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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第20章 果てしなき激闘の軌跡
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EPISODE380:強襲・シルバーの脅威


 緑川を救出しベルナールとドブロクを捕らえた一同は、廃工場と雑木林のすぐ近くにあった閑散としたスクラップ置き場に場所を移した。


「いったい誰の命令で緑川和人を襲った! 言え!」

「い、嫌だね! そんなこと言ったら殺されちまうよおーっ!」


 怒る不破から尋問を受けるも、ベルナールとドブロクは上司に対する恐怖心から口を割ろうともしない。こいつらに聞いても無駄なら、と、不破は緑川の顔に視線を向ける。


「緑川。あんた、なぜこいつらに?」

「それは……」

「教えてください。デミスの使徒がなぜあなたをターゲットにしたのか、わたくしたちも知っておきたいんです」

「でも、しかし……」


 不破と葛城から狙われた理由を訊ねられるも緑川は焦りが表に出た顔をして躊躇する。彼の肩をそっと、アルヴィーが叩いた。優しく微笑んでいる、そばにくっついているまり子も一緒だ。


「話せない事情があるのだろう。そういう風に見えたが」

「……いいのか? 聞いたら最後、今度こそあんたらの命は……」

「なに、そうなれば意地でも生き延びてみせよう」

「それにわたしたち強いし、そんなに気を使ってくれなくてもいいから……ね?」


 アルヴィーとまり子は緑川にそう言っている。――渋っている場合ではなさそうだ、と、判断を下した彼は打ち明ける覚悟を決めた。


「……ハハッ! しょうがないや、全部話すよ」

「かたじけない」


 笑みをこぼした緑川にアルヴィーが頭を下げる、不破やまり子らも感謝を込め頭を下げた。


「アルビノドラグーン、あんたと東條健には前、こんなこと話したよな。奈良県警に出頭した俺は、自分でも理由がわからないうちに釈放が決まったって」

「うむ」

「……すまない、あれはウソだったんだ(・・・・・・・)

「なに? どういうことだ」

「あんた東條と(あね)さんにウソついとったんか!? 早よホンマのこと言えやッ!」

「ワッ!?」


 緑川の言葉を疑問に思うアルヴィー。冷静な彼女に対し、苛立った市村は緑川の胸ぐらを掴んで彼を罵倒する。


「い、市村落ち着けッ」

「今は殴り合いなんてしている場合じゃありませんわ!」

「んんんんんんんん゛ーーッ」


 不破と葛城に取り押さえられ市村が手を離す。ヒヤヒヤしていたアルヴィーとまり子は、胸をなで下ろした。


「……続けていいかい? 当時、あるひとりの男が奈良県警に金を積み立てて俺を釈放させた。そいつの仲間に入ることを条件に。だが俺は断った。そいつは俺に猶予を与えた――」

「断って大丈夫だったのかの?」

「入らないなら入らないならで考える、とか言って余裕かましてたよ。その男の名は、デミスの使徒の――」



「それ以上おしゃべりを続けてもらっては困るな!」

「「「「「「!?」」」」」」


 突如現れた乱入者によって緑川が語る真相は途中で遮断され、緑川はロープ状の光線にしめつけられ身柄を拘束された。崖の上には緑川を捕らえた乱入者――デミスの使徒のエスパーがふたり。更にもうひとり、何者かが一同に複数のブーメランを投げつけ奇襲する。不破たちは間一髪身を守った。


「貴様ら新手か!」

「ハーイ、『光の矢』の皆さん! もうひとりいますよーん」


 ブーメランを投げた、ジャッカルを彷彿させる黒とシルバーのエンドテクターをまとう男――カールトンもその場に居合わせた。廃車となったバスの上に座ってにやついている。


「シルバークラス、『サバンナの遊撃手』カールトン!」

「シルバークラス、『矛盾の魔手』ミューラー!」

「シルバークラス、『黄泉の国の死霊使い』ニルバーナ!」


 余裕綽々でふざけた口調でカールトンが名乗りを上げると同時に、緑川を捕らえたふたりも名乗りを上げる。

 緑川を拘束したほう――アンモナイトを彷彿させる黄色とシルバーを基調とするエンドテクターをまとった赤錆色の髪に紫色のサングラスをかけた細身の青年がミューラーで、

 先端が音叉のような形状になっている棍を持ち、ハスの花を模した緑とシルバーを基調としたエンドテクターをまとっている黄土色の髪で目付きの悪い女性がニルバーナだ。

 三名ともベルトのバックルは銀色。本人たちが口にしたようにシルバークラスに位置する強豪だ。


「行きがけの駄賃だ。あんたたちを――」

「「「抹殺してやる!!」」」


 ニルバーナがそう言ったのを皮切りに三人のシルバークラスは、不破たちに襲いかかった。緑川は拘束されて放置されたままだ。


「うらああああっ! フヘヘヘッ!」

「おわっ!?」


 カールトンが両腕のパーツからブーメランを外し、投げつける! 市村が銃撃しても打ち返せず、それは市村の体にクリーンヒットした!


