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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第18章 聖夜の大決戦
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EPISODE335:ヒーロー死す!


 ネザーワールドの空を覆う黒雲。その黒雲を裂くようにほとばしる稲妻。時間操作能力を封じられても、恐怖の帝王――カイザークロノスは余裕の佇まいを崩さなかった。


「ふざけるな。僕は絶対に絶望などしない! 今ここで僕たちが屈したら、いったい誰がお前を倒すっていうんだ。だからあきらめるわけにはいかないんだ!」

「では徹底的に貴様らの掲げる薄っぺらな正義とくだらない希望を打ち砕いてくれる!!」


 地上で待つ大切な人々のためにも、あとには引けない。シェイドが地上を支配する時代を作らんとする冷酷非情なカイザークロノスへ対し、健は絶対に屈しない姿勢を見せた。見ればわかるように、仲間たちの分も彼は戦うつもりだ。


「カイザーナックル!」

「みんな伏せてッ!」


 強大な青黒い闇のオーラを右手に宿し、クロノスは健へ叩きつける! 健はミラーシールドをとっさに向けて、仲間たちをかばった。球状の青い大爆発が巻き起こり、ミラーシールドをもってしても爆風は防ぎがたく、健たちはその衝撃で城の屋上から落下した。カイザークロノスは目をカッと開いて狂気をはらんだ笑みを浮かべ、地べたへ落ちたエスパーたちを追って飛び降りた。


「なんなの、今の爆発は……?」

「屋上のほうだ」


 同じ頃古城へ続く階段で最下級のシェイドたちを相手に無双していたまり子と鷹梨――ワイズファルコンは、屋上で健たちとカイザークロノスが激闘を繰り広げていたことを察知。

 駆け付けに行きたかったが、あいにく大量に現れたグラスケルトンやクリーパー、その他の低級のシェイドたちはそれを許してはくれない。


「……出来れば、助けに行きたいですが。私たちは今出来る仕事をしないと」

「まったく。人気者はツラいよねぇ」


 主役を助けに行けないもどかしさを唇に噛み締めながらも、二人は戦いを続ける。ワイズファルコンは片手で真空波を巻き起こし、低級のシェイドたちを吹き飛ばす。まり子は念力で低級のシェイドたちを爆発させ塵に帰した。



 古城から落ちて、健たちは岩山に囲まれた暗く冷たい荒野へと出た。カイザークロノスも闇のオーラを伴って現れ、再び緊迫した空気が辺りに漂う。


「服従を誓うかこのネザーワールドで消し飛ぶか、どちらか選べぇ!」

「言っただろ! お前には屈しない!」


 カイザークロノスは漆黒の闇のオーラを、健は白金色に輝く光のオーラをまとって疾走。ぶつかり合い、弾け飛ぶ。


「なんという気迫だ……! 二人の間に近寄れない!」

「まさか、健さんは一人でクロノスを?」


 岩陰で不破たちは、健とカイザークロノスが戦う様子を見つめている。やはり彼を放ってはおけないと、葛城は前に出ようとしたが、不破はもどかしさとやるせなさが混じった複雑な顔をして彼女の肩に手を乗せた。


「行くな。わかってるだろ、あいつはオレたちの分も大切なもん背負って戦ってるんだ。絶対に負けたりなんかしない」

「不破さん……」


 不破から諭され、葛城は健の勝利を信じて引き下がる。


「死ねェェェェい!」


 声高く、カイザークロノスは荒れ狂う地獄の稲妻を呼び寄せた。スライド移動を繰り返して健は降り注ぐ稲妻を回避、健は飛びかかってカイザークロノスに帝王の剣を叩きつけ、斬り合いに持ち込む。


「でぇやあああああァァ!!」

「クッ! ヌオオオオオッ!!」


 以前に特訓を受けたことと帝王の剣によって能力が高まったことが重なり、健はカイザークロノスにも引けをとらないほどのパワーを得ていた。連続で斬撃と盾による殴打、加えてキックも浴びせた。その勢いの激しさは、カイザークロノスもようやく血ヘドを吐き出したほどだ。健はとどめに鋭い突きをかまし、カイザークロノスを地面を削る勢いで後退させる。


「ナイトメアレイヴ!」


 全身から闇のオーラを立ち上らせ、カイザークロノスは突進。何度も姿を消しては突進を繰り返し、最後には闇の雷を伴う衝撃波を走らせ周囲を焼き尽くした。


「すべてを失え!」

「うわああああああああ〜〜〜〜ッ」


 吹っ飛ばされた健は轟音を立てて地面へ落下。だが起き上がり、目を見開きながら雄叫びを上げてカイザークロノスへ突撃。捨て身の一撃を放った。カイザークロノスは一瞬苦い顔をするが、すぐに斬り合いに持ち込んだ。長剣と盾という健の王道スタイルに対し、カイザークロノスは長く大きな剣と短く太い剣の二刀流。加えて、圧倒的なパワーとスピード、強靭な肉体を併せ持つ。健がエンペラーソードとミラーシールドさえ手にしていなければ、当の昔にカイザークロノスが勝っていた。


