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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第20章 果てしなき激闘の軌跡
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EPISODE383:逆転せよ健!


 対峙して早々にミューラーが拳を振り下ろす、健と市村は横っ飛びや宙返りで回避――そのうち、市村は回避しながらビームを撃ってミューラーを攻撃した。

 未だにミューラーの能力による効果が解けていない不破は焦りを感じ歯ぎしりする。――あのニルバーナとかいう敵の女はフェミニストふたりではとても討てない。討てるとすればオレかあずみちゃんのどちらかしかいない。

 アルヴィーと糸居まり子が――ミューラーかニルバーナ、どちらのほうへ攻撃を仕掛けるかも問題だ。

 しかし今の自分はミューラーの能力により――いや、何を臆病になっている? 今は動け! たとえ筋肉や骨を硬化され軟化させられていても、何かしら行動を起こすべきなのだ!

 不破は力を振り絞って立ち上がり、イクスランサーに雷をまとわせてニルバーナへと突撃、肉薄してニルバーナと葛城を驚かせた。


「ビックリしたよ、あんたやるねえ……。けど不利な状況に変わりはないよ!」

「ゴフゥ!?」


 不破の顔面に、ニルバーナが棍を叩き付けて突き飛ばした! 葛城はすぐさま跳んでかけつける。

 もしかすればわたくしが花の香りで癒せば、不破さんの体に起きた異変を治せるかもしれない。確率は極めて低いかもしれない。そもそも無意味なことかもしれない。それでもわたくしは――やるわ。

 葛城はわずかな可能性に賭けて――左手を天にかざした。傷を回復させる癒しの芳香――アロマヒーリングを発動させ、不破の硬化または軟化させられた部位を治そうと試みたのだ。


「そうはいかん、ストラングラービームッ!」


 しかしミューラーがそれを見逃すはずはなく――なんと、健を払いのけてまでロープ状の光線を葛城に放つ。光線を硬化させてしめつけた。


「葛城さん!?」

「フンッ!」


 ミューラーが笑って健をパンチし腹部に蹴りを叩き込む。転がるもすぐに起き上がり斬りかかる、次にミューラーは「待ってました!」と言わんばかりに手を光らせた。


「待て健、そやつの手にふれるな!」

「えっ!?」


 危機を察知したアルヴィーが健へ叫んだ、しかし遅かった。ミューラーが健の左腕をつかんだことにより左腕の筋肉が硬化し――防御を行うごとに痛みを伴うようになった。


「左腕の筋肉が硬い!? そうか……不破さんはこれに!」

「食らえッ」


 痛みをこらえて片目をつむった健はミューラーのローキックを宙返りで回避。両者、距離を置く。と、真顔になったミューラーのサポーターアイが光り出して――なにかを分析しはじめた。


(この距離なら範囲は直線上がベストかな――よぉ〜し)

「隙ありありありありッ」


 今がチャンスか、と、健が直進する。次の瞬間にミューラーはしたり顔をして地面にふれて――健の足下が唐突にぬかるみとなり、下へ沈んだ!


「なにぃ! 地面が急に泥沼のようになって東條がハマったぞ!?」

「驚くことがあるか? このミューラーにとってはこのくらい普通だ。生物の筋肉や骨だけでなく、無機物もやわらかくしたり硬くしたり出来るのだからな!」


 驚く不破を煽り、泥沼と化した地面にハマった健を見下しながらミューラーが語る。ミューラーの能力はリッキィのミキサーハンドと似ているものの範囲は狭い。しかしそれを逆手に取って攻撃可能な範囲を絞ることで、器用に立ち回れるようになったのである。


「ミューラーッ!」

「アッハハハハハーッ! 虫ケラのようにいたぶってあげよう! ソォリャッ!」


 ミューラーはストラングラービームで健を捕まえると泥沼から引きずり出し、岩盤や地面へ何度もぶつけ、更にパンチやキックなどで彼をいたぶり悦に入った。


「ッ……! このままではわたくしたちは全滅してしまう。どうにかこの逆境を乗り越えなくては」

「フフ……万策尽きたって顔してるじゃないか」

「ニルバーナッ」


 ニルバーナが棍を担いで葛城に近寄り、先端を喉にあてがう。言うまでもなく葛城を殺す気だ。


「まあそうピリピリすんな。楽になりな」


 そう言ってニルバーナが振りかぶった棍を、葛城に当たる寸前でまり子が止めに入った。棍を振り払いニルバーナを平手打ちで怯ませると葛城を両手に抱えてジャンプ。しっぺで葛城をしめつけていた縄をほどいた。安堵の息を吐き葛城はまり子にほほえみかけた。


