表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第20章 果てしなき激闘の軌跡
383/394

EPISODE381:逆境は乗り越えてこそ

 健が病院から抜け出してもなお、戦況は未だにミューラーたちにとって有利なままだ。不破は無惨にも踏みにじられ、葛城と市村もまた苦戦を強いられていた。拘束された緑川はそれを見ていることしか出来ない。結局自分は、エスパーの前では非力でしかないのか――と、悲観的になるほどに。


「くっくっくっ……」

「あ……ぐ……ぐッ」


 愉悦に浸りながらミューラーは、不破の胸をグリグリと踏みにじっている。


「すぐにでも地獄へ送ってやろうと思ったがそれでは個人的におもしろくないのでね。もっともっと痛め付けてあげようか――」

「て……てめえ……」

「フン!」


 不破を思いきり踏んで苦痛を与えると、ミューラーは彼の腹を蹴飛ばした。

 ニルバーナやカールトンを無視してでも救援に向かおうと走る葛城に市村、しかし相手がそうすんなり通してくれるわけもなく、ふたりの前に立ちはだかった。


「待ちな。あんたたちの相手はあたしらだって言ったろう」

「ネギしょってやってきたカモをみすみす逃がすほどオレ様はマヌケじゃねえんだな。フヘヘヘ……」


 冷酷にも武器を振りかざすシルバークラスのふたり、だが、葛城と市村はこいつらと戦っている場合ではない。不破を救わねばならないのだから。


「フッ! 下等人種が無駄なことを〜〜ッ!」


 不敵に笑うミューラーの手から、ムチ状の光線――ストラングラービームが放たれ葛城と市村を攻撃。しめつけて身動きを取れなくした。


「はッ!? あ、あずみちゃん、市村ッ」

「死ね不破……そもそも下等人種である日本人がエスパーになるなどあってはならないことなのだッ」


 ほくそ笑むミューラーが葛城と市村を拘束したまま、不破をグリグリと踏みにじる。


「ヘッヘッヘ。お前らも終わったな」

「終わったね」


 ミューラーに続いてカールトンとニルバーナも、ふたりの正義のエスパーにトドメを刺さんと武器を振り上げ憎らしげに笑う。

 ――何者かが乱入してミューラーを、横から蹴っ飛ばすまでのことだった。二人組の女性で片方は青みがかった紫のくせっ毛を足元まで伸ばしており、もう片方は白銀色の髪を伸ばしたセクシーな大人だ。

 いつもの服装に色違いの仮面とマフラーを加えて、マフラーがなびく方向を左右対称にするだけのお手軽なそのコスチューム。もっとも彼女らを知るものからしたら正体はバレバレもいいところだが。


「な……なんだァ!?」

「ズバッと参上ズバッと怪傑(・・)!」

「人呼んで、さすらいの――……」


 急に現れてまた急に名乗りを上げはじめて、無駄にポーズも凝っていて。本当になんなのだこいつらは!? カールトンらデミスの使徒も驚かざるを得ない。

 それは不破たちとて同じ。だがなんとなく「彼女たちなら安心だ」という頼もしさと信頼感を覚え、自然とその正体もわかった。


「アルヴィー、糸居まり子! 来てくれたのか……」

「――私たち謎の人が来たからにはもう大丈夫だ!」


 希望と活路を見出だした不破から名前を呼ばれたものの、あくまで謎の人としてふるまうアルヴィーとまり子は不破の言葉をさえぎるように呼びかけて彼らを安心させる。ただ、不破は無視されたことがシャクだったか眉をしかめた。


「ウムぅ〜〜っ、変なのが来たと思ったら……」


 カールトンやニルバーナが引いている中でミューラーは眉をしかめ、乾電池のようなカプセルを取り出してそれを投げた。カプセルの中から機械の兵隊――マスプロイドたちが飛び出し、隊長格・マスコマンダーを先頭に隊列を成した。マスプロイド部隊はアルヴィーとまり子の眼前に迫り、既に臨戦態勢へ入っている。


「お前たちは、そいつらにでも遊んでもらうがいい!」

「ソウイウコトダ! タップリ 遊バシテ モラッチャウゼ!」


 ミューラーはマスプロイド部隊にアルヴィーたちの相手を任せ、拘束した緑川のもとへ跳躍。これほどの数だ、気を抜いてはならぬ――と、アルヴィーとまり子の表情が真剣になる。


「待ちなさいミューラー!」

「お〜っとッ! チミたちの相手はオレ様と……」

「あたしだよ!」


 ミューラーの追撃に向かう葛城と市村の行く手はまたもカールトンとニルバーナに阻まれた。

 彼らからしたらマスプロイドたちが謎の人の相手をしてくれるため余計な労力をかけずに済む。とくにカールトンは謎の人をなめきっており、あの程度のカスはマスプロイドでも十分――そう思い込んでいた。


