表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第2章 敵は非情のセンチネルズ
35/394

EPISODE33:びっくり、ドッキリ

「さて、感想はどうでしたか? こんなに大きな家の中にお邪魔できるなんて、滅多に出来ないわよ」

「地下室! 地下室とかってありますか!?」

「その言葉、待ってました! もちろんあるわよ~」


 とばりの研究所兼自宅を一通り見終わった健とみゆき、そしてアルヴィー。人間誰しも、ブルジョアな暮らしに憧れるものだ。いつかは豪邸を立てて暮らしてみたい。王侯貴族がごとき、優雅な生活を満喫したい。そんなことを夢見ながら。

 地下室はないのか、という健の質問に答えて見せたとばりは、3人を地下室へと案内する。そこは比較的大きい空間で、研究室と発明品の実験場があった。3人はとばりが持つ高度な科学技術と、ラックに飾られた発明品に興味津々だ。とくに健は誰よりも目を輝かせており、興奮の渦中にいた。


「おお、この銃かっこいい!」

「警察のシェイド対策本部の人に頼まれて作ったの。威力バツグンよー。よかったら、試し撃ちとかしてみる?」

「はい! やってみます!」


 大型の銃らしきものを持ち、健は大はしゃぎ。

 とばりに試し撃ちを奨められると、喜んで実験場のドアを開いた。何故だろう。今日の健は輝いて見える。元々子どもっぽい気性の彼だが、今日はまた一段とはしゃぎっぷりに磨きがかかっていた。メカを見るとワクワクせずにはいられない、現代っ子の性分からか。


「撃つべし! 撃つべし!! 撃つべし!!!」


 一発、二発、三発――ハイテンションで銃を撃ちまくる。

 しかし反動を受け、撃つたびによろめいていた。それだけ出力が強く、扱うのに技術がいるということだ。撃つたびに上半身へ来る反動を下半身は受けきれなくなり、ついに床に尻をつけてしまった。


「どうだった?」

「気軽に撃てるシロモノじゃなかったです……」


 「そりゃそうだ」と、満場一致で健へツッコミが入る。


「他の発明品も、せっかくだからじゃんじゃん見ていってね」

「白峯さん、これはなんですか?」

「携帯空気清浄機よ〜。持ち運びできるから、いつでもどこでも室内の空気をきれいにできるわよ」


 空気清浄機を小型化し持ち運びOKにした画期的な発明品が、

 今みゆきが手に持っているこの携帯空気清浄機である。たいへん便利そうだが、とばり自身は商品化する気はないようだ。その理由としては、十時間ほどで電池が切れてしまうという携帯ゲーム機ばりの消費電力と、充電式が流行りのこのご時世に電池式という古臭さが挙げられている。なお、これは開発者であるとばりが独断と偏見で下した結論である。


「おお。いいメガネだ。左目にスカウターみたいな機能がついておる……」

「それは電波サーチ機能つきメガネよ。いざテストしてみたら、携帯でサーチした方が早かったからお蔵入りにしちゃったけどね……」

「漫画みたいで面白いのにか? そりゃあ、残念な話だの」


 そのメガネをかけながらアルヴィーはお蔵入りを惜しんでいた。元々のミステリアスな雰囲気がそうさせるのか、意外とメガネが似合っている。


「他にもねー……しゃーっ!」

「うわああああっ! か、噛まれるーッ!」

「ふっふっふ、ホレ見たことか! でも本物じゃなくて、限りなく本物にそっくりなヘビのおもちゃよ」


 健も思わずビビるほど、リアルで怖いヘビのおもちゃ。

 限りなく本物に近くするため、実際のヘビ革を素材に使って作られたのだそうだ。この他にも、魔法の鏡のごとく饒舌にしゃべる上音声パターンが豊富な『おしゃべりミラー』、熱気ではなく冷たいエアーが吹き出す『びっくりドライヤー』等、実生活で役に立つかも分からないような、完全に趣味の領域で作られている発明品が多数ラックに飾られていた。


「どう? 面白かった?」

「確かに面白かったですけど……これじゃ才能の無駄遣いだ!」

「まあ、あたしの趣味で作ってるのがほとんどだしね〜。他に聞きたいこととかはない? 遠慮せずに、何でも質問していいわよ」

「えっ、いいんですか?」


 『何でも質問していい』とは言われても、少し遠慮してしまうのはよくあることだ。だが、本当に聞いてしまっていいんだろうか。みゆきの前で、とばりがかつてセンチネルズに所属していたということとかを。

 そして、自分がセンチネルズに捕まったときに一緒に逃げてきて一晩を共にしたということを。傷つかないだろうか、怒られないだろうか。気にさわってしまわないだろうか? 健は質問の前に立ち止まって、そんなことを考えていた。


「どうしたの〜?」


 知りたい。でも言えない。どうすれば――いや、ここは聞いてみよう。勇気を振り絞って。何かが分かるかもしれない。何故彼女のような人が、センチネルズなんかにいたのかが分かるかもしれない。


「ぇっ……と、と、とばりさんはなんでセンチネルズにいたんでしょうか?!」

「それについてだけど、生まれ持った才能を無駄なことに使うんじゃなくて何かの役に立てたい! ……って思っていたときに、向こうからスカウトが来たのよ。ひょっとしたらあたしの才能が役立つかもしれないって思って、センチネルズに入ったわ。けど、現実は厳しかった。犠牲をいとわない改造実験だとか、望んでいないことばかりやらされた。そのことで浪岡に抗議したら、監禁されちゃった。健くんに助けてもらわなかったら、あたしきっと獄中死してたわ。あの時は助けてくれて、本当にありがとう」


 過去を語り、その中で改めて礼を言う。当の健は照れていたらしく、顔が真っ赤になっていた。


「……悪いのはあいつらだけど、何も知らずに加担した私にも責任があるからね。だから発明してみたいの。誰かの役に立つものを」

「なるほどのぅ。これで、あの剣と盾を解析したい……ということにもつながったわけだ。とばり殿なら大丈夫だ、きっといいものが作れる。影からになるが、私は貴殿を応援したい」

「私も白峯さんを応援します!」


 他の二人からも激励の言葉が飛び出す。ここまで言われたんじゃ頑張るしかない、と、とばりは決意を新たにする。あの剣と盾に描かれた、ミステリアスな幾何学(きかがく)模様に興味を惹かれたのもあったが、誰かの役に立てるなら光栄だ。悪いやつらに加担した償いのためにと誓ったからには、全力で向き合おう。科学者として、ひとりの人間として。



「今日は楽しませてくれてありがとうございました。さようならー!」

「また来ますね〜」

「じゃあのー」

「また遊びにきてねー♪」


 帰ってゆく三人を見届けると、とばりはさっそく研究室へ。今から健の剣と盾の謎を解明し、そのルーツに迫ろうというのだ。複雑に絡み合った謎を少しずつ紐解いていくのが、楽しくて仕方がない。


「これは手強そうね……うふふ」


 もしかしたら、誰かが既に挑戦したのかもしれない。けれど、謎を解けなかったのかもしれない。ならば解き明かしてみせよう。まだ見ぬ謎を、今まで誰も解けなかったからくりを。


「さぁて、今日は徹夜よーッ!!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