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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第19章 終焉(デミス)への序曲
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EPISODE373:神出鬼没・移り行くトランスポーター


 翌日。デミスの使徒本拠地、司令室にて、マリエルやその配下、ロギアと配下のものたちが待機していた。なお、ダークマスターは自身の研究室(ラボ)に行っていて席を空けている。

 そこに司令室の扉を開けて、伝令の――マスコマンダーが駆け込みマリエルたちの前で膝を突いた。


「申シ上ゲマス! 昨日(さくじつ)、榊様ガ石河様トモニ しぇいど対策課・関西支部ヲ 壊滅サセマシタ!」


 伝令から戦況の報告を受けてマリエルが口笛を吹いた。次に彼女とその部下たちは不敵に笑う。


「さすがは榊、このくらいの任務なら軽いものね」

「しかも神戸に行っていたリッキィのやつが時間を稼いでくれたものだから、そのぶん余裕を持って任務に励めたというわけだ。くわえて今回出向させた石河は俺好みのきわめて残忍なエスパー、そして榊は姐さんが絶大な信頼を置いている側近。これほどの布陣でうまくいかないわけが無い」

「ふふふ、そうね。あのふたりは強い」

「その点、シラーズはそれなりに優秀だったが女好きが祟って敗れた。まったく情けないヤツめ」

「それに相手が女だからって甘く見すぎていた。私ああいう男はタイプじゃないの」


 不敵に笑いながら存分に語らうマリエルとロギア、が――マリエルは伝令に対し冷たい視線を向ける。顔は笑ったままだ。


「ところで、不破ライ……彼もいたはずだけど、生死は確認してきたの?」

「ハッ、オソラク、関西支部びるノ 崩壊ニ巻キ込マレテ 死亡シタモノカト……」

「――まあ、いいわ。今回の目的は彼を倒すことじゃないから」


 伝令を静かに威圧して、マリエルは踵を返して腕を組み右手を口に添える。胸が豊満で形もきれいなためたくしあげられたし、挟まれた。ロギアをはじめ周りのものたちの視線が彼女に釘付けになったのは、何も不自然なことではない。


「少しでもいい結果を待っているわ」



 そう彼女は呟き、氷の微笑を浮かべた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇



 場所は変わり、警視庁は――すでにデミスの使徒に攻め込まれており、交戦が続いていた。

 状況は現在、物量でも質でもデミスの使徒が勝っており警察側にとって優勢とはいえない。


ファイア(撃て)!」

「うわあああああああっ」


 マスコマンダーに命じられるままマスプロイドたちが砲火、バトルスーツや盾にハンドガンやサブマシンガンなどで武装した戦闘班メンバーは押されている。

 そのうち防御体勢は崩され、戦闘班のうち一名は仰向けに倒れた状態でマスプロイドに胸にマシンガンを撃ち込まれ死んでしまった。戦闘班は撤退を余儀なくされるも、その過程で数名が命を落とした。


「! しまった。行き止まりだ」

「ま……まずい、このままでは……」

「ガー!」

「貴様ラハ、袋ノ ネズミダ。マトメテ殺シテヤル……」


 マスコマンダーがノイズ混じりの合成された声でしゃべりながら、こちらへやってくる。抵抗したところでこいつらには歯がたたない。もうダメだ、おしまいだ。殺られるしかないのか――。


「――サンダーストライク!」

「ナニイ! オワアアアアアアッ!?」


 戦闘班が生きることをあきらめかけたそのとき、何者かがマスプロイド部隊の背後から稲妻をまとって突進! ――瞬く間に爆散、全滅させた。


「不破隊長!」

「お前たち、大丈夫か!?」

「申し訳ありません、既に七、八人ほど殺されてしまって……」

「ッ……遅かったか」


 不破は唇を噛みしめ、仲間をまた守れなかった無念と悔しさを抑える。今はこうしている場合ではない――と、気持ちを切り替えて真剣で力強い顔になって息を吸い込んだ。


「ここは二手に分かれよう。残った五十人のうち二十五人はオレと一緒に来い、あとの二十五人はもしものときのため外のトレーラー付近で待機!」

「ハイッ!」

「……いいか、いくら相手が機械の兵隊といえども侮るな。ヤツらの攻撃で関西支部は全滅させられたからな」

「ハイ!」

「行くぞ!!」


 かくして不破たちはデミスの使徒の攻撃を阻止すべく決起、行動を開始した。



「不破さんが戦闘班と合流しました!」


 その頃、警視庁地下、シェイド対策課・司令室兼モニタールーム――。村上警視が、オペレーターのひとりにして黒いショートヘアーにくりっとした赤い瞳の婦警――宍戸小梅(ししど こうめ)から不破の現況を報告されていた。


