くの血が流れたあの戦いを――。
「オレも明雄も仲間たちと一緒に、自分が生きるために、お前たちが平和に暮らせる時代を作るために敵を殺って殺って殺り続けた。自分自身の手を嫌気が差すくらいに血で汚した……。殺った相手の血で手が汚れるのはオレたちだけでいい」
「……戦争してましたもんね……」
「たとえオレが誰かに殺られようと、お前たちはオレのために敵を殺り返さなくてもいい。オレが敵に殺されるということはなるべくしてなることだから……な。オレより若いヤツらのきれいな手が血で汚れるのだけは、絶対にさせたくないんだ」
「ニシキおじさん……」
「だからオレは、デミスの使徒が唱えるドス黒え終末思想なんぞよりも、未来ある若者の言うきれいごとを信じてみたいと思っている!」
犠牲を払いながらも平和な時代を築いてきた戦士として、影のある顔で残酷な真実を語りながらも、神田は健たちのことを信じていた。血まみれになってでも戦い抜いてきた神田には、彼らのことが輝いて見えていたのだ。
性格に違いはあれど志や穢れ無き心を持っていたことは同じ――自分の命に換えてでも守らねば、と、そう考えていたのだ。神田ニシキという英雄は。善悪を分ける境界である灰色の中に立っていた彼は今、限りなき白の中――正義の名の下に立っていた。
「なにグズグズしてんだ? 行くぞ、デミスの使徒をとっちめてやろうや!」
「……はいッ! みんな行こう!」
「ええ!」
見よ、この輝かしいヒーローたちの勇姿を。彼らが戦場に急行することにより、果たして戦況はどう変化していくのだろう? 勝利の女神はどちらに微笑むのか?
◇◆◇◆◇◆
そして、第一庁舎上空を飛ぶVTOL。その甲板にロギアは佇んでいた。サポーターアイに搭載されたレーダーが彼に、健たちが戦場に駆けつけたことを知らせた。
「フッ……また増援か。まあいいさ、虫ケラどもが何匹湧いてこようが、このロギア様の前ではクソカスと同じよ」
これまでに何人もデミスのエスパーを打ち倒してきた最強の増援が現れようとも彼は余裕を崩すどころか冷笑して見せている。――もっとも、その余裕は彼だけではなくほかの五戦騎にも表れているが。
「ロギア軍団の諸君聞こえるか? 君らのリーダーのロギアだ。東條健は俺が殺す。ザコどもはガリアーノとマスプロイド部隊の諸君にまかせる。空から鉄の雨でも爆撃でも、何でもくれてやれ」
インカムも兼ねたサポーターアイを通じて、ロギアは部下たちへ指令を下す。ロギアがVTOLから見下ろしている先は第一庁舎屋上――であった。




