EPISODE344:スコルピウス猛攻!勝利はより遠く
「生体エネルギー反応アリ! 抹殺! 抹殺! 抹殺!」
デルタゴーレムは、硬い足音を立てて健とスコルピウスに銃口を向ける。引き金を引けば、鉄の雨――実弾の弾幕が周囲に放たれた。
両者ともに盾で防ぎ、スコルピウスは銃撃が止んだ隙を突いてトマホークを投擲。見事デルタゴーレムに命中し、ブーメランのように手元へ戻った。
「東條健――貴様は我が兄弟ΦとΧを破壊した! 貴様のようなウジ虫を生かしてなるものか!」
「うるさい! お前ら殺人マシーンなんかより、他のみんなの命のほうが大切だ!」
「抹殺……虐殺!!」
Δ《デルタ》ゴーレムのバイザーが開き、モノアイから破壊光線が発射される。しかしスコルピウスは盾で破壊光線を防ぎ、額のサードアイからベノンレーザーを発射しモノアイを貫いた。火花が飛び散りデルタゴーレムはもがく。
「!? し……視界最悪……! ターゲットが見えない……!」
「よくも一対一の果たし合いの邪魔をしてくれたな……失せろポンコツ!」
「オワアアアアァ!」
怒るスコルピウスがトマホークを地面に叩きつければ炎の波がデルタゴーレムめがけて走り爆発。デルタゴーレムは地面に打ち付けられた。
「くそう、コンディションさえ万全なら……」
「あれ……? あいつ消えた」
捨て台詞を残してデルタゴーレムは逃走。地面に溶けるようにして消えた。呆気にとられたみゆきの視界に次に映ったのは仕切り直しをせんとする、健とスコルピウスの姿。
「先ほどは邪魔が入ったがもう誰にも邪魔はさせない。続きを始めるぞ」
「今度は僕が勝たせてもらう!」
果たし合いが再開された。健は接近するといきなりつばぜり合いに持ち込み、一気に押し切ろうとする。
「ぐぬぬぬぬぬぬ」
「うぬぬぬぬぬぬぬぬぬ!」
パワーもスピードもテクニックもきっと互角。何も恐れずに、何も迷わずに押し切れば勝利は確実。そう信じて健は剣に力を込める。
勝利へ寄せる期待はやがて確信へと変わり、彼を勝利へと導く。しかしスコルピウスも負けてはおらず、逆に押し切った。健はたじろぎ、怯んで動けなくなる。かけ声とともにスコルピウスは攻撃をしかけて、トマホークと盾を叩きつけとどめにレーザーを撃ち込んだ。健は頭から血を流し、肩で息をするまでに疲弊する。
「どうした、何を遠慮している! クロノスを打ち破ったエースパの力はそんなものではなかろう?」
「くっ……アルヴィー!!」
「「え!?」」
突然健が取った行動に、健以外の二名は動揺せざるを得なかった。健に呼ばれて、アルヴィーは龍の姿で雲の隙間から仰々しく現れて空を舞う。
スコルピウスを鋭く赤い眼で捉えると――咆哮を上げ口から超高温の青い炎を吐き出した。スコルピウスはすかさず盾を構えて身を守った。
「てぇぇぇぇ――いッ!」
「ぐうッ」
盾で守られていないスコルピウスの右半身へ、健はキックを炸裂させる。たじろいでガードが崩れた隙に健は左胸へ一発ぶちかます。追加でもう一発、二発斬撃と鋭いキックをお見舞いする。
野太い叫び声を上げたことから相当大きなダメージになったのが伺える。やはり、スコルピウスは左胸が弱点だったのだ!
勝機が見えてきた健は、氷のオーブに加えて雷のオーブと炎のオーブを柄の穴にセットする。これで三つの穴すべてが埋まった。
「アルヴィー、もういいよ。あとは僕ひとりで出来そうだ」
「あいわかった」
エーテルセイバーに力を込める最中、健はアルヴィーを下がらせる。
人間態に戻ったアルヴィーは地面に降り立ち白銀色の長い髪をなびかせる。そこに偶然、物陰に隠れて戦いを見ていたみゆきを発見、彼女に近付く。
「アルヴィーさん? な、なんで?」
「もう大丈夫だ。あとは健が何とかしてくれる」
微笑んでみゆきに呼びかけたアルヴィーは彼女の傍らにつき、戦いを見守ることにする。
「食らえレイザースコルピウスッ! トリニティ……スラァァァァッシュ!!」
激しく燃え盛る炎が、凍えるほど冷たい吹雪をが、轟く稲妻が、必殺の刃となって連続でスコルピウスを切り裂く!