「宍戸ちゃん、葦原は?」

「アッシーさんはバトルスーツを着て不破さんの指揮下に入っています!」

「そうか。この不利な状況だ。うまく、事が運んでくれるといいが……」

「私も、皆さんの健闘を祈っています」


 自分たちの身に変えてもここをなんとしてでも守り抜かねばならない。だが命まではヤツらにやれない。これ以上犠牲を出したくはない。関西支部の皆を失ったばかりだから――。

 ――つい昨日関西支部が壊滅させられたことを憂い、村上が表情を曇らせる。そうなってしまうのも仕方の無いことだった。デミスの使徒による警察への攻撃は物理的な意味だけでなく彼らの心にも、大打撃を与えていたのである。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 不破が来たからには敵なし、そう思い彼を先頭にマスプロイドたちを倒しながら戦闘班二十五名は警視庁・庁舎内を往く。

 犠牲は最小限に抑えなくてはならないし出すわけにもいかない。となれば、速やかにデミスの使徒を排除し侵攻を阻止するしかないのだ。


「榊、石河、どこだァ!?」

「ふっふっふっふ――そう、慌てずともいいではないか?」


 不破がいきり立ったそのとき、稲光が落ちるとともに藍色を基調としたエンドテクターをまとった(くだん)の女エスパー・榊が姿を現す。

 相変わらず不敵な笑みを浮かべていて、


「しかしこれは予想外だったよ。まさか、生きていたとはね――」

「うるさい……! 石河は、お前と一緒に関西支部のみんなをもてあそんだ石河はどこにいるッ!?」


 神経を逆なでされて怒る不破。――榊は口ではああ言っていたがさほども驚いてなどいなかった。

 そもそも榊は、シェイドたちの頂点に立っていた帝王カイザークロノスを倒したエスパーのひとりである不破があの程度で死ぬとは、これっぽっちも(・・・・・・・)思っていなかったのだ。

 くわえて、マリエルに次いで冷酷非情な彼女のことだ。不破を肉体的にも精神的にも痛め付けてから、殺してやろうと思っているのだろう。

 しかしマリエルが言っていたように、今回の作戦の目的はあくまでもシェイド対策課の殲滅。不破をまじめに相手してやるつもりも榊には無かった。


「ケーッケケケ! 誰か呼んだかあ?」

「ぐはっ!?」


 そして! 不破の背後から石河の声がするとともにブレイクフックが放たれ、戦闘班メンバーをなぎ倒した挙句不破を突き飛ばした。


「石河、お前はシェイド対策課の司令室に向かえ」

「ま、待て……誰が行かせるか!」


 榊と石河を止めようと立ち上がる不破だが無情にも、榊は石河に転送光線を発射。石河はシェイド対策課のモニタールームに転送された。――不破が一番、恐れていた事態だ。


「クッ! ヤツをいまどこへ飛ばした!」

「お前の大事な仲間がいる場所さ」

「き、貴様ぁぁぁぁっ!!」


 猛った不破は榊へ高速の突きを連打! しかし榊は手をすばやくかざしことごとく防ぎ、最後には電磁バリアーを張って不破を吹っ飛ばし壁に叩き付けた。


「ふっふっふ……」

「や、やられてたまるか……オレは生きるぞ。でなきゃ、人の命なんて、守れ、ねェ……」


 歯を食い縛る不破は、なおも余裕を保っている榊へ立ち向かわんとしている――。部下たちも彼の意志に応えるようにまた武器を構えた。

 バトルスーツを着用した彼らの中には、不破とともに関西支部に出張していた葦原の姿も見られた。この逆境でほんの少しだけ逆転の兆しが見えた瞬間である。



 しかし――。



「ぬぅぅああああ!?」

「村上さああああーーん!?」


 村上は転送されてきた石河のブレイクフックに切り裂かれてその場に横たわり、血の付着したメガネも一緒だ。

 宍戸たちオペレーターは悲鳴を上げる――。村上たちはまさに、絶体絶命であった。


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