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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第19章 終焉(デミス)への序曲
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EPISODE349:新章・砂の王子と蒼海の魔女

 深夜の新宿、とある公園。ベンチの付近で白い短髪でメガネをかけた青年とファンキーな服装の青年がたむろしていた。


「にしても、スコルピウスのやつもバカだよなー。エスパーどもをさっさとやっつけちまえばよかったのにな!」

「まぬけの虫ヤロウになに言ったって無駄だ。なにが面白くて強い人間が好きだとぬかしてたんだか」


 物静かに、しかし辛辣な態度をとるメガネの青年――島袋。彼とは対照的に、ファンキーな服装の青年――スパイクは少しばかりやかましい。


「しかしこの島袋はあの虫頭とは違うぞ。(ここ)をちゃんと活用してるからな」

「ぷーッ! よく言うぜ、頭でっかちがさ」

「うるさい!」


 気にしていることを言われた島袋は、眉間にシワを寄せてスパイクを怒鳴り付ける。「ったく……」と、あきれた様子で島袋は読書を始めた。

 スパイクは知らん顔で、趣味のダンスの練習をおっ始める。なかなかの運動神経だ。

 ――と、そこに砂嵐が吹き荒れたため、二人はそれぞれがしていたことを中断。周りを見渡した。


「な、なんだァ……?」

「目に砂が入った、見辛い……」


 困惑する二人のシェイドの前に、砂嵐を起こした張本人――金色の長髪の青年が姿を現す。

 砂嵐は治まったが、今度は噴水から勢いよく水柱がいくつも上がって中から、女性が現れた。髪型は紺色のロングポニーテールで、瞳は水色。藍色と白を基調としたコートを着ている。

 二人に共通しているのは、左目に何らかの機械――電子スクリーンのようなものがついているということだ。青年のほうは紫色の機械を、女のほうは赤色の機械をつけている。


「だ、誰だお前らァ!?」

「俺たちはデミスの使徒……」

「で、デミスの使徒だと? 滅んだんじゃなかったのか」

「ヴァニティ・フェアが潰れたから暇でしょう。あなたたち、仲間にならない?」

「俺たちデミスの使徒は世界を終わらせ、それぞれが望む新たなる世界を作るために活動している。同じ志を持つものがいれば、そいつが人間だろうとシェイドだろうと組織に引き入れることにしているのさ」

「悪い話ではないと思うのだけど、どうかしら?」


 どうやら島袋とスパイクは、デミスの使徒が再生しつつあったことを知らなかったようで、ひどく動揺している。

 藍色と白のコートの女性――マリエルは、そんな二人に仲間にならないか持ちかけた。


「フン! くだらん、何が世界を終わらせる、だ。人間どもの言うことなど聞けるか」

「うん!」

「お前らの寝言を聞いてるよりは、本でも読んでお勉強してるほうがマシってもんだ」

「そうだ!」


 島袋は至極嫌そうな顔をして勧誘をはね除けた。スパイクは島袋のうしろに隠れて、彼の言うことに逐一頷いている。

 マリエルと金色の短髪の男――ロギアはため息を吐きまたは腕を広げて手のひらを空に向けると、目付きを変えて島袋とスパイクを捉えた。


「それは残念だ。しょせんお前らはシェイドってことか――。俺たちの誘いを断った以上、俺はお前らを敵も同然と見なす」

「そういうこと。名残惜しいけれど――あなた方を排除させていただきます」


 ロギアとマリエルがそれぞれ武器を召喚し、装備した。

 ロギアは一対の鷲の翼を模したような鋭い形状のダブル・セイバーを右手に握っている。左手には鋭く大きなカギ爪を装備しており、攻防どちらにも用いることが出来そうだ。

 マリエルは紺色を基調とした細身の剣を両手に持っている。どちらも研ぎ澄まされていて、切れ味は鋭そうだ。

 対する島袋とスパイクは唸り声を上げ、その正体を現す。

 島袋は白い羽根を周囲に撒き散らし、金色の瞳を光らせ白い羽毛に覆われたフクロウの怪人へと変身した。腕と翼が一体化しており、足には鋭い爪を備えている。

 スパイクは、白黒のマーブル模様の針を背中にびっしりと生やした赤いヤマアラシの怪人に変わった。


「サイコアウル!」

「ブラディスパイン!」


 名乗りを上げる、二体の上級シェイド。ロギアは左目につけた機械のスイッチを入れて、相手のデータを分析――スクリーンに映し出されたデータを見ると鼻を鳴らして、「おまえら位だけは高いようだが、見るからにザコだな」


「なにィ!? 上級シェイドであるオレたちがザコだとォ……野郎てめぇ、ぶっ殺す!」

「おいブラディスパイン、のせられるな!」


 逆上したブラディスパインはサイコアウルの制止を振り払い、無数の針をミサイルのように飛ばした。が、ロギアは手にしたダブルセイバー・ツインイーグルを激しく振り回して針のミサイルから身を守った。次は直接殴り込むも、ロギアは必要最低限の動きで回避。