「ありがとうまり子さん……」

「いいわよお礼なんて」


 同じタイミングでアルヴィーがミューラーをドロップキックで蹴っ飛ばして健の窮地を救った。


「やれやれ、まったくだらしのない!」

「あ……アルヴィー」

「それより健、やつにさわられたとき……やつの手を見たか?」

「手がどうかしたの? ……ハッ!」


 辛辣な顔をするアルヴィーから確認をとられた健は、なにかを察した顔になり立ち上がる。


「察したようだの。ミューラーは物質を軟化・硬化させる際に手を光らせていた、もしかしたら――あえて手を攻撃すればエネルギーが逆流し元に戻るかもしれぬ」

「となれば……話は早い!」

「落ち着け、あくまでそういう可能性も考えられるだけだぞ」

「それを現実にしろってことでしょ!?」

「ふっ……好きにせい」


 逆転の発想を語ったアルヴィーは腕を組みながら、飛び出していった健を止めようとしたがそれ以上は止めなかった。彼ならこれまでのように不可能を可能に変えそうだったからだ。


「話はまとまったかね?」

「ああ、お前をぶっ飛ばして解決するって方向にね!」

「――ナンセンス!」


 挑発されたミューラーは狂的に笑いつつ、両手を光らせ健をつかむ準備に入った。やや慢心している様子だ。


「今度はふにゃふにゃにしてやろうか、日本のサル(イエローモンキー)め!」

「なめるなッ! テエエェェイッ!!」


 さりげなく氷のオーブをセットしていた健は助走をつけてからのジャンプ斬りと空中回転斬りをミューラーへお見舞い。左腕の痛みを気にせず思いきり剣を叩きつけたことにより両腕のパーツを破壊することに成功した。装甲の下のインナー部分が露となり、当然ミューラーは驚愕した。同時にエネルギーが逆流して不破の足や腕が治り、健の左腕の筋肉も元に戻った。


「左腕と右腕のパーツが!? きさまッ、何が狙いだ!」

「――こういうことさッ!!」


 苛立つミューラーが健を指差す。刹那、健の背後から不破が飛びかかりミューラーを一閃、健は彼とアルヴィーにアイコンタクトをかわして、緑川を助けに向かった。


「く……エネルギーが逆流してこのありさまか!」

「あたぼうよ! オラッ!」


 不破はミューラーをなぎはらった。駆け付けた市村と交代して、彼はニルバーナと交戦中の葛城とまり子に加勢する。笑う市村はワイルドにビームを連射し、ミューラーを追い詰めていく。


「タアッ! もう大丈夫だ」

「うう……すまない、東條健」

「さあ、戻るぞ」


 その間にガケ上に移動した健とアルヴィーは、しめつけられていた緑川を解放。彼と一緒にガケを下った。


「ツケの領収書じゃあ!」

「おああーーッ」

「このあずみ容赦も遠慮もしません!」

「右に同じッ!」

「うあぁああああ〜〜ッ」


 市村や葛城、まり子らはそれぞれミューラーとニルバーナに渾身の一撃をかまして大ダメージを与えた。のけぞったふたりを弱いと――そう思うのは早計だ。

 彼らがふたりに対して全力で渾身の一撃を放たなければ逆に押し負けていたからである。いかなる敵も侮ってはならない。獅子が全力でウサギを狩るのと同じことだ。そしてミューラーとニルバーナは同じタイミングで同じ位置に転倒した。


「この、下等人種めら……!」

「トドメと行こうぜ!」

「引きましょう不破さん」

「なにい!!」


 健が不破を引き止めた。かくいう彼も病み上がりに加え先ほど強敵カールトンを退けたゆえか、体調と姿勢を崩しかけていた。


「今の僕らの目的は貴様らに勝つことじゃない、緑川和人を救出することだ!」

「そ……そらそうだな。このまま戦っても勝てる保証は正直……」

「デミスのエスパー! これに懲りたら罪を償うんだな!」

「逃げる気かい……!」

「撤退ッ」


 健は氷の長剣を振るい吹雪に身を隠し――仲間たちとともに撤退した。敵を倒すべきか緑川を連れ帰るか、少し迷ったが――結局後者を選んだのである。


「くっ……」


 舌打ちしつつミューラーはサポーターアイの通信機能をオンにして上司である――ロギアにつないだ。ニルバーナはそれを複雑そうに見ている。


「ロギア様、申し訳ございません。東條健一行に逃げられてしまいました――ただちに帰還いたします」


 通信を終えて、ふたりとも苦い顔をしながらそそくさと帰還した。


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