「邪魔すんなやハイエナ!」

「ちがうねッ、オレのエンドテクターはジャッカルだ!」

「世の中そう都合よく行くようには出来ていないのさ、わかるだろ?」

「そんな逆境でも! どうにかするのがわたくしたち!」

「粋がってられるのもそこまでだあ! チョーウ!!」


 問答しあいながら戦う、善と悪のエスパー。カールトンは市村を弾き飛ばしてブーメランをひとつ、葛城へ投げた。気付いた緑川や市村が「まずい!」「よけろ!」と声をかけ――るまでもなく、葛城は緊急で回避。しかし鋭いブーメランがすねをかすり苦悶する。カールトンとニルバーナはにやついた。


「!」

「あずみちゃん!?」

「へっ! よそ見してっからそうなんだよ。バーカ!!」

「てめーッ!」


 卑劣なカールトンに怒る市村が彼に対し、容赦ない射撃とサマーソルトを叩き込む。普段ならあまり使わないであろうローキックまで叩き込んだ。


「あんたたちも粘るねえ! けどさっさとあきらめたらどうなんだい?」

「いいえ、そう簡単にあきらめてなるもんですか!」

(チィーッ! 本来ならば足がちぎれていたものを、あの女ピンピンしてやがる! 生意気だあ!)


 ニルバーナの棍の先端からいびつな黒い弾が無数に放たれる、葛城は盾で身を守り最後の一発を斬って打ち消した。

 市村から攻撃を受けたも起き上がったカールトンは、不意打ちとはいえ相手の傷が浅く大してダメージを受けていなかったことから腹を立て舌打ち。発砲しながら向かってきた市村に殴りかかる。


「おいお前! ああいう女はさんざんなぶって泣かせるに限るだろ?」

「ハア? なぶられて泣きを見るんは、お前のほうや!」

「ぎぇ゛い゛」


 嗜虐的なカールトンの言葉は、女好きである市村の怒りを買い再びビームや打撃のラッシュをかけられる。吹っ飛ばされるも体勢を立て直すと唾を吐き捨て、眉をしかめた。


「へっ、ガキどもが。コケにしやがって……」


 やがて彼は、ミューラーにより足の筋肉を硬化させられ立ちたくても立てない不破に目をちらつかせ飛び跳ねた。そして不破を見せつけるように持ち上げ、下劣に笑う。


「く……離せカールトン! その汚ねえ手をどけろッ!」

「HEEEEEEEEEY!! オメーら大切なこと忘れてなーい?」

「せや、不破!」

「ハッハッハッハーイ!」


 歯ぎしりしたり笑ったりで忙しげなカールトンは不破を揺さぶって岩にぶつけるなどして、死体にムチ打つような残酷な行為を繰り返す。


「権力の忠犬ポリ公だけじゃねーゾォ? お前らを助けに来た変な女たちも今ごろは――」


 まだ勝ってすらいないのに勝ち誇っているカールトンを、ニルバーナは肝を冷やしながら指差す。しかも緑川を拘束した上不破をなぶって悦に入っていたミューラーもだ。緊迫していたはずの市村や葛城の顔もなぜか口元が緩んでいる。


「お……おい、お前らどうしたってんだよ」


 何があったかわからないカールトンの後頭部に、コツン! と、何かが投げつけられ地べたに落ちた。破壊されたとおぼしきマスコマンダーの頭だ。


「変な女が……」

「なんだって?」

「う……さ、さすがにこれは話し合ったよさそうじゃねーか?」

「カールトン、あんたまたいつものクセ(・・)かい?」


 マスプロイドたちを全滅させた謎の二人組が戻ってきた。先ほどまで強気で好戦的だったカールトンが急に、震え出すくらいには凄みを利かせて。これにはニルバーナやミューラーも苦笑い。


「ま、まさか、オレはただ武者震いしてるだけよ」


 苦し紛れにカールトンが言う。が、直後――彼は「ひぃ!?」と怯えざるを得ない状況に置かれた。カールトンが握っていたブーメランが幾重にも重なった衝撃波により破壊され、更にそのショックで不破を手放してしまったのだ。

 衝撃波を放ったものは――、不破や葛城たちを笑顔にし、カールトンらに緊迫した空気をもたらした。


「そこまでだ!!」


 ――そう、病院から抜け出してきた東條健だ。どうして仲間たちが戦っている場所がわかったのか? 詳細はあえて省く。


……以前の更新からだいぶ空きましたよね^^;

ごめんなさい^^;

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