EPISODE337:聖夜を迎えて
カイザークロノスが倒れたことにより、拠り所を失ったシェイドたちは恐れを成して一斉に逃げ出した。地上にいたものも、ネザーワールドで本拠地の守備についていたものもすべて、だ。
かくして、総攻撃は未然に防がれた。シェイドの脅威におびえていた人々は安堵の息を吐き、皆元の日常へと戻ることが出来た。
決戦を終えた健たちはそれぞれの帰るべき場所へと戻り、傷ついたその体をゆっくりと休めたのだった。
そして、夜が明けた。
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とうとう十二月二十五日――かのイエス・キリストが生まれたクリスマスが訪れた。街中に十一月下旬ごろには既に飾られていたクリスマスツリーや電飾が、今日はより一層輝いて見える。いろいろとめでたい日だからだ。
昼はもとより夜になればもっと盛り上がる。今夜は、聖なる夜だからだ。もしサンタクロースが本当にいたとしたら、それはもう多忙を極めていたに違いない。
そして、夕方。西大路にある白峯の家では――楽しいクリスマスパーティーが行われていた。
「「「「「「「「メリークリスマース!」」」」」」」」
参加者全員(健、葛城、不破、市村、みゆき、白峯、アルヴィー、まり子)が祝砲がわりに、一斉にクラッカーを引いて音を鳴らした。小さな紙吹雪が辺りに舞い散る――。
白峯が四人のエスパーたちを待っている間に、白峯家のリビングはクリスマスパーティーの会場に早変わりだ。リースはもちろん、どこから出してきたのかツリーまである。てっぺんに輝くベツレムの星がまぶしい。
「メぇぇぇ~~~リぃぃぃぃクリっスマぁぁぁーーースぅ!! ひゃーーーはっはっはっはっはぁーーーーっ !!」
「まーまー、嬉しいのはわかるから落ち着け」
「イテッ」
みんなでシュプレヒコールを済ませても叫び足りなかった健が気分をハイにして叫んだ。
もちろんアルヴィーから呆れた顔をされて小突かれたのだが。
「東條くんもみんなも、今日来てくれて嬉しいんだけど……昨日戦ったばかりなのに休まなくてよかったの?」
「平気です! 昨日は帰ったらすぐに寝ましたから。ねー、みんな?」
白峯にハキハキとした笑顔で答えた健は、葛城や不破、市村にも確認をとる。三人とも頷いた。アルヴィーとまり子もだ。
「これまで戦ってきた敵とは一線を画するほどの強大な敵が相手でしたからね。一時は死ぬ覚悟もしていましたけど、思いとどまりましたわ」
「それにボコボコにやられんのは慣れてっからな。しぶといのがお前の不幸だ、みたいなこと言われたがむしろ幸運だったかな」
「せやな。せやったな」
自分が語りたかったことを先に言われてしまったので、市村は相槌を打ってカイザークロノスとの決戦の振り返りを終わらせた。「もう終わっちゃうのー」と、白峯は少しばかり残念がるが、すぐにっこりと笑った。
「でもよかったわ。こうして無事にそろったんだし。それだけでもあたし嬉しい」
そう言うみゆきの涙が一滴、頬を伝って流れ落ちた。また皆で集まることが出来たことへ対する嬉し涙であることは言うまでもない。
「さて。せっかくのパーティーなんだし、しんみりする話はここまでにして盛り上げましょう!」
「「「「「「「「おーう!」」」」」」」」
白峯が空気を切り替えたのを皮切りに、クリスマスパーティーはどんどん盛り上がっていた。
歌って踊り、皆ではしゃぎ、食べて飲んで、またはしゃいで――。皆心の底からパーティーを楽しんでいた。
とくに健は羽目を外しすぎたかうっとうしいくらいに皆と騒いでおり、戦いの疲れなどとうに吹き飛ばしてしまった。「鷹梨ちゃんも来たらよかったのにね〜」とは、まり子の言葉だ。彼女はパーティーには参加しなかった。今まで散々悪事に加担して健たちを苦しめてきた自分がパーティーに参加する資格などない、図々しい――。そう思って参加しなかったのだ。
「……メリー、クリスマス」
雪が降っている中でパーティー中の健たちを外から見ていたものがひとり。鷹梨だ。一言だけ呟いて、物憂げに微笑む彼女は白い雪景色の中を飛び去っていった。
――今夜はホワイトクリスマス。戦いに疲れ果てたエスパーたちを癒す聖なる夜だ。
ヴァニティ・フェアとの戦いは終わった。しかし若きエスパーたちの熱き戦いはまだ終わらない。あともう少しだけ――続くだろう。
ヴァニティ・フェア編、これにて完結です。
もう2年くらい書いてるなんて信じられないや……^^;
新章はじまってからは心機一転して頑張りたいです。
おまけ。
メぇぇぇ~~~リぃぃぃぃクリっスマぁぁぁーーースぅ!!
ひゃーーーはっはっはっはっはぁーーーーっ
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_ , -,- 、' ⌒ヽ , -‐ '´ヽ  ̄/
/ ヽィく ノl l l 丶 ゝー '´
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ィ、_ l}`l" フT⌒T,j‐ ヽ',l
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とっくに旬は過ぎたけど、作中じゃっちょうどそのシーズンだからどうしてもやりたかった(笑)