ところが、あろうことかスコルピウスはその強固な盾をもって三位一体の必殺剣を弾き返した。スコルピウス以外、全員が動揺し目を丸くする。
「!? そ、そんな……トリニティスラッシュを弾いただと!?」
「フッ、なんのこれしき……」
悲しいかな、歴戦の古強者であるスコルピウスにとってはトリニティスラッシュなど子供だましの技でしかなかった。
ケロッとした顔で余裕綽々のスコルピウスは目を光らせて周囲を暗くする。
「まだお昼なのに暗くなった!?」
「前に言ったように俺のレーザーは周囲が暗くなればその威力を増すのだ――受けてみろ!」
「なにいっ! グアッ!?」
健にトマホークを投擲し、更に威力を増したレーザーを発射。更にトマホークを前方で振り回しながら突進し、乱舞攻撃を浴びせてから健を打ち上げて上空へ昇るとトマホークで両断した。
「うあああああああああああああああ――――ッ」
「健!」
「健くぅぅんッ!?」
空高くから一気に地面に打ち緒とされ、叩きつけられた健は仰向けで倒れた。周りには血だまりが広がり、亀裂も入っている。
強力な攻撃を次々にぶちこまれた健の顔は目を見開き口が裂けるほど叫んでいるまるで死人のような、おぞましい形相だった。時を同じくスコルピウスは降り立ち、倒れた健の前に佇む。
「あ……ぐ、が……」
「どうやらこの勝負、俺の勝ちのようだ」
惨状を目の当たりにしてショックで口を塞ぎ、複雑な表情をとるアルヴィーとみゆき。
しかし勝ち誇っているスコルピウスを前にして健が黙っているわけもなく、片目を瞑り歯を食い縛って立ち上がりまだスコルピウスに噛み付こうとする。
「な……なめるな……、僕はまだ……やれる……!」
「見苦しいぞエースパよ。戦いはもう終わったんだよ。しかしお前がこの程度で終わるとは思えんし、真の力を見極めたわけでもないからな……」
もがき続ける健の言葉を聞くと、今日はもう戦う気がないスコルピウスは指をアゴに当てて少しの間考えを練る。やがてなにかを思いつき、ニヤリと笑った。
「そうだな、もう一回だけチャンスをやる」
「チャンス?」
「ここまで俺をたぎらせてくれたのはオリオン以来だ。お前には俺と本気でぶつかり合う権利がある」
「オリオン以来だって……?」
「オリオン……巨大なサソリと戦った屈強な戦士だな」
「まさかスコルピウスは、オリオンと戦ったサソリの怪物ってわけ!?」
惜しがるスコルピウスの語りの中に挙がった、かの英雄オリオン。そのスコルピウスが英雄オリオンと戦ったサソリと同じだったとは――。健たちにとって驚きの新事実は、さらりと明かされた。
「首を洗って出直してこい。お前があきらめるまで何度でも相手になってやろう……」
スコルピウスは踵を返して歩き去ろうとする。
「待て、スコルピウスッ!」
「さらばだ! うわっはっはっはっ!」
そして、スコルピウスは瞬く間に姿を消した。二度も負けてしまった悔しさから健は落胆する。そんな彼を励まそうとみゆきとアルヴィーは、物陰から出てきた。
「みゆき? いたのか……」
「健くん、大丈夫?」
「ま、まあ……一応は」
「ならいいんだけど……」
頭をかいて、健はみゆきの前でぎこちない笑顔を作る。アルヴィーは豊満なバストをたくしあげるように腕を組んで、「しかしスコルピウスのやつ、あのオリオンとやりあったサソリと同一だったとはの。ますます厄介になってきおった」
「あのさ、アルヴィー」
「?」
苦笑いしながらアルヴィーに声をかけると、健はアルヴィーの肩に手を置く。大きな胸がボディに当たって快い――。鼻血が出てきてしまい、みゆきからは苦笑いでドン引きされた。当然、アルヴィーは困惑している。
「……く、訓練させてくださいッ」
「いいだろう」
ところが、健からの懇願を聞くと一変。アルヴィーはほくそ笑んだ。