 あっけにとられたブラディスパインの隙を突いてマリエルが横入りし、二刀流による斬撃と回し蹴り、ハイキックを浴びせた。ブラディスパインは情けない声を上げてぶっ飛び、地面に叩きつけられた。


「マリエル姐さん(・・・)、そいつは俺にやらせろ!」

「……いいわよ」


 マリエルはロギアにその場を譲り、ロギアはツインイーグルを仕舞って右手にもカギ爪――ライガークローを装着。怯んでいるブラディスパインに狙いを定めてクローを構え、走り出す。


「金パツが見えない!?」


 目にも留まらぬ超スピードで駆け抜けるロギアは、爪を前に突き出して突進。


「ぜあああああ! ブーステッドタイガークロウ!!」

「あびばぁぁぁぁ!」


 超高速で振りかざされた爪がブラディスパインを切り裂く! あわれブラディスパインは首をはねられ、はねられた首は砂になり残った胴体はその場に倒れた。ロギアは、ライガークローと交換で再びツインイーグルを装備。


「ショックドライバー!」


 横一文字にツインイーグルを構え、ふたつの円形の衝撃波カッターを飛ばして首を失ったブラディスパインの体を爆破した。これぞショックドライバーだ。


「ば、バカな……ブラディスパインを葬るとは」

「次はあなたの番でしてよ?」

「うう!?」


 マリエルは噴水の水を操って水の矢を作り出し動揺するサイコアウルへ飛ばす。更に高圧水流を手から放って、サイコアウルに追い討ちをかけた。

 穏やかな水の流れも激しくなれば岩をも打ち砕き、ときには氷山も――。マリエルが操る水の力もそれと同じだ。


「くそ、このアマァ!」

「アハハハハハハ!」


 羽根のカッターを撒き散らすサイコアウル、しかしマリエルは紙一重で羽根をすべてかわしてみせた。

 マリエルは更に手をかざし、水脈を操って地中から水柱を噴出させサイコアウルを打ち上げた。

 空を翔べるサイコアウルは空中ですぐに体勢を立て直し、目から黄色い破壊光線を発射して地上のマリエルを攻撃。

 マリエルは水のカーテンを作り出して攻撃から身を守った。サイコアウルは歯ぎしりし、ヤケを起こしたか羽根のカッターをいくつも飛ばした。


「くそぅ!」


 水のカーテンは霧散したがマリエルの姿も消えた。神経質になって、サイコアウルはマリエルを探すが見つからない。

 ――直後、薄ら笑いとともに液状化したマリエルが飛来しサイコアウルにまとわりつく。焦るサイコアウルを翻弄した末、マリエルは液状化した状態で体当たりしサイコアウルを地べたへ叩き落とした。

 元の姿に戻るとサイコアウルに剣を突き刺し、ぶっ飛ばす。間髪入れずに今度は水柱を噴き上げながらダッシュ。すれ違いざまに何度もサイコアウルを打ち上げては地上に叩きつけていたぶった。


「ハァ、ハァ」

「うふふふ、こぉーんなことも出来るのよ」


 ダメージが蓄積し、息を切らすサイコアウル。マリエルは不敵に笑うと水流を発生させ、それを――凍らせていくつもの氷の刃を作ってサイコアウルに放った。

 氷の刃は全弾命中し、痛々しい叫びとともにサイコアウルは全身から紫色の血を吹き出し瀕死の状態になった。目が霞む。嘲笑う青年と涼しい顔で歩み寄る女の声が聴こえる――。

 もはやこれまで……、と、絶望したサイコアウルは今まさにプライドを投げ捨てんとしていた。しかもひどく怯えながら。


「い、いやだあ……助けてくれぇ、お願いだ! 助けてくれ! な、なんでもするから助けてェ!!」

「イヤだと言ったら、どうするの?」


 サイコアウルは言葉を失うほどに恐怖する。しかし必死の命乞いもマリエルは聞き入れていないようだ。


「――ドロウンケージ」

「!?」


 マリエルは手のひらを水色に光らせ、水の檻を作り出してその中にサイコアウルを閉じ込めた。サイコアウルはその中で苦悶の顔を浮かべながらもがき苦しむ。マリエルは冷酷に笑い、愉悦に浸っていた。

 やがてサイコアウルは完全に窒息し、水の檻が消えると同時に彼の死体はゆっくりと地べたに落ちた。サイコアウルは白い粒子となって消滅する。


「終わったか。『エンドテクター』をまとうまでも無かったな」

「ええ、肩慣らしにはちょうどよかったんじゃなくて?」

「この頃ずっと力を温存してたもんな」


 武装を解除するとロギアとマリエルは話をしながら歩き出す。


「帰りましょう。そろそろ睡眠を取らないとお肌が荒れてしまうわ」

「俺も眠たくなってきたぜ」


 冗談混じりに催促を入れてきたマリエルに、ロギアはあくびをしながら返答。二人は夜の闇に姿を消した。


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