「アッハッハッハッハ!」

「ッ! この熟練した腕前、先ほどの連中とは比べ物にならない!」


 ニルバーナが激しく振り回した棍が葛城に打ち付けられ、服が破けるとともに空に放り出された。しかし、体勢を立て直した葛城は無事に着地。相手を決して侮ってはならないことを改めて確信する。ついでに一連の行動で胸に実った果実が揺れた。


「『軟化(ソフテニング)』!」

「ううっ!?」


 手を発光させながらミューラーが不破の腕をつかむ、急激に不破の腕は柔らかくなり力が入らなくなっていく。


「ぬふふふ、私は物体を軟化あるいは――硬化させることが出来るのだ」

「なんだと……!」

「そう、このようになッ!」

「あッ足がぁーーっ!?」


 不敵に笑うミューラーが不破の足をつかんだ、足の筋肉と骨が硬化ししめつけられるような痛みが走る。


硬化(ハーディニング)だッ! これで君は攻撃と防御に力が入らずろくに走ることもままならん」

「き、貴様ぁ……きたねえぞ……!」

「フッ、いかなる手段を使おうが勝ったものが正義。強ければいいのさ」

「うぅぅあッ!?」


 ミューラーは残忍にも不破を張り倒し、踏みつける。


「だはははは! す、すげえ! あのお三方が来てくれたからには俺たちゃ大逆転だあ!」

「ゲヒヒヒヒヒヒ、助かったよなあ!」


 手錠で繋がれたままのベルナールとドブロクはそう思ってすっかり安心していた。次の瞬間、市村を廃車に殴り飛ばしたカールトンからこんな言葉を投げかけられるまでは。


「助かっただあ? バーカ、お前らみてえな踏みつぶす価値もねえ虫けらに用なんざねぇんだよ」

「え……?」

「不破ライたちが忘れたトドメは、あたしらが刺してやるよ」

「ゲヒッ? ご、ご冗談を……」


 ニルバーナまでもが冷酷な言葉を告げた次の瞬間には、ドブロクはカールトンが力を溜めてから投げたブーメランで脳天からかち割られ爆死。


「お前も逝っちまいな!」

「なんでこうなるのおおおおおおおげええええッ!!」


 ベルナールは吹っ飛ばされ、更に彼もニルバーナが放った棍によって生気を吸い取られ黒いミイラと化して消滅してしまう。敵はおろか仲間さえも平然と殺すその冷酷さに不破や葛城に市村、アルヴィーとまり子は衝撃を受け怒りを覚えた。


「ナーッハッハッハッ! 役に立たねえカスどもを殺せてスカッとしたぜ!」

「カールトンッ! 貴様、それでも人間か!!」

「死体にムチ打つようなマネしやがって! ぜってえ許さねえ!」

「なんとでも言いな。カスどもをブチ殺すのはサイコーに気持ちがいいんでさあ! フヘヘヘヘヘッ!」

「そればっかりはあんたに同意するよカールトン」

「さて……」


 アルヴィーと不破から批難されたように、ニルバーナとミューラーには血も涙もない。そのふたりからもあまりいい印象を持たれていないカールトンはもっと残酷で同情のしようがない。


「次はおめーらがおねんねする番でちゅよォー!」


 ベルナールらを始末したことによりカールトンら三人のデミスのエスパーが改めて、ターゲットを不破たちに移した。



 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽



「東條さーん、入りますよー」


 その頃の島崎総合病院、健の病室に女性看護士が入ってきた。顔からして優しそうだ。


「あれから調子はいかがでしょうかー。……あれれ?」


 健の様子を見に来たようであるが、肝心の健の姿はなく――ベッドが乱されていた。


「東條さん? 東條さーん? どこ行っちゃったのかしら……」


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