「ぐわああああッ」

「東條ぉぉッ!?」

「あかん……! やっぱりあいつ強いわ!」


 不破や市村が驚く中、二度目の斬り合いを制したのはカイザークロノスだ。健の胸を踏みつけると右手に握っている長いほうの剣を喉にあてがう。


「人間とは弱く、脆く、ずるく、欲深く、醜い生き物だ。互いに首を絞め合い平気で他者を裏切る。絆も信頼も醜い内面を隠すための見せかけに過ぎん」

「そ、そんなものは……僕たちの一部でしかない」


 人間を徹底して見下し、蔑むカイザークロノスの言葉をはね除け、健は咆哮。金色のオーラを放ち、カイザークロノスを引き離す。変化を察知したクロノスは距離を置き、鋭い眼で起き上がった健を捉えた。


「もし、お前が思ってるようなヤツばかりなら人間はとっくに滅んでいる! 互いの首を絞め合うのが人間なら、誰かに優しく出来るのもされるのも、誰かと繋がれるのもまた人間だ! 『負』の感情だけが人間じゃないんだ!」

「笑止!」


 いかなる攻撃を受けようともあきらめずに立ち向かってくる健の意志を切って捨てんばかりに、カイザークロノスは双剣を振るいリング状の衝撃波を放った。健はミラーシールドで衝撃波を反射し、まっすぐに突っ走る。

 途中で斬り込んできたクロノスの双剣をミラーシールドで弾き返し、一瞬怯んだ隙を突いて、切り上げによるカウンターを繰り出す。斬撃、盾による殴打、からのキック。カイザークロノスを打ち上げるも、即座に体勢を直したクロノスは急降下して反撃。健はそれもカウンターして、着実に攻撃を当てていく。


(ホントは破邪閃光斬りでもかましたいけれど、反動で動けなくなったところを突かれたらマズイ……)

(次は何をするつもりだ?)


 帝王の剣を回しながら、健はどうするべき思案する。対するカイザークロノスは健の考えを見破ったか単に余裕を見せつけているのか、様子をうかがっている。

 じきに、両者ともににらみ合いながら走り出した。


「はああああああああッ!」

「ぬおおおおおおぉぉぉぉうッ!!」


 両者、雄叫びを上げて真っ向からぶつかるとつばぜり合いを始めた。カイザークロノスが押し勝ち、健を斬撃とカカト落としで蹂躙。更に切り上げて宙へ打ち上げた。

 しかし健は体勢を直して急降下。カイザークロノスの真上に落下するも、弾かれた。だが引き下がらず、旋風のごとく回転しつつカイザークロノスを切り刻む。


「いつまで無駄なことを続ける……? 消え失せろ!」


 双剣を地面に突き立て、カイザークロノスは右手に青黒い闇のオーラをまとわせた。――嫌な予感がする。健はミラーシールドを構えた。


「まさか、あの構えはさっきの……」

「伏せろ!」



「カイザーナックル!!」



 目を見開いて、カイザークロノスは拳を大地に叩きつけた。ドーム状の青黒い大爆発が巻き起こり、周囲のものすべてを焼き尽くし破壊する!

 葛城たちは踏ん張って爆風に耐えたが、爆心地にいた健はダメージを抑えきれず宙へ舞った。そのまま、荒れ果てた大地に開いたクレーターに落下する。


「健さんッ!?」

「ま……まだだ。……負けるかぁ……!」


 不敵な笑いを浮かべながらカイザークロノスは他者を寄せ付けぬ圧倒的スピードで健に接近。クレーターの外へ健を吹っ飛ばす。岩をぶち抜きながら健は飛んでいき、カイザークロノスは彼の前へ移動してまたもパンチで健を吹っ飛ばす。同じことを繰り返した末に、カイザークロノスは起き上がった健の前に移動。双剣を手にすると全身から禍々しい闇のオーラを放ち、双剣を手に斬り込んだ。


「サタンディバイド! 滅べ、滅べ! 滅べえええぇぇいッ!!」

「ウオアアアアアアアアアァァーーーーッ!?」


 左右交互からの薙ぎ払いが連続で繰り出され、とどめに両手に握った剣が同時に振り下ろされ健を両断。ぶっ飛ばされ地面に叩きつけられた。カイザークロノスは地に沈んだ健の首を容赦なく掴み上げ、剣を突き立てた。


「終わりだ」

「グハッ!?」


 カイザークロノスの剣がエンペラーアーマーを貫いて健の腹に深く突き刺さった。健の口いっぱいに鉄の味が広がる――。血ヘドを吐き出した健の体は、また地面に叩きつけられた。


「た、健さん!」

「東條はーんッ!?」


 健が凶刃に倒れたことにより、葛城たちの最後の希望が儚く消え去らんとしていた。カイザークロノスは高笑いを上げると、強く警戒して身構えている葛城たち三人に視線を向ける。



「次は――……お前たちだ!」


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